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施設入居者に対する運動介入の効果はあるか?
📖 文献情報 と 抄録和訳
入所している高齢者の身体機能に対する身体運動の効果:無作為化対照試験の系統的レビューとネットワークメタ分析
📕Valenzuela, Pedro L., et al. "Effects of physical exercise on physical function in older adults in residential care: a systematic review and network meta-analysis of randomised controlled trials." The Lancet Healthy Longevity (2023). https://doi.org/10.1016/S2666-7568(23)00057-0
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[背景・目的] 身体運動は一般的に加齢に伴う身体機能低下を抑制するのに有効であるが、機能依存、多疾患合併、ポリファーマシーを有することが多い入所高齢者に対するその有益性に関するエビデンスは結論が出ていない。我々は、この集団の身体機能に対する運動介入の効果を明らかにすることを目的とした。
[方法] この系統的レビューおよびネットワークメタ解析のために、PubMed、Web of Science、Cochrane Library、Rehabilitation & Sports Medicine Source、およびSPORTDiscusを検索し、入所施設に居住する60歳以上の成人における身体機能(すなわち、機能的自立、身体能力、および筋力、バランス、柔軟性などのその他の関連指標)に対する運動介入(対通常ケア)の効果を評価する無作為化対照試験を特定した。2023年1月12日までに英語またはスペイン語で発表された関連研究をシステマティックレビューの対象とした。研究の質は、TESTEX(Tool for the Assessment of Study Quality and Reporting in Exercise)スコアを用いて評価した。少なくとも10件の研究で報告された身体機能関連のアウトカムについてネットワークメタ解析を行い、特定の介入(すなわち、運動の種類、トレーニング量、試験期間)および参加者(すなわち、認知障害または認知症がある、プレフレイルまたはフレイルの状態、機能依存である)の特徴についてサブ解析を行った。研究プロトコルはPROSPEROに登録された(CRD42021247809)。
[結果] 147の研究(参加者11609人、平均年齢67歳[SD 9]~92歳[2])がシステマティックレビューに含まれ、全体的に質が高いと評価された(TESTEXスコア中央値9[範囲3~14])。メタ解析(105の研究、n=7759の参加者を含む)では、運動介入は有意に身体機能全般の改善と関連しており、標準化平均差[SMD]は0-13(95%信頼区間[CrI]は0-04-0-21)であった。最も強い関連は週110~225分の運動で観察され、最大の改善は週170分で観察された(SMD 0-36[95%CrI 0-20-0-52])。運動の種類による有意差は認められなかった。サブ解析では、ほぼすべての身体機能関連アウトカム(Barthel index、5回立ち上がりテスト、30秒立ち上がりテスト、膝伸展、手の握力、上腕二頭筋の筋力、Short Physical Performance Battery、6分間歩行テスト、歩行速度、Berg balance scale、sit-and-reach test)において有意な改善が認められた。母集団および介入の特徴に関して、研究間および研究内で大きな異質性が認められた。
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[結論] 運動介入は、入所している高齢者の身体機能の改善と関連しており、したがって、長期介護施設において日常的に推進されるべきである。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
EBPTにおいて、エビデンスを使うには5つのステップがある。
✅「エビデンスをつかう」プロセス
1. 患者の臨床問題や疑問点の抽出と定式化(PICOの設定)
2. PICOに基づいた患者の臨床問題や疑問点に関する情報の検索
3. 得られた情報の批判的吟味(critical appraisal)
4. 得られた情報の患者への適用の検討
5. 適用結果の評価
この中の(1)にPICOの設定があり、“P” (Patients) には年齢、性別、診断、環境、危険因子などの構成要素がある。
今回注目したいのは、“環境”だ。
入院と施設入居者では、全く状況が異なる。
入院中は、疾病プロセスの初期〜中期の回復期、施設入居者は慢性期。
入院中は、毎日2単位×2回/日のリハビリがあるが、施設入居者では週3回,40分間の介入のみ。
入院中は、担当看護師が毎日離床を促すが、施設入居者ではそうはいかない。
・・・etc。
同じ高齢者であっても、環境によって雲泥の差が生じてくる。
その中で、果たして長期介護施設入居者に対する運動介入は、効果があるのか?
今回の抄読研究は、その答えを美しい図とともに明らかにしてくれた。
一言でいえば、「効果はある!」だ。
さらに、至適運動量(時間)やアウトカムごとの効果まで示してくれている。
地域で働くリハスタッフにとっては勇気づけられる論文であり、
病院で働くリハスタッフにとっては退院支援の際の参考になる論文である。
⬇︎ 関連 note & 𝕏での投稿✨
📕施設入居者に対する運動介入の効果はあるか?
— 理学療法士_海津陽一 Ph.D. (@copellist) September 28, 2023
・147研究を包含
・施設居住者の身体機能への運動介入効果を調査
🔹運動介入は身体機能全般の改善と関連
🔹週110~225分の運動で強い関連,最大は週170分間
🔹ほとすべての身体機能アウトカムに有意な改善
施設入居者への運動介入は有効といえそうです😲 pic.twitter.com/sY7ETkmQBv
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