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アメリカにおける、高齢者の居住施設分布

📖 文献情報 と 抄録和訳

高齢者における居住施設の利用動向

Toth, Matt, et al. "Trends in the Use of Residential Settings Among Older Adults." The Journals of Gerontology: Series B 77.2 (2022): 424-428.

🔗 DOI, PubMed, Google Scholar

✅ 前提知識:地域密着型居住施設(CBRF: Community-Based Residential Facility)とは?
- 地域密着型居住施設(CBRF)とは、運営者または管理者に関係のない成人が居住し、部屋と食事のレベルを超えるケア、治療またはサービスを受ける場所で、居住者一人当たり週3時間までの看護を含むことができる。
- 日本でいえば、住宅型有料老人ホーム、グループホーム、小規模多機能型居宅介護などが類似施設になるのだろうか・・・。
🌍 参考サイト >>> site.

[背景・目的] 米国の高齢化に伴い、障害や機能制限の普及、長期的なサービスやサポート(LTSS ※主に介護保険サービスのような認識でいいと思う)の需要は増加すると思われます。本研究では、さまざまな居住環境における高齢者の分布、および高齢者の健康特性が時間とともにどのように変化しているかを明らかにした。

[方法] Medicare Current Beneficiary Survey(MCBS)、2008年と2013年、Health and Retirement Study(HRS)、2011年と2015年のNational Health and Aging Trends Studyという3つのデータソースを用いて、従来の住宅、地域密着型居住施設(CBRF)、看護施設に居住する高齢者のクロスセクション分析を行った。設定,機能制限,併存疾患別に高齢者の年齢標準化有病率を算出し,基準年(2002年)に対する健康特性の変化について検証した。

[結果] 自宅に住む高齢者の割合は、ベースラインと比較して時間の経過とともに増加したが(p < 0.05)、CBRFに住む高齢者の割合には変化がなかった。MCBSでは,2002年から2013年にかけて介護施設入居者の割合が減少した(p<0.05)自宅居住者の認知症および機能制限の有病率は,HRSおよびMCBSにおいて,ベースライン年と比較して増加した(p<0.05)

[考察] 自宅に居住する高齢者の割合は増加しており、一方、介護施設の人口は減少している。この変化は、健康状態の良さによるものではなく、高齢者が施設以外のLTSSに依存している可能性がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

高齢者の数は増えている。そして、その高齢者の認知症、及び機能制限の有病率もまた、増えている。
その中で、難易度が高いと思われる『自宅』に分布する高齢者は増えている
なぜ、一見矛盾する、このような現象が起きているのだろう。
本論文の考察部分と、これまでの知見からミニレビューを行い、主に4つのファクターがあると思われた。

📗ミニレビュー:自宅への分布が増えている理由
■ 個人の希望:高齢者は、可能な限り現在の自宅に長く住み続けたいと考える人が圧倒的に多い (📕Barrett, 2014 >>> doi.)。
■ 在宅環境で受けられる環境の充実:個人住宅やその他の環境は、高齢者がインフォーマルな介護者、有償サービス、および/または補助装置や技術によって提供される支援的なLTSSを利用して自宅に留まることができるようにすることで、より適切に高齢化を受け入れることができるかもしれない。例えば、作業療法、看護補助、および住宅改修へのアクセスは、場所での高齢化を促進するのに役立つ(📕Szanton , 2016 >>> doi.)。
■ 支援技術の発達:エイジング・イン・プレースを促進するための支援技術は、高齢者が年をとっても自宅に留まる能力を高める可能性のある他の治療の進歩に加えて、機能的制限と介護者の負担を減らすのに有効である(📕 Anderson & Wiener, 2015 >>> doi. )。
■ 政府や州の政策的側面:連邦政府や州の政策の変更により、自宅や地域ベースのLTSSへのアクセスが重視されるようになった。高齢者のためのメディケイドHCBS支出は2003年から2013年にかけて148%増加した(📕 Eiken et al, 2018 >>> PDF.)。

日本では、どうだろうか。
まず自宅に対する個人の希望、これはアメリカと同様に多いことが知られている(📕 Ishikawa, 2021 >>> doi.)。
次に、在宅環境で受けられる環境の充実、これも充実してきていることを肌に感じる。支援技術、こちらだって同様だ。日進月歩だし、支援技術に関しては国境というものがなくなりつつあるのではないか?
最後に、政府や州の政策的側面だが、回復期病棟の質の評価に「在宅復帰率」が組み込まれていることからも、政府が強烈に在宅復帰を意識していることは明らかだろう。
すなわち、日本でも同様の現象が起こっている可能性が高いし、もしかしたら日本にとっては、近未来の居住地分布なのかもしれない。

それにしても、『自宅』という場所の価値というか、意味というかは、とてつもなく大きい。独居なのに、「どうしても自宅で生活する」といって聞かない患者さんは、少なくない。
『場所』。ただの場所ではないか!
そこで居住した時間、居住した人、居住した思い出、それら諸々の『絆』が、ただの場所を、『唯一の場所』にするのだろうか。
高齢者の頭の中には、子どもが描く「例のあの地図」よりもっともっと歪んだ、極端にデフォルメされた世界があるのかもしれない。
GPSよりも、尊いセンサーが、人間には内包されている。

カントリーロード
この道ずっとゆけば
あの街につづいてる
気がする カントリーロード

宮崎駿

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