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膝内側側副靭帯の関節制動への寄与


📖 文献情報 と 抄録和訳

内側側副靭帯再建術の比較生体力学的研究

📕Shatrov, Jobe, et al. "A Comparative Biomechanical Study of Alternative Medial Collateral Ligament Reconstruction Techniques." The American Journal of Sports Medicine 52.6 (2024): 1505-1513. https://doi.org/10.1177/03635465241235858
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[背景・目的] 内側側副靭帯(Medial Collateral Ligament, MCL)再建術がMCL欠損膝の外反、外旋(external rotation, ER)、前内側回旋不安定性(anteromedial rotatory instability, AMRI)に関する安定性を回復させるための生体力学的性能に関するエビデンスはほとんどない。仮説:短い等尺性再建術は、長い表層MCL(sMCL)再建術よりも安定性を回復し、深層MCL(dMCL)移植片を追加することで、1本鎖再建術よりもERとAMRIをコントロールしやすくなる。

[方法] 研究デザイン:対照実験室研究。方法:膝を0°~100°屈曲-伸展させながら脛骨荷重をかけることができる運動学リグを用い、9名のヒトの膝関節死体で試験を行った。大腿骨と脛骨に光学マーカーを設置し、ステレオカメラシステムを用いて変位を計測した。膝関節は無傷のまま、次にMCL(sMCL+dMCL)切断後に、脛骨前方移動(ATT)、ER、外反、およびATT+ERの複合負荷(AMRI負荷)で試験した。5種類の等尺性MCL再建術がテストされた:単離された長いsMCL、短い構築物、dMCLを付加したものと付加しないもの、および幅8mmの合成移植片を用いた単離されたdMCL再建術。

[結果] MCL欠損により、ERは屈曲0°で4°(P = 0.271)、屈曲100°で14°(P = 0.002)増加し、外反は屈曲0°~100°の間で5°~8°増加した(0°~90°でP < 0.024)

孤立性MCL欠損では、ATTは有意に増加しなかった(P > .999)。ERの不安定性が残存した(P≦0.047 vs 他の再建)孤立性長sMCLを除けば、5つの再建はすべて屈曲弧全体にわたって本来の安定性を回復した。

[結論] 単離ロングsMCLグラフトを除けば、試験した技術はすべて、MCL欠損膝関節の外反、ER、AMRIの安定性を回復させるという観点から、死体モデルにおいて満足のいくものであった。臨床的意義:現代のMCL再建術は、長いsMCLグラフトを用い、dMCLに対処していないため、ERを制御できず、したがってAMRIも制御できない。本研究では、5つのMCL再建術を比較した。長いsMCL以外の長短等尺性コンストラクトはいずれも、外反およびER/AMRIにおいて本来の安定性を達成した。二本鎖の再建(sMCL+dMCL)は、より高い安定性をもたらす傾向があった。この研究は、どの再建術が最も優れた生体力学的 性能を示すかを示し、AMRIの外科的再建術に役立て るとともに、現在普及している手技の有効性を疑問視している。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

MCLによる関節制動は、どの運動方向に、どのくらい貢献しているでしょうか?

この質問に対して、前者に答えることはある程度、容易である。
なぜなら、起始・停止から考えて、「こう動けば、MCLが伸張され、制動力を発揮しそうだな」ということがわかるから。
MCLの場合、明らかに貢献していそうなのは、膝外反、そして膝の回旋だろうと想像がつく、そしてそれは今回の研究結果によってサポートされる。

一方で、後者である。
「どのくらい?」という量的な部分は、想像では分かりにくい。
そのため、この量的なデータは実際に確かめてみなければ分からない。
今回の抄読研究は、そこに関する貴重なデータを与えてくれた。
MCLは、膝外旋に対しては屈曲が深くなると14度、そして外反に関しては5-8度の制動に貢献している。
かなり大きな貢献であると思う。
MCL損傷者のリハビリテーションにおいて、重要な基礎知識となるデータだ。

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