見出し画像

小臀筋, 中臀筋の股関節内旋, 外旋への安定性貢献

📖 文献情報 と 抄録和訳

生体力学的解剖モデルにおける股関節の回旋安定性と回外安定性に対する外転筋の寄与

📕Lim, Daniel P., et al. "Contributions of the Abductor Muscles to Rotational and Distractive Stability of the Hip in a Biomechanical Cadaveric Model." Orthopaedic Journal of Sports Medicine 12.3 (2024): 23259671241231984. https://doi.org/10.1177/23259671241231984
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar 🌲MORE⤴ >>> Connected Papers
※ Connected Papersとは? >>> note.

[背景・目的] 小臀筋(GMin)と中臀筋(GMed)は股関節の重要な動的スタビライザーであるが、股関節の安定化におけるそれらの生体力学的役割に関する定量的データは現在のところ不足している。目的(1)股関節外転筋複合体の再現性のある生体力学的な死体モデルを確立すること、(2)GMinとGMedに負荷をかけることが大腿骨の外旋と伸展に及ぼす影響を特徴づけること。

[方法] 研究デザイン:対照実験室研究。方法(1)無負荷、(2)GMinに負荷をかけた状態、(3)GMedに負荷をかけた状態、(4)GMinとGMedの両方に負荷をかけた状態。筋負荷は、解剖学的作用線を再現するために、腱に取り付けたケーブル、滑車、重りを介して加えた。試験片は、内旋、外旋、および股関節屈曲0°、15°、30°、60°、90°の軸牽引力下で試験された。

[結果] GMinとGMedを同時に負荷した場合、60°を除くすべての股関節屈曲角度で内旋運動が減少し(P < 0.05)、0°を除くすべての股関節屈曲角度で外旋運動が減少した(P < 0.05)。同様に、GMinとGMedの両方に負荷をかけると、股関節屈曲の全角度において大腿骨の牽引方向への移動量が減少した(P < .05)。

[結論] 本研究の結果は、GMinとGMedが回転トルクとディストラクションに対する安定性を提供し、その寄与量は股関節屈曲の程度に依存することを実証した。臨床的意義:股関節の回旋性不安定性と攪乱性不安定性の防止におけるGMinとGMedの役割の理解が深まれば、股関節病変の治療指針がより明確になり、非手術療法と手術療法が最適化されるであろう。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

「中臀筋の作用は何でしょう?」

そう聞かれたならば、『股関節外転』と声高々に答えることだろう。
多くの筋は、代表的な作用があり、そこに隠れるように副次的な作用がある。
そして、僕たちは代表的な作用だけを頭に思い描き、副次的な作用を思い浮かべることは少なくなってしまいがちだ。

今回の抄読研究は、そんな隠れた副次的な作用だって、重要かもしれないと思わせてくれた。
小臀筋、中臀筋が股関節の内旋、外旋、牽引負荷に対してどのような安定性貢献をするかを解剖体を用いた研究によって示した。
その結果、ほぼ全可動域にわたり、小臀筋、中臀筋は内旋、外旋、牽引力の全ての方向性に対しての安定性に寄与していることが明らかになった。

目の前の現象は、分かりやすく代表的な力だけではなく、いくつもの目立たない複数の力線によって支えられている部分も大きいのかもしれない。
なんだか、人生哲学につながる話のようにも感じた。

秘すれば、花
世阿弥

⬇︎ 関連 note & 𝕏での投稿✨

○●━━━━━━━━━━━・・・‥ ‥ ‥ ‥
良質なリハ医学関連・英論文抄読『アリ:ARI』
こちらから♪

↓↓↓

‥ ‥ ‥ ‥・・・━━━━━━━━━━━●
#️⃣ #理学療法 #臨床研究 #研究 #リハビリテーション #英論文 #文献抄読 #英文抄読 #エビデンス #サイエンス #毎日更新 #最近の学び

この記事が参加している募集

#最近の学び

181,541件