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股関節への牽引療法。45秒間は牽引力をかけ続けよう!


📖 文献情報 と 抄録和訳

持続的な5分間の高強度長軸牽引モビライゼーションにおける下腸骨大腿靭帯のひずみの経時的変化

📕Estébanez-de-Miguel, Elena, et al. "Changes over Time in the Strain on the Inferior Iliofemoral Ligament During a Sustained 5-Minute High-Force Long-Axis Distraction Mobilization: A Cadaveric Study." Archives of Physical Medicine and Rehabilitation (2023). https://doi.org/10.1016/j.apmr.2023.03.022
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🔑 Key points
🔹高負荷牽引療法は45秒間に下腸骨大腿靭帯に大きな変化をもたらす。
🔹下腸骨大腿のひずみの大きな変化は、高荷重牽引療法の最初の1分間で起こる。
🔹靭帯を緊張させるための高荷重牽引療法の最適時間は45秒である。

[背景・目的] 股関節ROMを増大させるために、股関節長軸牽引モビライゼーションを適用することがある。しかし、治療用量は、加える力の大きさ、振幅、方向、振動数、反復回数(セット)、治療時間によって特徴づけられるため、動員力の大きさだけでなく時間も考慮することが必要。
●目的:下腸骨靭帯にかかるひずみの経時的変化を分析すること。

✅ 股関節の関節包に対する牽引療法例
・Heereyらは、股関節鏡検査後のプロトコールに、股関節包の締め付けを軽減するために、10秒間の緩やかな下方および/または側方牽引モビライゼーションを3回取り入れている(📕Heerey, 2018 >>> doi.)。
・VaarbakkenとLjunggrenは、股関節に障害のある患者において、日常生活、レクリエーション、スポーツにおけるこわばりや活動制限を軽減するために、15~40秒間、15分間、力強い股関節牽引療法を行った(📕Vaarbakken & Ljunggren, 2007 >>> doi.)。
・Estébanez-de-Miguelらは、変形性股関節症患者の可動域を広げるために、30秒の高強度牽引療法を13回行った後、15秒の休息時間を10分間設けた。適切な股関節可動域制限時間を選択するためのエビデンスが不足しているため、より良い報告が必要である(📕Estébanez-de-Miguel et al, 2018 >>> doi.)。

[方法] デザイン実験動物を用いた横断的研究。セッティング解剖学研究室。参加者新鮮凍結死体9体(平均年齢75.6±7.8歳、N=13)の股関節13関節。介入オープンパック体位での高力牽引療法を5分間持続した。主要評価項目下腸骨大腿靭帯のひずみをマイクロミニチュア差動式可変リラクタンス変換器を用いて経時的に測定した。ひずみの測定は、最初の3分間は15秒ごとに、次の2分間は30秒ごとに行った。

[結果] ひずみの主な変化は、高荷重牽引療法の最初の1分間で生じた。下腸骨大腿靭帯のひずみが最も増加したのは最初の15秒であった(7.3±7.2%)。30秒後のひずみの増加は10.1±9.6%で、これは5分間の高荷重牽引療法終了時の総増加(20.2±8.5%)の半分であった。ひずみ測定における有意な変化は、45秒間の高荷重牽引療法で生じることが示された(F=18.11;P<.001)。

[結論] 5分間の高荷重牽引療法を行った場合、下腸骨大腿靭帯のひずみの大きな変化は、モビライゼーションの最初の1分間で生じた。関節包靭帯組織のひずみに有意な変化をもたらすには、高荷重牽引療法モビライゼーションを少なくとも45秒間持続させる必要がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

牽引療法というのは、学校では習った手技である。
だが、臨床上使う頻度が高いかというと、それではなかった。
その理由の1つが「現象がイメージしにくい」というものだった。
牽引力をかけた時に、どのような変化が関節やその周辺組織に及ぶのかがイメージしにくく、あまり意味がないように思われたからだ。

今回の抄読研究は、そのようなイメージを与えてくれる貴重なデータだった。
股関節の関節包靭帯が伸長される。
特に最初の1分間において。
筋による制限ではなく、関節包による関節可動域制限が疑われた際には、使ってみたい。

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