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大腿骨近位部骨折後の下肢の短縮・回旋変形


📖 文献情報 と 抄録和訳

股関節骨折後、下肢の短縮および/または回旋変形を有する高齢患者におけるリハビリ前後の機能的能力

📕Gialanella, Bernardo, et al. "Functional ability before and after rehabilitation in elderly patients with shortening and/or rotational deformity of the lower limb after hip fracture." PM&R (2023). https://doi.org/10.1002/pmrj.12910
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[背景・目的] 下肢の短縮・回旋変形(Shortening and rotational deformity of the lower limb, SRD)は、股関節骨折手術の主要な合併症である。SRDは股関節の機能障害だけでなく、歩行パラメータの異常、歩行速度の低下、バランス不良による機能障害も引き起こす。多くの先行研究があるにもかかわらず、SRDがこれらの患者の術後回復に及ぼす影響は未だ明らかではない。目的:股関節骨折術後にSRDを有する患者と有さない患者のリハビリ前後の機能的能力とバランスを比較し、SRDがリハビリに影響を及ぼすかどうかを評価すること。

[方法] 研究計画前向き観察研究。設定リハビリテーション病棟の入院患者。参加者股関節骨折患者102人(病棟入院時にSRDを認めなかった62人と認めた40人)。主要評価項目Berg Balance Scale(BBS)およびFunctional Independence Measure(FIM)の運動スコア。介入運動リハビリテーション。

✅ 下肢の短縮・回旋変形(SRD)の定義
■ SRDの定義:SRDの定義は、少なくとも5mmの大腿骨短縮および/または15°を超える回転不整の存在とした。
■ 下肢短縮(📕Zlowodzki, 2008 >>> doi.)、回旋変形(📕Jaarsma, 2004 >>> doi.)の定義

[結果] リハビリテーション前、SRD患者はSRDでない患者よりFIM運動スコア(p = 0.002)とBBSスコア(p = 0.001)が低かった。リハビリテーション後、両群とも運動-FIM、BBS、可動域、筋力、疼痛スコアにおいて同様の改善を示したが(すべてにおいてp<0.001)、SRD患者はSRDのない患者に比べて、運動-FIMとBBSのスコアが依然として低く(それぞれp=0.014と0.003)、運動-FIMとBBSの効果も低かった(それぞれp=0.039とp=0.034)

✅ 改善度はSRDであっても変わりなし:図は、リハビリテーション終了時のSRDの有無による運動-FIM、BBSスコアとROM(図1(A))、筋力と疼痛(図1(B))の改善を示している。SRDの有無にかかわらず、BBS、motor-FIM、筋力、ROM、疼痛スコアはベースラインと比較して改善し、これらの変数の変化は群間で差がなかった(p=ns、すべて)。

[結論] SRDはリハビリ前後のバランス能力および機能的能力の低下と関連しており、股関節骨折患者のリハビリテーションに悪影響を及ぼす。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

大腿骨近位部骨折後の大腿骨変形による弊害といえば、僕はやはり「PHKKP」が思い浮かんでしまう。
Post hip fracture knee pain, PHFKP。
僕の大学院博士の主要な研究テーマだった。

PHFKPは、骨折に伴う大腿骨の変形によって隣接関節障害が生じ、膝関節に疼痛が起こる現象を指す。
PHFKPは、疼痛はもちろん、在院日数の延長や歩行速度の低下をもたらし、予後を悪化させる。
今回抄読した研究においては、前向きに骨折後の大腿骨変形がリハビリテーションアウトカムに与える影響を明らかにした。

結果としては、『予後は悪くなるが、リハビリの効果は変形がない群と同様に期待できる』というものだった。
予後予測には注意が必要だ、だが改善の期待はできる。
入院時の画像による大腿骨変形の確認は、怠らずやっていきたい。

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