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臀筋群を神経ブロック。その時, スクワットはどうなる?


📖 文献情報 と 抄録和訳

実験的に誘発された大臀筋の筋力低下が、深い両側スクワットにおける関節運動学、反力、および動的バランス

📕Dimitriou, Dimitris, et al. "The effect of experimentally induced gluteal muscle weakness on joint kinematics, reaction forces, and dynamic balance performance during deep bilateral squats." Journal of Orthopaedic Research® 42.1 (2024): 164-171. https://doi.org/10.1002/jor.25644
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[背景・目的] スクワットは日常的によく行われる動作であり、筋力トレーニングや運動連鎖プログラムにおける基本的な運動である。本研究の目的は、実験的に誘発された大殿筋の筋力低下が、健常若年成人の深い両側スクワット時の関節運動学、関節間力(joint reaction force, JRF)、および動的バランス能力に及ぼす影響を検討することであった。

[方法] 10名の健常成人に対し、利き右脚の(1)大腿筋膜張筋への上殿神経枝(SGNtfl)、(2)上殿神経(SGN)、(3)下殿神経(IGN)を順次ブロックした。対照条件および各ブロックの後、参加者は2枚のフォースプレートの上に立って深い両側スクワットを行うよう指示された。

[結果] 股関節、膝関節、足関節、骨盤の運動学的特性は、臀筋の異所性筋力低下後も有意差は認められなかった。

最も重要な所見は、SGNおよびIGNブロック後のJRFの有意差であり、罹患した股関節、膝蓋大腿関節、足関節は低いJRFを示したが、対側の関節は有意に高いJRFを示し、特に膝蓋大腿関節は対照条件と比較して平均最大1.43×体重の差を示した。

SGNおよびIGNブロック下で深い両脚スクワットを行った場合、被験者は、コントロール条件と比較して、圧力の中心(CoP)範囲および内外側における標準偏差(SD)の増加を示した。

[結論] これらの結果は、大臀筋の筋力低下によりスクワットのパフォーマンスが大きく変化することを示唆しており、これらの傷害を有するアスリートや患者を評価しトレーニングする際に考慮すべきである。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

A+B+Cで構成される動作のうち、Aの影響を知りたいとする。
そのとき、あなたならどうするだろうか。
・・・。
ここに、研究者としての創造性が試されることになる。
その際に重要なことの1つとして、「素人さ」「子供っぽさ」があると思う。
例えば、積み木を取り除くような感覚で、単純に「Aをなくせばいいんじゃない」と思えるかどうか。
玄人には、どうしてもそういう発想がしにくくなってくる(倫理的な側面や、あれやこれやの縛り、固定観念によって)。

今回の抄読研究は、いい意味での素人さ、子供っぽさがある研究だった。
スクワットへの臀筋群の活動の影響を知りたい。
だったら、「臀筋群を神経ブロックで麻痺させちゃえばいいんじゃない?」という。
そして、その結果、関節運動学には大きな影響を与えなかったが、関節間力は変化した。
簡単に要約すると、神経ブロック側の下肢は踏ん張りが弱くなった、そしてそれは特に膝蓋大腿関節において顕著だった。
ここから、臀筋群の活動は下肢を支持するために重要だし、対側の過荷重を防ぐためにも重要だと思われた。
研究デザインを考える際には、まず子どもの頭で発想し、大人の頭で現実化したい。

大人というものは仕様のないもので、子供が持っている疑問を持たなくなる。
天地人の様々な現象について、なぜそうであるのかという疑問を忘れたところから大人は出来上がっている。

「菜の花の沖(3)」P190

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