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総腓骨神経の運動学。膝屈曲に伴いどう移動する?


📖 文献情報 と 抄録和訳

膝関節屈曲角度が膝関節後外側角の総腓骨神経の解剖学的コースに及ぼす影響と臨床的意義

📕Zhao, Anquan, et al. "Influence and Clinical Significance of Knee Flexion Angle on the Anatomic Course of the Common Peroneal Nerve in the Posterolateral Corner of the Knee Joint." Orthopaedic Journal of Sports Medicine 12.3 (2024): 23259671241232639. https://doi.org/10.1177/23259671241232639
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[背景・目的] 総腓骨神経(common peroneal nerve, CPN)の解剖学的経過に関する詳細な知識は、膝後外側角(PLC)の外科的治療にとって極めて重要である。目的:異なる屈曲角度におけるCPNと膝関節包の関係を調べること。

[方法] 研究デザイン:記述的実験室研究。方法健康なボランティア10名を募り、膝関節の屈曲角度0°、30°、60°、90°、120°でMRI検査を行った。3つのレベル(関節線、脛骨切断部、腓骨先端部)のMRIスキャンを評価し、(1)CPNからPLCまでの距離、(2)CPNから脛骨前後軸、脛骨内外軸までの距離を決定した。一人の参加者のMRIスキャンから作成した膝関節の3次元モデルを用いて、PLC再建のための腓骨トンネルの作成をシミュレートし、CPN、腓骨トンネル、ガイドピンの関係を調査した。

[結果] CPNは膝関節屈曲角度の増加とともに後内側、下内側に移動した。

屈曲角度の増加に伴い、CPNから前後軸およびPLCまでの距離は有意に増加し、内側-外側軸までの距離は3つの測定レベルすべてにおいて有意に減少した。CPNから膝関節前後軸、内側-外側軸までの距離は、膝関節屈曲角度が異なる測定レベルにおいて有意差が認められた。CPNから脛骨高原の後外側境界までの平均距離には、腓骨先端レベルで屈曲0°と30°の間に有意差はなかった(P = 0.953)。異なる測定レベルにおいて、CPNから脛骨高原のPLCまでの距離には統計的に有意な差があった。3次元モデルは、ガイドピンと骨トンネルに対するCPNの位置が膝関節屈曲時に変化することを示した。

✅ 大腿二頭筋外側頭を含めた運動学
・膝の3Dモデルから、膝を屈曲させると、大腿二頭筋が腓骨頭を支点として大腿骨シャフトの縦軸に沿って下方および内側に移動することがわかる。
・この大腿二頭筋の下方および内方への動きは、脛骨の内旋と相まって、CPNを下方および後方へ移動させる(CPN-黄色、大腿二頭筋とその腱-赤色)。
・CPNは総腓骨神経、3Dは3次元。

[結論] 膝関節屈曲角度の変化は、膝関節後外側のCPNのコースに対応する変化をもたらした。CPNは膝関節屈曲角度の増加とともに後方+下方+内側に移動した。臨床的意義PLC再建時に膝関節の屈曲角度を大きくすることで、CPNの直接的損傷を効果的に回避できる。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

解剖学の勉強に共通することは何だと思う?
その1つの答えは、『静止画であること』
いつだって、教科書は静止している、その関節角度が何度であろうとも。
だから、目の前の患者さんを見るときに参照する解剖地図は、目の前の関節が動いても、動かない。

特に、直接的な動力機関(骨格筋)ではない靭帯や神経などの軟部組織についての運動学については、ほとんど知らないと言ってもいい程ではないか?
少なくとも、今回の抄読研究のテーマとなった総腓骨神経の運動学について、僕はほとんど知らなかった。
結果として、膝屈曲角度に伴い後方、下方、内側に移動した。
このような移動は、理学療法士にとっては、軟部組織モビライゼーションや、NMESの電極貼付時の知識として重要となるだろう。

関節の運動は、骨格筋の収縮-弛緩のみならず、骨格筋の位置関係の移動、更には周辺軟部組織の位置関係の移動が起こっている。
言われてみれば当たり前のことだけれど、解剖学を静止画として習ってきた僕たちは、そのイメージを持つ能力に乏しいのではないか。
人体の1つの歯車が動いたとき、その全体も伴って動かざるを得ない。
そのイメージを大切にしたい。

宇宙は止まってはいない。そのうち一回転するよ
司馬遼太郎 「世に棲む日々(4)」P154

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