内側膝蓋大腿靭帯の運動学
📖 文献情報 と 抄録和訳
膝関節の生体内運動における内側膝蓋大腿靭帯の長さ変化:ダイナミックCTによる評価
[背景・目的] 膝蓋大腿内側靭帯(Medial patellofemoral ligament, MPFL)再建術は、誤った移植片の位置による移植片の過負荷のため、高い合併症率を伴う。臨床転帰を改善するためには、MPFLの伸長パターンについて理解を深めることが極めて重要である。
●目的:健常膝における動的屈曲0°から90°までのMPFL長さの変化と、膝蓋大腿関節の解剖学的パラメータとの関係を評価すること。
[方法] 研究デザイン:記述的実験室研究。方法健常人63名の膝115関節における屈曲-伸展-屈曲の能動的動作の動的CTスキャンを評価し、膝関節モデルを構築した。これらのモデルを用いて、大腿骨のSchöttle点から膝蓋骨の内側上縁の3つの挿入点(近位、中央、遠位)までの最短の巻き付け経路としてMPFL長を測定した。完全伸展時の長さに対するMPFL長さの変化(%)を算出し、脛骨結節-転子溝間距離、Caton-Deschamps指数、および外側転子傾斜との相関を分析した。
■ 内側膝蓋大腿靭帯(MPFL)付着部の算出方法
[結果]
■ 膝関節屈曲0~90度のMPFLの長さの変化
・近位線維:長さの中央値は、完全伸展位で最も長く、屈曲角度が深くなるにつれて徐々に減少し、屈曲90°で-6.0%(IQR, -9.4%~-2.6%)となった。
・中央線維:全般的に等尺性パターンを示した。線維長中央値は屈曲初期に2.8%まで減少し、屈曲50°で完全伸展時の長さに戻り、その後屈曲90°で-2.7%(IQR, -6.2% to 1.1%)まで減少した。
・遠位線維:長さの中央値は、屈曲初期10°で-1.8%に減少し、屈曲角度が深くなるにつれて増加し、屈曲60°で最大4.6%(IQR, -0.7%~9.4%)となった。
[結論] MPFLの長さの中央値は、屈曲0°から90°の間で約5mm変化した。近位側では、長さは連続的に減少し、弛緩挙動を示した。遠位側では、屈曲角度が深くなるにつれて長さが増加し、引き締まった挙動を示した。臨床的意義大腿骨挿入を確立するためにSchöttle点を利用するMPFL再建術では、膝蓋骨遠位への挿入は避けるべきである。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
この研究は、MPFLの運動学を調査した『インビボ研究』である。
最近の動的CTスキャンという技術が、それを可能にした。
“医工連携” という言葉がある。
“医工連携(いこうれんけい)”とは、医療に関わる新技術の研究開発や、新事業の創出を図ることを目的として、大学などの教育機関・研究機関、民間企業の医療関係者と工学関係者が連携することをいう。理学系を加えて、「医理工連携」ともいう。
僕は思うのだが、多くの場合、『工学(技術)』が先行するように思う。
新たしい技術がまず開発され、それをどのように医学に生かせる方法を医療者が考えて応用する。
日本に伝来した鉄砲を、「三段撃ち」という戦場に生かせる方法を考えて、応用した織田信長のように。
技術は、ものすごい速度で進歩しているように感じ、驚いている。
駅のホームで、目の前に急にものすごい速度の新幹線が横切った時のように。
だが、忘れたくないのは、その技術を生かすのは、人であるということ、僕たちであるということ。
最新技術を、生き生きとした臨床から創出されたアイデアによって、生かしたい。
おれが馬鹿か、世間が馬鹿か、これは議論をしても何もならん
俺のやり方で天下をひっくりかえしてみてから、さあどっちがバカだ、といってみねばわからぬ
織田信長
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