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交代圧迫療法の威力。運動後の筋機能回復↑, 筋内グリコーゲンの破壊抑制

📖 文献情報 と 抄録和訳

交代圧迫療法は運動後の筋機能回復を促進し、グリコーゲンの破壊を抑制する

📕Colantuono, Vincent M., et al. "Contrast With Compression Therapy Enhances Muscle Function Recovery and Attenuates Glycogen Disruption After Exercise." Sports Health (2022): 19417381221080172. https://doi.org/10.1177/19417381221080172
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[背景・目的] 運動関連筋損傷(Exercise-associated muscle damage, EAMD)は、筋機能と筋内グリコーゲン貯蔵量を一時的に低下させる。交代圧迫療法(Contrast with compression, CwC)は、グリコーゲンの再合成を阻害する芯温・組織温の変化を最小限に抑えながら、局所的にEAMDを治療することができる。仮説:CwCは、筋力、パワー、関節可動域の回復を促進し、EAMDのマーカーを減少させ、ダメージのある運動後に観察されるグリコーゲン貯蔵の破壊を減衰させることができる。

✅ 交代圧迫療法(CwC)の背景
・アスリートは回復を早めることを目的として、様々な回復療法や技術に取り組むことが多い。リカバリー療法の代表的なものとして、コントラストウォーター療法(温熱と冷熱を交互に浴びる)とコンプレッションウェア療法がある。
・コントラストウォーター療法の効果:コントラストウォーター条件は、熱感覚、全身疲労、筋肉痛を概ね改善した(📕Versey, 2011 >>> doi.)
・コンプレッションウェア療法の効果:コンプレッションウェアが運動によるパフォーマンス/膝伸筋力低下を低減し、筋肉痛を低減した(📕Jakeman, 2010 >>> doi.)

[方法] 研究:デザインクロスオーバーデザインによる無作為化比較試験。エビデンスレベルレベル2。10人の男性が、1週間間隔で2回、対側の腕を使った肘関節屈伸運動のエキセントリックバウトを行った。各試合の後、参加者はCwC療法(運動後0、24、48時間)または療法なしのいずれかを受け、介入の順序と肢位はランダムに割り当てられた。

✅ 交代圧迫療法とは?
・CwCは、運動した腕に12インチの加圧カフを装着し、高温(42℃)と低温(8℃)の液体を交互に流しながら投与された
・カフは上腕にしっかりと巻き付けられ、カフのデザインの一部である2本のベルクロストラップによって固定
・治療中、温度調節された液体がカテーテルを通って流れ、圧縮力を加える
・10分間の治療で、流体の温度は1分間隔で高温と低温を交互に繰り返す
・各参加者は1回の治療セッションで合計5回の高温-低温サイクルを受けた

📕Oakley, Ryan. University of Rhode Island, 2019. >>> pdf.

運動前、運動後1時間、24時間、48時間、72時間後に、筋力、筋パワー、筋内グリコーゲン、クレアチンキナーゼ、筋厚、筋肉痛、圧痛閾値、肘関節屈曲、肘関節伸展、食事摂取量を測定した。各時点での治療効果を表すために、個別の反復測定分散分析/多変量分散分析および効果量(Cohen d)を用いて、経時的な条件間の比較(相互作用効果)を行った。

[結果] 筋力(d = 0.67-1.12)、筋力(d = 0.20-0.65)、筋肉内グリコーゲン(d = 0.29-0.81), クレアチンキナーゼ(d = 0. 01-0.96)、筋厚(d = 0.35-0.70)、筋肉痛(d = 0.18-0.85)、肘関節屈曲能(d = 0.65-1.17 )は、CwCの経時的有益効果を示した(P ≤ 0.05).一方、圧痛閾値や受動的肘関節伸展では、有意な相互作用効果は認められなかった(P>0.05)。

[結論] これらの結果は、男性患者における損傷性運動後の筋機能回復のためのCwCの使用を支持し、CwCが激しい偏心運動後に観察される筋肉内グリコーゲン貯蔵の破壊を減衰させるが、除去しないことを示すものである。臨床的な関連性解糖依存症のアスリートは、EAMDを引き起こすトレーニング/競技の後、CwC療法が有効である可能性があります。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

近代科学の抱いている目標は、できる限り微かな苦痛、できる限り長い生命
ニーチェ

老若男女、すべての人間が切望することがある。
それは、『回復』だ。
疲労からの回復。
精神的ストレスからの回復。
そして、運動後の筋機能の回復。

こと、アスリートにとっては切実な問題だ。
彼らにとって、一刻も早い回復は、翌日の良い練習、良い試合でのパフォーマンスに直結する。
さらには、疲労の蓄積は障害につながるため、害悪の除去という役割も忘れてはならない。

これまで、運動直後の回復促進の方法として、代表的には『アイシング』が用いられてきた。
現在においても、最もメジャーな方法の1つだろう。
だが、近年、絶対的とも思われた、その足場がぐらついている。
「アイシングは、筋再生を鈍らせる」というエビデンスが出始めているのだ。

今回の抄読研究は、これまでに報告されてきたコントラストウォーター療法コンプレッションウェア療法という2つの療法をFusionした。
その交代圧迫療法は、様々な筋機能を向上させ、筋肉痛や筋内グリコーゲン貯蔵の破壊を抑えた。
今後は、回復戦略の群雄割拠、戦国時代に入るかもしれない。
天下統一するのは、果たしてどの方法か。
しっかりと見定めたい。

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