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アイシングの適温。冷たすぎると筋血流量は変わらない

📖 文献情報 と 抄録和訳

冷水への浸漬(22℃)は運動後の大腿四頭筋の筋灌流を冷水(8℃)への浸漬よりも低下させる

📕Mawhinney, Chris, et al. "Cool-Water Immersion Reduces Post-Exercise Quadriceps Femoris Muscle Perfusion more than Cold-Water Immersion." Medicine and Science in Sports and Exercise (2022).
https://doi.org/10.1249/MSS.0000000000002898
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar

[背景・目的] 運動後の冷水浸漬(cold-water immersion: CWI)に対する筋灌流反応については、十分に理解されていない。我々は、Positron Emission Tomographyと[15O]H2Oを用いて、運動後の段階的なCWIが大腿四頭筋の全体および局所筋灌流に及ぼす影響について検討した。

[方法] マッチド・グループデザインを用いて、30名の健常男性が、体温38℃まで70%V_O2peakでサイクルエルゴメータ運動を行い、その後、8℃、22℃のCWIを10分間行うか、座位安静(コントロール)を行った。大腿四頭筋の筋灌流、大腿およびふくらはぎの皮膚血管コンダクタンス、腸、筋、局所皮膚温度、温熱快適性、平均動脈圧、心拍数を運動前、運動後、CWI後に評価した。

[結果] 大腿四頭筋の全体的な灌流は、22℃の水中では対照群と比較して、あらかじめ定義された臨床的最小閾値(100g-min-1あたり0.75mL)を超えて低下した(差(95%信頼区間(CI)) → 100g-min-1あたり-2.5(-3.9→-1)mL)。8℃の水中では大腿直筋(-2.0 (-3.0 to -1.0) mL per 100 g-min-1)と外側広筋(-3.5 (-4.9 to -2.0) mL per 100 g-min-1)、22℃水中では外側広筋(-3.3 (-4.8 to -1.9) mL per 100g-min-1)がコントロールに対して臨床的に関連した筋灌流の減少が観察された.中間広筋と内側広筋の平均的な灌流効果は、臨床的に重要ではなかった。大腿およびふくらはぎの皮膚血管コンダクタンスには、いずれの冷却条件においても臨床的な低下がみられた。

[結論] 本研究では、大腿四頭筋の全体的な血液灌流は、22℃の低温では臨床的に有意な減少を示したが、8℃の冷却では有意な減少を示さなかった

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

まず、運動後のアイシングの目的について理解したい。
それを理解しないと、「血流低下が良いことかことか良くない事か」の価値づけができない。

✅ 運動後のアイシングの目的:クールダウンの一つの手段
- スポーツなどの激しい運動をすると筋肉などからの熱の発生で体温が上昇し、それに伴い皮膚の血管が拡張し、血流量が増える
- 上がった体温による熱をアイシングによって下げることは目的の1つ
- CIVD(cold-induced vasodilatation: 冷却がもたらす血管拡張効果):運動後のアイシングは、その部分の張りや痛みを抑えると同時に、血管が収縮され一時的に血液の流れを悪くするが、アイシング中止後しばらくすると血管は膨張し、血流が活性化して疲労物質の乳酸を勢いよく吸収するリバウンド効果が現れる。これはCIVDといわれ、局所冷却によって一時的な新陳代謝の低下や血管の収縮をおこし、その後、局所冷却をやめたり温水につけるなどの加温を行ったりすることで、収縮させた血管を拡張し、新陳代謝が低下している組織への血流を増やし、疲労などの原因の乳酸やその他の老廃物を除去し、疲労回復を早める効果を狙ったもの
🌍 参考サイト >>> site.

以上を参考にすると、運動後のアイシングにおいて一時的に血流量が減少することは「良い」、血流量が変わらないことは「目的を達することができない」と考えられる。
その視点から今回の結果をみると、22℃では良い、8℃では良くない
一般的にスポーツ現場で用いられているアイシングの多くは氷嚢やアイスパックである。
それらは、22℃より8℃に近いだろう。
もしかしたら、今まで効果を見込んで氷嚢やアイスパックを使用していたことが徒労だった可能性がある、ということだ。恐ろしいことだが。

その他にも最近、アイシングは筋損傷後の回復を阻害する(以下note参照)ことが報告されており、その是非が本格的に問われ始めている。

そして、今回の結果で良いとされた22℃に近い15℃の相変化材料(phase change material: PCM)を用いて冷却するという新しい方法が、運動後に3~6時間投与され、成功を収めている。

この領域からは、目が離せそうにない。

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