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アイシングは筋再生を鈍らせる? だったら、PCMを使いなさい!

▼ 文献情報 と 抄録和訳

冷たい真実:怪我の治療と運動からの回復におけるクライオセラピーの役割

Kwiecien, Susan Y., and Malachy P. McHugh. "The cold truth: the role of cryotherapy in the treatment of injury and recovery from exercise." European Journal of Applied Physiology (2021): 1-18.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[レビュー概要] クライオセラピーは、怪我の治療や運動の回復のための物理的介入として活用されている。伝統的には、筋骨格系の損傷には氷を用い、運動の回復には冷水浸漬や全身凍結療法が用いられる。ヒトでは、従来の凍結療法の主な効果は、怪我の後の痛みや運動後の痛みの軽減である。筋損傷の動物モデルでは、凍結療法による代謝、炎症、組織損傷の軽減が実証されているが、ヒトでは同等のエビデンスがないのが現状である。これは、従来の凍結療法の適用期間が不十分であることが原因と考えられる。この限界を克服するには、従来の冷却療法を繰り返し行う必要がある。最近では、15℃の相変化材料(PCM)を用いて冷却するという新しい方法が、運動後に3~6時間投与され、成功を収めている。

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凍結療法の持続時間と組織温度低下の持続時間への影響。従来の凍結療法(全身凍結療法(WBC)、冷水浸漬(CWI)、氷)では、1回の治療では組織温度の低下期間が限られている。この限界を克服するには、繰り返し治療を行って組織温度低下の持続時間を延長する必要がある。しかし,これは論理的に不可能な場合が多く,また,患者やアスリートが厳しい治療スケジュールに従う可能性は低い。そこで、相変化材料(PCM)を用いた冷却を1回だけ行うことで、組織温度の低下期間を長くすることができる。また、従来のクライオセラピーの直後にPCMを適用することで、組織の温度低下の持続時間を延長することもできる。推測ではあるが、(1)従来の冷却療法を繰り返し行う、(2)従来の方法で1回の治療を行い、その直後にPCM冷却を行う、(3)PCMを用いて1回の治療を長引かせる、といった方法で、冷却療法を長引かせることで、臨界レベルの組織冷却を達成できる可能性が高い。3.PCMを用いた1回の治療を長引かせる) 組織の温度を下げる時間を長くすることで、特に二次的な損傷の段階で、凍結療法の臨床効果を最適化できる可能性がある。

レジスタンストレーニング中に凍結療法を慢性的に行うと、同化トレーニング効果が損なわれることが示唆されているが、PCMを用いた回復は急性適応を損なうものではない。したがって、運動後に凍結療法を行うのは、日常的なトレーニングの後ではなく、運動の合間に急速な回復が必要な場合に限られる。最終的には、回復手段としての凍結療法の有効性は、筋温の低下を維持する能力と、損傷が発生したときや運動を中止したときの治療のタイミングに依存する。損傷や激しい運動後の数時間に発生する二次的な組織損傷の増殖を抑えるためには、構造的な損傷が発生してから数時間以内に大量のクライオセラピーを適用することが不可欠である。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

以前ありでも紹介したが、従来のアイシングでは、筋再生を鈍らせるというエビデンスが示されてきている。

Facebookにその研究のリンクをシェアされている方がいた。
そのシェアされた記事のコメントに、
「えっ、じゃあ、どうしたらいいんですか!?」があった。僕も、そう思った。
二次損傷を防ぎつつも、同化を阻害しない方法が求められる。
そんな方法が見つかりつつある。
『PCM』だ。PCMは一定の温度を長時間保ちやすい物質であり、それを用いて3-6時間緩やかな冷却を持続することで、同化阻害などの副作用のない冷却が可能になるという。

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Kwiecien, Susan Y., Malachy P. McHugh, and Glyn Howatson. "Don't Lose Your Cool with Cryotherapy: the application of phase change material for prolonged cooling in athletic recovery and beyond." Frontiers in Sports and Active Living 2 (2020): 118. >>> DOI

ただし、レビュー概要の最後にもあるように従来のアイシングが適している場面も当然あると思われるので、その棲み分けをしっかりしていこうというイメージを持ちたい。

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