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本とラジオが好きです。

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記事一覧

破廉恥憧憬紀 十

 聖なる前夜はクラブ活動が原則禁止となり下校時刻が早められる。これは、恋に溺れる諸姉の暴走を防ぐために編み出された策の一つであり、本校教師の私生活を確保するため…

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8日前
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破廉恥憧憬紀 九

 「少し外へ出よう」高島は私を外へ誘った。  病院の中庭は意味不明なオブジェを中心として放射状に道が延びており、それぞれが各病棟へ続いている。道は花壇によって区…

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13日前
1

破廉恥憧憬紀 八

 この事態を好転と捉えてよいのだろうか。  大貫の悪行が暴かれたことによって我々の聖戦が大きく前進したことは言うまでもない。これは紛うことなき好機である。しかし…

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2週間前
2

破廉恥憧憬紀 七

 我々が水筒を設置して以降、カメラに映る景色に変わりはなかった。あれから、ぱたりと花瓶は動かなくなったのである。実戦形式の打撃練習が如く、疑いが確信に変わったあ…

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2か月前
2

破廉恥憧憬紀 六

 高島が取り出した水筒は錆びついており、どうも飲料を留めておくには衛生的な基準を満たしていないと思われた。高島は蓋を開け、喇叭飲みの仕草をしてみせた。私から軽蔑…

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2か月前
1

破廉恥憧憬紀 五

 翌日、私は一番乗りに登校した。  生徒のいない校舎はひんやりとしていて、身に走る緊張を助長した。足早に仮眠室へ向かうと、用務員の柳沼さんが室内から出てくるのが…

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2か月前
2

今日の日記(5/30)

 昨日まで、あまりの疲れに日記を書く間もなく寝てしまった。  今日は職場内の研修で一日が過ぎた。  研修のグループが同じになった別部署の同僚は、彼が見ている新人…

サン
2か月前

今日の日記(5/22)

 先日、上司に今年度末での退職と本屋への転職希望を伝えた。  明らかな、本屋で働くことへの侮蔑を察知した。今年度の辞職が固く決まった瞬間であった。  確かに公務…

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3か月前
1

今日の日記(5/21)

 疲れた。寝ます。  おやすみなさい。  こんなやつでも繋がればいいんです。  命が繋がれば。

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3か月前

今日の日記(5/20)

 一日は二十四時間ある。  そのうちの一体いくらを自分の時間に充てることができているのだろうか。  ここにおける自分の時間を定義しよう。趣味であるラジオや読書、筋…

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3か月前

今日の日記(5/19)

 連続テレビ小説「オードリー」の再放送を観ている。  二人の母、アメリカ育ちの父。不思議で、歪んだ家庭環境の中で育つ主人公を描いた作品。普段、連続テレビ小説を観…

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3か月前
3

今日の日記(5/18)

 これが最も幸福な4070円の使い方だ!  異論しか認めません。  こちらが本を選ぶ時、本もまたこちらを選んでいる。  楽しみは自分で増やすしかない!  おやすみな…

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3か月前

今日の日記(5/17)

 寝落ちした。変な時間に目が覚めた。  今週も随分と疲れた。新人の教育係となり、目まぐるしく1週間を終えた。しかし、その立場になり改めて自分を見つめ返すことにな…

サン
3か月前
1

今日の日記(5/16)

 今日は何も書く気が起きない。  ということを書いておく。  眠いので寝る。明日超早起きしちゃうもんね。  おやすみなさい。  

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3か月前

今日の日記(5/15)

 私にしては珍しく日記が続いている。  最近の私は、嫌なこと続きの我が精神世界を開示することによって、一筋の光をもたらそうとしている。もちろん、自分の手で掴み取…

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3か月前
5

今日の日記(5/14)

 人間は中々気持ち良く生きることは難しい。  どの方角に向かっても、何か、誰かがつっかかる。それを成長が為の試練だと思えるほど、私は清くない。むしろ鬱陶しく、邪…

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3か月前

破廉恥憧憬紀 十

 聖なる前夜はクラブ活動が原則禁止となり下校時刻が早められる。これは、恋に溺れる諸姉の暴走を防ぐために編み出された策の一つであり、本校教師の私生活を確保するためのものでもあった。かつてはクラブ活動後に校舎内に忍び隠れる生徒の対応に深夜まで追われることもあったようである。そう語る大貫はもはや我々の味方のようであった。この鞍替えぶりは甚だ不気味だが、まあよしとしよう。
 「ここはまず見つからない。物置

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破廉恥憧憬紀 九

 「少し外へ出よう」高島は私を外へ誘った。

 病院の中庭は意味不明なオブジェを中心として放射状に道が延びており、それぞれが各病棟へ続いている。道は花壇によって区切られ、当然人工的に造られた色彩たちがややのっぺりと広がっていた。我々は中庭に出てすぐのベンチに腰を下ろし、自販機で買ったコーラを飲んだ。花が風にしなやかに揺れている。
 「コーラなんて飲んで大丈夫なのか?」
 「医者にはよいと言われた。

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破廉恥憧憬紀 八

 この事態を好転と捉えてよいのだろうか。
 大貫の悪行が暴かれたことによって我々の聖戦が大きく前進したことは言うまでもない。これは紛うことなき好機である。しかし、これで高校内部に咎人の存在が明らかとなり、我々はもう一つの聖戦へと足を踏み入れたことになる。自分でも理解できない正義感がふつふつと湧き上がり、暴走することも否めないが、逡巡の末、私は前者を選んだ。これを「破廉恥聖戦」と名付けることにする。

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破廉恥憧憬紀 七

 我々が水筒を設置して以降、カメラに映る景色に変わりはなかった。あれから、ぱたりと花瓶は動かなくなったのである。実戦形式の打撃練習が如く、疑いが確信に変わったあとも我々は攻めあぐねていた。
 練習終わりの誰もいない夜のグラウンドで、我々は自主練習の傍ら、打開策を模索していた。高島の誘いであった。
 「やはり柳沼さんか教頭かのどちらかだろうが、証拠を掴めていない現況では、はぐらかされるのが関の山だ」

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破廉恥憧憬紀 六

 高島が取り出した水筒は錆びついており、どうも飲料を留めておくには衛生的な基準を満たしていないと思われた。高島は蓋を開け、喇叭飲みの仕草をしてみせた。私から軽蔑の視線を向けられた高島は「そんなわけないでしょ」と呟き、水筒の中から滑り出たのは小型カメラであった。

 「目には目を、歯には歯を、盗撮には盗撮を」
 そう言う高島のいたずらな笑顔たるや、古代仏典に名を遺す悪魔そのものであった。こいつは載っ

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破廉恥憧憬紀 五

 翌日、私は一番乗りに登校した。
 生徒のいない校舎はひんやりとしていて、身に走る緊張を助長した。足早に仮眠室へ向かうと、用務員の柳沼さんが室内から出てくるのが見えた。私は一瞬足を止めたが、外面勇ましく歩を進め、柳沼さんの前に立った。
「おはよう。随分と早いじゃないか」
「おはようございます。ここで何をしていたんですか?」
 私の問いに柳沼さんは不思議そうに首を傾げたが、すぐに年季の入った笑顔で言

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今日の日記(5/30)

 昨日まで、あまりの疲れに日記を書く間もなく寝てしまった。

 今日は職場内の研修で一日が過ぎた。
 研修のグループが同じになった別部署の同僚は、彼が見ている新人の仕事ぶりに不満げであった。
 聞くと、仕事の端端に軽さが見えるという。業務上の対応に意図を感じないということであった。私は彼の言葉に同意も否定もしなかった。
 働き始めて一ヶ月の新人の中に、意図を持つだけの材料があるだろうか。経験がない

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今日の日記(5/22)

 先日、上司に今年度末での退職と本屋への転職希望を伝えた。

 明らかな、本屋で働くことへの侮蔑を察知した。今年度の辞職が固く決まった瞬間であった。

 確かに公務員であるから、給与や社外的安全性の保証されているであろう。しかし、今の私にその観点を重視する価値観はない。「やりたいこと」か否かが重要であるのだ。
 伝えて良かったと思った。そんな人々に囲まれた職場だと再認識することができたのだから。

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今日の日記(5/21)

 疲れた。寝ます。

 おやすみなさい。

 こんなやつでも繋がればいいんです。
 命が繋がれば。

今日の日記(5/20)

 一日は二十四時間ある。
 そのうちの一体いくらを自分の時間に充てることができているのだろうか。
 ここにおける自分の時間を定義しよう。趣味であるラジオや読書、筋トレなど「仕事とは切り離された時間」とする。

 朝は五時半ごろに起きる。準備時間までの一時間ほどを読書に充てる。六時半ごろから準備を始め、七時前に家を出る。職場に着くのが七時十分ごろ。この時点でおかしいことに、日記を書きながら改めて気づ

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今日の日記(5/19)

 連続テレビ小説「オードリー」の再放送を観ている。

 二人の母、アメリカ育ちの父。不思議で、歪んだ家庭環境の中で育つ主人公を描いた作品。普段、連続テレビ小説を観ない私がここまで熱中しているのには理由がある。

 一つは、京都が舞台であること。
 今作は太秦の撮影所を取り巻く人間関係を中心に描かれた作品である。
 私にとって大学時代を過ごした京都への想いは、やはり強い。京都が舞台、というだけでも私

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今日の日記(5/18)

 これが最も幸福な4070円の使い方だ!
 異論しか認めません。

 こちらが本を選ぶ時、本もまたこちらを選んでいる。

 楽しみは自分で増やすしかない!

 おやすみなさい。

今日の日記(5/17)

 寝落ちした。変な時間に目が覚めた。

 今週も随分と疲れた。新人の教育係となり、目まぐるしく1週間を終えた。しかし、その立場になり改めて自分を見つめ返すことになった。ありがたい経験である。
 私の母は、「常に感謝していること」と言う。私はこの言葉を真正面から受け入れることはできていないが、一理あると感じた一週間であった。

 今週は、『新釈走れメロス 他四篇』を読み続けた。

 やはり私は森見作

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今日の日記(5/16)

 今日は何も書く気が起きない。
 ということを書いておく。

 眠いので寝る。明日超早起きしちゃうもんね。

 おやすみなさい。

 

今日の日記(5/15)

 私にしては珍しく日記が続いている。
 最近の私は、嫌なこと続きの我が精神世界を開示することによって、一筋の光をもたらそうとしている。もちろん、自分の手で掴み取るのではない。読んでいただいた皆さまからの授かりを待っているのみである。

 早朝と寝入りばな、1時間ほどの読書をしている。これまでと違うのは他のやることを差し置いて読むということだ。これが案外精神の安定につながる。そもそもが不安定なのだか

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今日の日記(5/14)

 人間は中々気持ち良く生きることは難しい。
 どの方角に向かっても、何か、誰かがつっかかる。それを成長が為の試練だと思えるほど、私は清くない。むしろ鬱陶しく、邪魔くさいとさえ感じる。

 今の私では、他人を尊ぶことなどできない。認識も不確かな心の奥底で他人を嘲り、侮蔑しているのかもしれない。そこまで自分自身が高尚でないにもかかわらずだ。そんな自分が嫌になることもあるが、変え方が分からない。結局は人

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