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上場企業でライフサイエンス領域の新規事業開発職をやっています。Ph.Dと国内MBAホル…

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上場企業でライフサイエンス領域の新規事業開発職をやっています。Ph.Dと国内MBAホルダー。学びと実務を両立させながら日々感じたことを発信していきたいと思います。(ご相談ごとがあればお気軽にご連絡ください。)

最近の記事

ボストン・コンサルティンググループの報告資料を一挙公開

書籍などで「資料作成の達人」=「外資系コンサルティングファーム」というイメージがあります。過去にはアクセンチュア、マッキンゼーの資料について取り上げましたが、今回は、ボストン・コンサルティンググループの報告資料をまとめて公開したいと思います。 とにかく、激務というイメージが強く(最近ではかなり改善された。という話は聞きますが)、知力と体力に恵まれた人たちが作成した資料となりますので、いろいろ参考になりますね。 1)令和5年度我が国におけるデジタル取引環境整備事業(ブロック

    • 新規事業の創出難易度は、業種によって異なる。

      巷には多数の新規事業に関する本があふれています。非常に参考になる内容が多いものの具体的にどんな新規事業を立ち上げたのか?についてケーススタディされている本は案外少ないです(もしくは書いてあっても表面的すぎてよく中身が見えない)。 その結果、その本の著者が経験した業界の新規事業の複数例が抽象化され、セオリーとして語られています。 これはある程度仕方が無い部分でもあるのですが、少なくとも新規事業担当者は「業界によって新規事業へのアプローチは異な部分があり、難易度も異なる」とい

      • 「再現性」の概念がない成功者が新規事業をつぶす

        新規事業開発に携わる人の中で、失敗することを望んでいる人は稀でしょう。できれば成功したい。 新規事業の成功を目指す場合、過去に新規事業で成功を収めた人がリーダーとなれば理想的だと誰もが思うでしょう。しかし、実はここにも大きな落とし穴があります。過去の成功者がリーダーとなることは、場合によっては、最悪の事態を招きかねないのです。 最も危険なパターンが、過去の成功者(名前は「甲さん」とします)が、再現性を意識せずに、たまたま新規事業に成功した場合です。例えば、自分が「可能性が

        • 新規事業人材が不足するのは当たり前

          新規事業開発に取り組むうえで、いつも問題点の上位として挙げられるものがあります。それは「新規事業を担う人材不足」です。以下のデータは中小企業に関するものですが大企業においても悩みはほぼ同じです。 人材が不足していれば ①社外から採用する ②社内から引っ張りぬく の2つの解決方法がありますが、いずれも問題があります。 自社外から採用するケースを考えてみましょう。もちろん、外から採用するのであれば、「新規事業を成功させた経験のある人」を引っ張ってきたくなります。しかしこれはか

        ボストン・コンサルティンググループの報告資料を一挙公開

          「志」が無い意思決定者のもとでは新規事業は育たない。

          新規事業を担当していると、困惑する場面に出くわすことが多々あります。その中でもよくある事例の一つが「意思決定者(=経営層)の判断軸が大いにブレ始める。」というものです。 よくある事例として例えば「リスクは許容するし、時間がかかってもよいから、革新的(イノベーティブ)なことをやってくれ。」といった意思決定者の当初の方針があったとします。 かなり抽象的な言葉の羅列になっていますが、意思決定者は実務担当ではないのでこのレベル感で指示されることは多いでしょう。おそらく、リスクとは

          「志」が無い意思決定者のもとでは新規事業は育たない。

          「すぐやる」の判断を可視化する。

          以前、新規事業にはとにかく行動力が必要なのか?ということについて考察した記事を公開しました(参照)。この記事では、行動の判断基準として、膨大な知識がある。点に触れましたが、本記事では、社内的にどういう基準で「すぐやる」べきなのか、まず、「調査する」べきなのか、を明らかにしたいと思います。 結論としては明確です。リスクと費用の2軸マトリックスを作成し、現在考えている新規事業がどこに該当するか、を考えることになります。図は、ざっくり以下の通りとなります。 これらの行動基準は、

          「すぐやる」の判断を可視化する。

          生成AIを事業環境分析に活用してみる

          よく、新規事業開発では「上司への報告資料を作成する時間があるなら、顧客の声を聴け!」と言われます。まったくその通りではあるものの、ほとんどの企業において上司報告を省略することは非常に難しいでしょう。 通常、新規事業担当者の上司は、新規事業がどのような進捗になっているか把握するという職務を背負っています。そして、それを経営者に伝えます。経営者は株主に対して説明責任を負いますので、新規事業の内情を把握しておく必要が出てきます。 報告内容については、会社によってさまざまではある

          生成AIを事業環境分析に活用してみる

          新規事業では、「できない理由」を並べる思考回路をまず変えてみる。

          「あなたは、できない理由を並べる社内評論家でしょうか?」と聞かれて「はい。」と答える人は、まずいないでしょう。誰しもが自分自身のことを、少なくとも積極的かつ協力的で優秀だと思っているはずです(笑)。 自分自身をポジティブに評価すること自体は何も悪いことではありません。通常、自己評価が他者評価よりも高い傾向にあるのですが(面白いことに、あまり優秀ではない人のほうが自己評価が、かなり高い傾向にあるようです。(参考))、自己評価が低すぎると鬱になる可能性が高まります。自己評価が高

          新規事業では、「できない理由」を並べる思考回路をまず変えてみる。

          新規事業では「やりたいこと」が重要?

          しばしば新規事業担当者に必要なのは「やりたいこと」をやること。と言われる場合があります。それはそれで正しいのですが、「やりたいこと」を軸に新規事業を考えると非常に危険です。 その理由は3つあります。 ①顧客視点ではなく自分視点になっている お客さんの立場からすれば、その商品やサービスを選ぶのはなぜでしょうか? おそらく自分の願いをかなえてくれるとか、自分が抱えている問題を解決してくれる。といった理由からでしょう。(日用品や食品であれば、あまりに当たり前になっているため、

          新規事業では「やりたいこと」が重要?

          社内評論家が出世する企業で新規事業を行うのは非常に難しい。

          新規事業を進める上で、避けられない壁があります。それは「社内からの批判」です。そもそも、その会社にとっての新規事業は既存事業よりも圧倒的に情報が足りませんし経験値も低いため突っ込みどころは多い。 その中で、非常に問題となってくるのが社内評論家です。社内評論家は、有名大学を積極的に採用している大企業に多いように思います。業種でいうと重厚長大系。ある意味、有名大学卒業者と安定操業を第一とする重厚長大系の企業は相性が良いのです。 なぜなら、有名大学卒業者は答えがある問題に対して

          社内評論家が出世する企業で新規事業を行うのは非常に難しい。

          新規事業における「共通バイブル」の必要性

          新規事業担当の方は、おそらく何らかの新規事業開発に関する本をお持ちかと思います。これ自体重要なことですが、その本をバイブルとして部署内、かつ担当役員レベルで共有できているでしょうか? 会社によっては「経営学」や「組織学」に関する本が、役員レベル~幹部クラスで共有されているのです。ここでいう共有というのは、「本自体が読みこまれ、しっかり自分自身として理解していること」を指します。 仮に本という形でなかったとしても、会社独自の行動指針や経営・新規事業に関する判定軸が、しっかり

          新規事業における「共通バイブル」の必要性

          新規事業の成功確率を数字で考えてみる。

          東証一部上場の名門企業で純粋な成功企業を成功させた人材は非常に稀かと思います。ここでいう「純粋な新規事業」というのは、スタートアップ企業が取り組むような、0→1を起点とした新規事業のこと。つまり、自社の強みが個人(=創業者)のスキルやマインドセット、人脈に依存しており、組織としての資源がほぼない状態で、大きな成長を遂げる事業のことを指します。 実は、大企業での新規事業の定義はあいまいで、「新商品開発」との区別がつかなくなっているケースが多々あります。グロービスの記事によると

          新規事業の成功確率を数字で考えてみる。

          Chat-GPT時代の新規事業開発人材の価値

          Chat-GPTの出現によりホワイトカラーの仕事は、大きく奪われる(参考記事)。多方面から予想されていることであり、アメリカ企業では大量解雇のニュースも実際に出ています(参考記事)。 一方で日本はアメリカに比べ解雇は難しいですから例えAI活用によって企業の生産性が上がったとしても解雇されることはまずないと思って間違いないでしょう。以前から、経理・財務などの会計人材は不要になる。とか言われ続けていました。ところが非常に面白いことに会計事務員の求人数はほとんど横ばい、もしくは微

          Chat-GPT時代の新規事業開発人材の価値

          新規事業にMBAは役に立つのか?

          起業や社内での新規事業を立ち上げるにあたって、まず、MBAを取得しておきたい。そんな考えを持っている人もいるかと思います。 結論としては、「MBAはある程度、新規事業開発に役には立つが必須ではない。」ということです。国内MBAではなく、もしアイビーリーグ(ハーバード大学、プリンストン大学、エール大学、コロンビア大学などの超有名大学)などの世界一流校を出ていれば話は別かもしれませんが、基本的に学ぶ内容は変わらない。と考えると、同じ結論に至っていたといえるでしょう。 MBAは

          新規事業にMBAは役に立つのか?

          無限の成長を求める社会の歪み

          ふと思いながらも、公言することが憚れる言葉があります。 それは「これ以上、企業は成長する必要があるのでしょうか?」というものです。 そもそも「成長しない」という選択肢を考えたことがない方々も多いかもしれません。資本主義というゲームに参加している以上、成長はルールであり、そのルールに対して疑問を持つこと自体が違反とされる。ということです。担当者レベルではまだ「成長なんて不要だ!」と言えるかもしれませんが、経営陣が株主総会でいうことは実質不可能でしょう。 新規事業を考える時

          無限の成長を求める社会の歪み

          新規事業での目的がいつの間にか変わる

          新規事業を担当していると非常に困ることが連発します。その一つが、意思決定者(通常役員以上)の考え方がコロリと変わる。というものです。 例えば、当初は 1)社会課題解決を強く意識するので高い利益率は求めない。 2)既存事業開発とは異なるため、失敗は許容する 3)既存事業よりも事業化の時間がかかることは認識している。 4)新規事業と既存事業の人事評価制度は別にする。 など、約束したとします。 ところが、いつの間にか、「すぐに稼げる事業は無いのか?」とか、「利益率は既存事業より

          新規事業での目的がいつの間にか変わる