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新規事業にMBAは役に立つのか?

起業や社内での新規事業を立ち上げるにあたって、まず、MBAを取得しておきたい。そんな考えを持っている人もいるかと思います。

結論としては、「MBAはある程度、新規事業開発に役には立つが必須ではない。」ということです。国内MBAではなく、もしアイビーリーグ(ハーバード大学、プリンストン大学、エール大学、コロンビア大学などの超有名大学)などの世界一流校を出ていれば話は別かもしれませんが、基本的に学ぶ内容は変わらない。と考えると、同じ結論に至っていたといえるでしょう。

MBAは経営学を学びますが、得られるものは以下、大きく4つあります。
①経営学の基本的な考え方
②様々な会社に関する知識(ケーススタディを通して学ぶので記憶定着率が良い)
③人脈
④根性(タイムマネジメント力)

新規事業を行うにあたって役立つと感じるのは、②、③、④です。例えば②では、新しいビジネスアイデアや他社の分析を行う際に、頭の中にインプットされている、良い会社のケースと比較できるため、理解が深まりやすいのです。また分析するための基本的なフレームワークも初歩的なものは頭に入っているため、何をしていいのかわからない。ということにはなりません。

③は、本音を言えば、ものすごく役に立っている。とはいいがたいところではありますが、多少は役に立っているとは思います。卒業生の集まりでは、いろんな会社の話も聞けますし、全くコネクションがなければおそらく会うことすらできなかったような先生方々とも普通に飲みに行けたりしますので、面白い情報がインプットできます。海外トップスクールであれば、将来のCEOがたくさん存在しているため、より密な関係が得られるのでしょうが、基本的に国内MBAではほとんど期待できません。

④について、多少つらくても継続して学ぶ姿勢(=根性)は結構役つと思います。情報収集は欠かせませんが、普段から膨大な情報をインプットし続けながらアウトプットも行う行為は普段から学習習慣のない人にとっては苦痛以外の何物でもないでしょう。

そして本題の経営学ですが、有名な経営学者ではポーターやバーニーが挙げられるでしょう。マーケティングも含めたいと思いますのでコトラーをご存じの方もいらっしゃると思います。これらの原著(日本語訳でもよい)を読んでみるとわかると思いますが、書いてある内容は膨大で実際に即使えるかというとかなり難易度が高いでしょう。

有名な教授の理論ですので、もっとわかりやすくコンパクトにまとめてある本は多数出版されていますが、内容が薄くなりすぎていて、本質つかめず使ってしまう、という落とし穴にはまる可能性が大です。やはり原著を読むのがよいでしょう。

一方で難点は、経営学の原著はつまらない。という点です。小説ではないし、即実務に役立つようなノウハウでもありませんので、学者タイプでなければ読むのは結構苦痛でしょう。前述のように、内容が膨大すぎて実務にどう活かせばよいのかがわからなくなってくる。という悩みも生まれるでしょう。

そして、究極的な難点は、経営学を学んだからと言って、自分の会社の業績が良くなることを保証するものではない。というところです。経営学に愚直に従えば必ず良い結果が得られる、とおっしゃる方もいます。これは正しいことを言っているのでしょうが、愚直に従う方法論が無数にありすぎるため(ポーターを読むとよくわかると思います)、失敗した=愚直に従っていない、成功した=愚直に従った という後付けがいくらでも可能となるのです。

結局は、新規事業を成立させるためには、お客さんが欲しいと思っていると推測されるものをヒヤリングなどを通して実際に確かめ、テスト的に売り出し、反応を見ながら改善を繰り返していく。ということが必要となります。これは経営学の基本概念を演繹的に活用するというよりは、実証実験を基本とする自然科学のアプローチに近いといえるでしょう。

以上のように、新規事業を実施するにあたり、MBAは必須ではありませんし、大きく役に立つかといわれるとそうでもありません。ただ、情報や危機に関する感度は高くなります。他方で、MBA信者(≒理論信者)になると、実証実験をおろそかにする傾向に走りますので、こうなってくるとむしろMBAは成功のマイナス要因になりかねません。

結局はバランスが必要になってきます。実証実験は実務でしか身に付きませんが、理論はその気になれば本で学べます。

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