見出し画像

新規事業では「やりたいこと」が重要?

しばしば新規事業担当者に必要なのは「やりたいこと」をやること。と言われる場合があります。それはそれで正しいのですが、「やりたいこと」を軸に新規事業を考えると非常に危険です。

その理由は3つあります。

①顧客視点ではなく自分視点になっている
お客さんの立場からすれば、その商品やサービスを選ぶのはなぜでしょうか?

おそらく自分の願いをかなえてくれるとか、自分が抱えている問題を解決してくれる。といった理由からでしょう。(日用品や食品であれば、あまりに当たり前になっているため、問題解決してくれる。という意識はないでしょうが、衛生問題や空腹問題を解決してくれているはずです。)

つまり、サービスや商品を提供する企業が、それをやりたかったかどうかははっきりって、どうでもよいことなのです。

もちろん、自分のやりたいことと、顧客のニーズが、完全に一致していれば、それほど素晴らしいことはありません。

起業家の原体験エピソードはまさに、自分のやりたいことと顧客ニーズが一致している例ですが、現実問題として、そうそう一致するものではないのです。

新規事業担当者になって初めに感じることは、まず「あらゆるサービスや商品は出尽くしている。」ということでしょう。

そうなのです。普通に自分が「やりたい」と思ったことを調べれば、すでに十分なソリューションを提供している類似のサービスや製品を売っている企業が多く存在しますし、無ければ無いで、誰にも求められていない製品やサービスである可能性が高いのです。

個人的に細々事業をやるのであれば問題ありませんが、一企業の新規事業となると話は変わります。

したがって、単純に自分のやりたいことを追求するだけでは通常は新規事業としては成立しません。

②「やりたいこと」を会社でやらせてくれるとは限らない
通常の仕事でも同じですが「やりたいこと」にあまりこだわりすぎると危険です。それは、やりたいことを会社が快く受け入れてくれるとは限らないからです。

例えば、自分はスマホゲームが大好きでゲーム事業をやりたい。とします。ところが、自社は不動産会社だったとしたら、まず受け入れてもらえないでしょう。これは極端な例ですが、程度の差はあれ、通常自分がやりたいことが簡単には会社に受け入れてもらえません。

この場合、あまりにも自分のやりたいことにこだわると、できないと分かった瞬間にやる気を失います。

では、どうすればよいか。それは、自分がやりたいことを抽象化することです。ゲーム事業をやりたいのはなぜか?それは、もしかすると「余暇の時間を一人で楽しみたい。」からかもしれません。

このように、やりたいことを抽象化すると、自分の価値観と会社の方向性が合致することがあります。こういうところを見つけるのが良いです。

ただし、自分の価値観が「とにかく何事もない安定した生活をしたい。」ということでしたら新規事業には向いていません。価値観とズレた仕事は、苦痛以外の何物でもないので他の道を探すほうが無難です。

③そもそもやりたいことがない
正直、「そもそもやりたいことがない。」という人は多いと思います。そんなんことでは新規事業担当は務まらない、と言われるかもしれませんが、そんなことはありません。

なぜ、一般的に新規事業には信念が必要だといわれるのでしょうか。これは、何度も挑戦する「しつこさ」が必要となるからです。

例えば、いちご栽培事業をやりたい、と思ったとしましょう。しかし、社内で、「いちごなんて競合が多すぎて、商売にならないだろう!」と言われるとします。この時、じゃ、「いちごはやーめた。」ではなく、利益が出るようにするためにはどうすればよいのか?とさらに考える必要が出てきます。このときに必要なのが「しつこさ」です。

「しつこさ」を獲得するのに信念は必要ないです。信念といえば、何か崇高なものに感じられますが、「しつこさ」を獲得するには、個人的な「成長願望」でもよいでしょう。

例えば、いちご事業をやることによって、「自分は市場価値の高い人間になりたい。」と思っていたとしましょう。この自分の願望を実現するためには、何が何でも「いちご事業をやり遂げる。」ということになるかもしれません。そのときは「しつこさ」は自然と湧き出てくる可能性が高いです。

では、「出世したい。」という願望でしたらどうでしょうか。新規事業をやり遂げることで確実に出世できるのであれば、「しつこさ」につながるでしょう。大いにこういう欲望を活用すればよいのです。

要するに、新規事業を成功させるのに必要なのは「しつこさ」なのですから、「しつこさ」を獲得するための方法は何でも構いません。

極端に言えば、何もやりたいことがなくても、しつこさを維持できるのであれば問題ないということです。こういう場合は、しつこさを継続できるようにルーティン化できる仕組みづくりをしてしまうのがよいでしょう。

以上のように、新規事業であまりに「やりたいこと」にこだわるのは、プラスどころかマイナスに働く可能性が高くなってきます。本質を見極め、自分の価値観にあった方法をとるのがよいでしょう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?