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社内評論家が出世する企業で新規事業を行うのは非常に難しい。

新規事業を進める上で、避けられない壁があります。それは「社内からの批判」です。そもそも、その会社にとっての新規事業は既存事業よりも圧倒的に情報が足りませんし経験値も低いため突っ込みどころは多い。

その中で、非常に問題となってくるのが社内評論家です。社内評論家は、有名大学を積極的に採用している大企業に多いように思います。業種でいうと重厚長大系。ある意味、有名大学卒業者と安定操業を第一とする重厚長大系の企業は相性が良いのです。

なぜなら、有名大学卒業者は答えがある問題に対して、非常に訓練されています。適切な正解がありそうなものに対して粘り強く取り組む姿勢はトップクラスでしょう。

安定操業を妨害するような問題が生じたとき、適切に原因を究明し、解答を出す。というプロセスは、日本製品・サービスの高い水準に大きく貢献したものと思います。この循環がうまく回っている間はよいのですが、そうではなくなる時が訪れることがあります。

それが社内評論家の出現です。大企業になると母体が大きいためコミュニケーションが一筋縄ではいかなくなります。その結果、調整役の部署が誕生するわけですが、調整役が社内評論家となってしまうと厄介です。

例えば、研究開発の成果を現場で実際に実施するために、データが足りない場合が発生するとしましょう。こういうケースは非常に多いのですが、納期も決まっているため、すべてデータ取りするわけにはいきません。本物の調整役であれば、このような不完全な状態でいかに進めていくか、が力の見せ所です。

しかし、表現は悪いですが、腐りかけた調整組織では「データがないからできるわけないだろ!」など平気で言うのです。もしくは、理には適っているが現実的ではない案を出してくる。(組織に対して何のバリューも出していないし、出そうともしていないので、存在価値はゼロどころかマイナスであるのですが、本人は気づいていないのです。)

なぜこのようなことが生じるかというと、当事者意識が欠如しているからです。もちろん本当に致命的な問題がある場合に強引に進めることは無謀ですしやるべきではありません。しかし、企業の活動において完全な状況で前に進められることは既存事業でも非常に困難です。ましてや新規事業では、不可能でしょう。

当事者意識をもった調整役が出世するのは問題ありませんが、単なる社内評論家と化した調整役が出世する組織では、新規事業を作り上げることはほとんど不可能に近くなってしまいます。(要するに、社内文化として、「何もせず、キャリアに傷がつかない人が出世する」という暗黙の了解が成立している可能性が高いのです。)

おそらく、新規事業案を通すところまではいけるでしょうが、案が通るころにはとがった部分が完全にそぎ落とされ、丸くなりすぎた誰にも刺さらないけど、なんとなくすごそうな案だけが残ってしまいます。

しかし、このような環境で、新規事業を担当されている方もいるかと思いますが、いち新規事業担当者がなんとかできるレベルではありません。なんとか上司を説得して、「非常に著名な新規事業開発コンサルタント(もしくはコンサルティング会社)」に伴奏してもらうようにしましょう。

伴奏期間もできる限り長め(年単位)で依頼し、新規事業の報告会では同席してもらえるのが良いです。少しずつ、社内マインドセットを変えてもらうように繰り返し議論し続ける必要があります。

もちろん、新規事業担当者としては、コンサルに完全依存するわけにはいきません。したがって、とにかく、コンサルの思考パターンや進め方を言語化し、社内共通認識を明文化していく必要があります。

解答を知りたがる高学歴系の社内評論家は、権威ある人たちの解答はわりとすんなり受け入れる可能性が高いです。ただ、それでも「自分たちのほうが(コンサルよりも)上」と考える人も少なからず存在します。かなり実力のあるコンサルであれば、「相手に言わせる(この場合は評論家に答えを言わせる)」ということもできますので、相談してみるとよいかと思います。だめなら、担当者を変えてもらいましょう。

このように、悪い意味での社内評論家が安全なポジションから避難してくる組織で新規事業を作り上げることは、並大抵なことではありません。自分一人で大組織の環境を変えるのは至難の業ですから、外部の力を借りていく必要があります。いっそのこと転職。という方法もありますが、行った先が同じ類の組織であれば目も当てられません。まずは、社内でなんとかできる方法を考えるのが、合理的かと思います。





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