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「志」が無い意思決定者のもとでは新規事業は育たない。

新規事業を担当していると、困惑する場面に出くわすことが多々あります。その中でもよくある事例の一つが「意思決定者(=経営層)の判断軸が大いにブレ始める。」というものです。

よくある事例として例えば「リスクは許容するし、時間がかかってもよいから、革新的(イノベーティブ)なことをやってくれ。」といった意思決定者の当初の方針があったとします。

かなり抽象的な言葉の羅列になっていますが、意思決定者は実務担当ではないのでこのレベル感で指示されることは多いでしょう。おそらく、リスクとは何か?許容とは具体的にどういうことを言うのか?革新的とは何か?と質問したところで返ってきませんし、質問の仕方を気を付けないと反発しているようにとられますので注意が必要です。

運よく質問の内容に対して返答が返ってきたとしても、時を経れば、判断軸がぶれ始めるのは日常茶飯事です。

一般的に、新規事業に対してはイノベーティブなことが求められがちです。ここでいう「イノベーティブ」とは、まだ世の中に存在せず、非常に新規性が高い事業のことを指します。

ところが、イノベーティブなものというのは、世の中にまだ知られていないものになりますので、売れるかどうか?という判断材料が既存の製品やサービスにくらべ非常に少なくなってきます。つまり、売れないリスクは高まります。

さらに、技術が必要な場合、新しく技術開発する必要がでてきたり、既存の技術の組み合わせであったとしても、組み合わせ検証が必要になりますので研究開発投資が必要となってきます。もちろん時間もかなり必要になってきます。

このような特性があるにもかかわらず、いざ新規事業開発が始まると「まだ、できないのか?」「そんなに費用がかかるのか?」「リスクが見えない?もっと調べてくれ」という要望が山のように出てきます。そして、はやくしろ、という割には意思決定は先延ばしにされ、情報が足りないといわれるわけです。この状況は新規事業開発担当者であれば、ほぼ100%経験していることだと思います。

なぜ、このようなことが起こるかというと、(意思決定者を批判するわけではないのですが、)それは「志」が無いからです。そして問題は株主にもあるはずです。売上や利益を最優先にし、「人間として何が正しいか?」を問うことなく事業計画を作ろうとすると、このようなことになります。

ただ、意思決定者にとって、従業員を食べさせていかなくてはならない、株主の要求にこたえていかなくてはならない。と考えると、そんなきれいごとを言ってられない。というのは事実であり、非常に大きな重圧でもあります。

しかし、この考え方を新規事業に当てはめてしまうと、結局、新規事業は育たなくなってしまいます。なぜなら、新規事業は不確定要素が非常に多いため「新規」事業という名前がついているのであって、不確定要素が少ないのであれば「既存」事業に分類されるからです。

現実的にイノベーティブな新規事業を行うには、意思決定者が株主が求める短期利益とは別に、志をもって、「我々の新規事業は人間として正しいのか?世の中をよくするための方法なのか?」といった判断によって決める必要が出てきます。もちろん、意思決定者が志をもっていて、新規事業担当者が志を持っていないことはあり得ません。担当者の志は絶対条件です。

このように意思決定者と新規事業担当者との間で、認識のずれが時間の経過とともに出てきます。それを防ぐためにも、要所要所で、認識のすり合わせが必要になってくるでしょう。




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