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「すぐやる」の判断を可視化する。

以前、新規事業にはとにかく行動力が必要なのか?ということについて考察した記事を公開しました(参照)。この記事では、行動の判断基準として、膨大な知識がある。点に触れましたが、本記事では、社内的にどういう基準で「すぐやる」べきなのか、まず、「調査する」べきなのか、を明らかにしたいと思います。

結論としては明確です。リスクと費用の2軸マトリックスを作成し、現在考えている新規事業がどこに該当するか、を考えることになります。図は、ざっくり以下の通りとなります。

「すぐやる」マトリックス(筆者作成)

これらの行動基準は、もちろん会社のカルチャーや意思決定者の性格によって大きく変わります。例えば、ソフトバンクのような挑戦的に見える会社(内部の方々の評価ではそうでもないのかもしれませんが)では「やってみなはれ」の領域が大きくなる可能性があります。他方で、伝統的重厚長大企業では「やめときなはれ」の範囲がそれこそほとんどの領域を占めるかもしれません。

また、新規事業の段階によっても異なります。例えば、大企業であれば、初期段階の潜在顧客インタビュー(有料ツールを使う)なら「やってみなはれ」で済むでしょう。一方で、個人起業家であれば、インタビューについても負担が大きく、数を稼げませんので、費用削減法について考える必要があります。例えば、友人に聞くとか、友人に紹介してもらうとか、無料のコミュニティに参加する などが「費用削減法についてしっかり考える」に該当します。

さらにこのマトリックスは自社が有する設備資源や人的資源、技術的蓄積も大きく影響します。例えば、食品メーカーの場合、新規の食品有効成分を見つけた場合、上市するにはリスクは大きいかもしれませんが、すでに生産設備を持っている場合は費用は「リスク低減法についてしっかり調査」の領域に入ります。一方で、出版社が、食品業界に入ろうとすると、図でいう右上に入ってくるでしょう。

やってみなはれ(「=すぐにやる」)で済まされない業界の例としては新薬メーカーが該当します。新薬候補物質ができたからと言って、「やってみなはれ」ということでいきなりヒト臨床はできません。すぐやれ!と発破をかければ、非臨床実験で、データを捏造することすら起こりえます。他方で、ソフトウェア開発であれば比較的「やってみなはれ」に該当するでしょう。

このように、「すぐやる」判断は、さまざまな要因が影響しますし、新規事業のどの段階の話かによっても変わります。著名な起業家や新規事業家の方たちはこのような判断が頭の中で瞬時にできており、成功確率を高めるためには左下の「やってみなはれ」領域で数を打つことが効率が良いと経験的に知っているのです。

さて、このマトリックスをつかって、今の事業を評価するとき、リスクの大小をどう評価するのか?とかどこからが費用が大で、どこからが費用小になるのか?という素朴な疑問がわいてくるでしょう。

リスク軸については、その会社や意思決定者がリスクとして感じる要素をあらかじめ洗い出しておく必要があります。例えば、事故発生リスク、損害賠償リスク、情報漏洩リスク、レピュテーションリスクなどがあげられますし、その発生頻度と被害の大きさの2点を考えて(掛け算で)評価することになるでしょう。会社や意思決定者が重要視するリスクを取り上げて評価することになります。

評価は、なるべく統計データをとって客観的に数値化するのが望ましいですが、主観的判断も避けられません。残念ながら、世の中、すべてが数値化できるわけではないのです。

費用に関しても同じです。大会社であっても、費用にうるさすぎる会社もありますし、逆もまた然りです。どこまでが費用が高すぎるのか、そうではないのかは、自社内の関係者間で認識統一が必要です。

日本の中間管理職や幹部は自分で決めることができない人も多いといわれていますので、判断の物差しとして自社と同規模の他社の事例を出してあげると良いでしょう。何かのツールを利用する場合はそのツールの提供会社が、いろいろ教えてくれるので、聞いてみればよいです。設備やシステム開発についても同様です。

できる風の意思決定者であれば費用対効果のシミュレーションを強く求めてくるかもしれません。これは新規事業の超初期段階では、あまり意味がないのですが、他社の営業さんと相談するか、自分で財務シミュレーションをやってみることになります。

他社のやり手の営業さんであれば、これぐらいの効果があります!と提案してくるでしょう。とはいえ、結局は、意思決定者から、それホントウ?と言われるので、自分で試算することにはなります。

以上のように、単純な2次元マトリックスですが、しっかり評価しようと思うのそれなりに骨の折れる作業になります。ただし、一度、型を作ってしまえば、時間はそれほどかかりませんし、説明するときにも役立ちます。

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