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新規事業での目的がいつの間にか変わる

新規事業を担当していると非常に困ることが連発します。その一つが、意思決定者(通常役員以上)の考え方がコロリと変わる。というものです。

例えば、当初は
1)社会課題解決を強く意識するので高い利益率は求めない。
2)既存事業開発とは異なるため、失敗は許容する
3)既存事業よりも事業化の時間がかかることは認識している。
4)新規事業と既存事業の人事評価制度は別にする。
など、約束したとします。

ところが、いつの間にか、「すぐに稼げる事業は無いのか?」とか、「利益率は既存事業よりも大幅に高いものでないと、新規事業に参入する意味がないだろう(正味現在価値などファイナンス視点から考えれば正論中の正論)。」とか、話がずれてきます。言われる内容自体はもっともなことですので反論の余地はありません。

もしかすると感の良い人なら、「話が具体的でないし、高い利益率とは、営業利益で何パーセントのことを指すのか?失敗の定義は?事業化にかかる期間はどれぐらいだと見積もっているのか?」など疑問が出てくることかと思います。初めから、具体的な内容を設定しておくべきではないかと。

しかし、このような1)~4)の内容について、「具体的にはどのような基準でしょうか?」と質問しても「今の時点では答えようがない。」と言われることもしばしばあるでしょう。新規事業創出になれている会社であれば、具体的な設定もできるかと思いますが、そうでない会社のほうが多いでしょうし、そもそも、このような質問をし辛いという方も多いかと思います。

これを解決するためには、報告のたびに、目的を視覚化(スライドに明記する)し繰り返し伝えていく。という方法が良いでしょう。伝え方も工夫が必要です。あからさまに意思決定者に対して「あなたの意見がすぐ変わるから、こうやって明記した。」という感じが出ないように、あくまで、私たちはこう理解しているのですが、「齟齬はないでしょうか?もしありましたら、すぐに修正したいと思います。」という雰囲気を醸し出すほうがよいです。

例えば、スライドのタイトルとして
「本チームでの新規事業創出の目的(案)」
「新規事業創出の方向性(案)」
「新規事業の方向性と時間軸」
などが考えられるかと思います。

これらに対して以下のような内容を明記していく方法が考えられます。
方向性:社会課題解決志向(目標営業利益率は未定)
失敗許容度:失敗は許容(失敗の基準は未定。)
失敗の評価:社内に失敗の原因を蓄積

おそらく、このような項目を自分自身で記入していくと、違和感を感じるところがあると思います。例えば、私は「失敗許容度」と「失敗の評価」に違和感を感じました。そもそも、失敗はあり得ない。失敗ではなく、成功し続けるまで様々な変更を行うだけであり、その変更をいちいち失敗といっていてはモチベーションが下がるだけだ。と。

このように、ざっくり感覚で決めていた内容も、少し言語化するだけで、事前に解像度が上がり、意思決定者との感覚のずれが修正できるかと思います。さらに付け加えると、意思決定者自身が、当初言っていたことをすっかり忘れている。ということがよく起こります。それに対して担当者は目くじらを立てがちになりますが、意思決定者も新規事業だけを見ているわけではく経営の広範な領域を見ているので、忘れても仕方ないと思うことが大切です。おそらく、ご自身も、他人の言ったことをすべて覚えているわけではないでしょう。そういうものだと割り切るしかないのです。

さらに意思決定者がお金を出してくれない。という厳しい状況におちいることもしばしばあるかと思います。売上が数千億円ある企業でも、たった100万円すら渋るのです。

よくあるのが「100万の利益を稼ぐがどれほど大変か考えてみろ。自分のカネだったら払うのか?自分のカネをつかってその事業に投資できるのか、もっと当事者意識を持て。」というものです。

もはや腹をくくっている新規事業担当者であれば、「おっしゃる通り、自分の懐からすぐに出せるものではございません。ただ、絶対額ではなく、比率としてとらえると出したいと思います。当社は現金・現金同等物が100億ありますが、100万円となりますと、0.01%です。私の貯金はおよそ300万円ですので、0.01%は300円です。これぐらいなら、まず買ってみたいと思います。」ということもできます。

しかし、これは論破することになってしまいますし、比率ベースではなく絶対額ベースでしか考えられない人には受け入れられないので注意が必要です。ある程度、関係が良好な役員とでしたら、問題はないでしょう。

とはいえ、現在はかなり無料ツールが充実してきておりますので、それをどんどん使ってみる。というのも手です。また、なぜか出張旅費はザルだったりする会社もありますので、うまく活用しましょう。調査であれば国会図書館を利用すれば高額な有料レポートが無料で見れることも多いです。

会社のことを考えて経費を節約したいと思うのは私も同じなのですが、残念ながらその行為は「消極的」とみなされることも多いです。会社員の特権です。給料が増えなければ、こういう費用を使える限り使いましょう。

以上、新規事業の目的が変わる問題についての対処法を記載しました。





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