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Chat-GPT時代の新規事業開発人材の価値

Chat-GPTの出現によりホワイトカラーの仕事は、大きく奪われる(参考記事)。多方面から予想されていることであり、アメリカ企業では大量解雇のニュースも実際に出ています(参考記事)。

一方で日本はアメリカに比べ解雇は難しいですから例えAI活用によって企業の生産性が上がったとしても解雇されることはまずないと思って間違いないでしょう。以前から、経理・財務などの会計人材は不要になる。とか言われ続けていました。ところが非常に面白いことに会計事務員の求人数はほとんど横ばい、もしくは微増というデータがあります。正確な解釈には、この新規求人数のより細かな分類が必要となりますが、専門家などの予想はほぼあてにならないと考えておくのが精神衛生上、よいと思います。

出所:Renova経理/厚生労働省

テクノロジーとしては実現できていたとしても、社会実装となると非常にハードルが高くなります。これには①コストの問題 ②許容性の問題(人々が受け入れるかどうか) が大きく影響し、テクノロジーの導入を阻害するのです。

私たちは最新の研究や商品のデモ動画を手軽に見れる環境にいますので、素晴らしい技術動画を見ると「もう、こんなところまで完成されているのか。実現は2~3年以内に起こりそうだ。」と思ってしまうのですが、そんなことはありません。通常、そのような素晴らしいテクノロジーは、実は結構な問題を抱えています。裏を返すと、既存のサービスは長年かけて相当に合理化されていますので、新しいテクノロジーが既存手段のコストメリットを上回るのは並大抵なことではないのです。

これと同じように、テクノロジーが人も簡単に代替できるかというとそうではありません。実はテクノロジーを活用するよりも人がやったほうが安い。というケースは思いのほか多いのです。例えば工場の品質管理であっても、工業部品と、食品の品質管理とでは難易度に雲泥の差があったりします。どちらも同じ品質管理ですが、工業部品の管理はすでに自動化されていますし、自動化したほうが安価に行えるということです。いまだに品質管理が自動化できていない業界があるのは、業界がダメなのではなく、それなりの理由があるためです(規制上難しいケースもあるようですが)。

では、新規事業人材はどうでしょうか。簡単に置き換えられるのでしょうか。新規事業では戦略コンサルが手掛けるような分析工程が発生します。Chat-GPTの出現でコンサルは不要になる。という人もいますが、これは間違いでしょう。新規事業人材についても同じです。

データを単に集めて、まとめて資料に落としている。と思われがちな新規事業の市場調査工程ですが、データもネット検索では取れてこないものを扱います。具体的には顧客のインタビューや、顧客の生の行動や、感情の起伏解析などです。もちろんこれらを解析するためにAIを使うことはありますが、AIに代替されているわけではなく、補助として使っているにすぎません。

AIツールを駆使できる担当者とそうでない担当者とでは、解析の質に違いが出ることは間違いありません。つまり恐れるべきものは「AI vs 人間」ではなく「AIを使う人間 vs 使わない人間」ということになります。

ちなみにデータドリブンな手法によって解決されるのでは?という問いについては、半分Yes で半分Noです。データは確かに示唆は与えてくれますが、その示唆を現場に結び付けるのは人間の力量にかかっています。

Chat-GPTで使用する、プロンプトがいくら優れていたとしても、本当に知りたい情報を導きだしてくれるわけではありませんし、結構面白い情報を導きだすには、質問している人間の背景知識が重要になります。漠然とした質問に対しては漠然とした答えしか返ってこないのです。要するに人間側のスキルが重要になってくるわけです。

ついでに、新規事業開発人材が将来的に価値が増すか?という問いに対しては、私は微妙なところだと考えています。新規事業のパフォーマンス(ここでは売り上げとする)は既存事業に比べてまず間違いなく劣ります。これは、最近IPOを果たした設立年の若い企業の売り上げを見ればわかるでしょう(IPOリスト)。

基本的に会社は数値判断することが多いかと思います。数値判断されると新規事業は圧倒的に不利です。新規事業担当が確実に価値を出すには、既存事業に対してもよい影響を与えている。というシナリオが必要でしょう。

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