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土竜のひとりごと

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エッセイです。日々考えること、共有したい笑い話、生徒へのメッセージなどを書き綴っています。
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2021年9月の記事一覧

第145話:一語の違い

第145話:一語の違い

愚話である。

だいぶ前のこと、新聞を見ていたら「テストの想い出」というタイトルでいくつかの投書が載せられていて珍答の実話がおもしろかった。

例えば、「ミジンコの脈拍はどう計るか」という問題が出たそうなのだが、その授業をちょうど休んでいてわからず、「ミジンコの胸に手を当てて数える」と書いたそうである。なかなかユーモアのある解答だが、先生が堅物だったのだろう。✖を食らって点はもらえなかったらしい。

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第99話:無用者

第99話:無用者

海岸によく出かける。海はいい。海を見ていると何となくほのぼのとしてくる。だから、暇があるときは沼津の千本浜に出かける。海を見たいという衝動が人間に湧くのは何故だろうなどと考えながら、海岸や防潮堤の上でゴロゴロ過ごす。

この間は鳩がやってきて、僕が食べているおにぎりを一緒に食べた。5羽も6羽もやってきて、人懐こく膝に乗ってきたりする。トンビが飛び、富士山がきれいである。

ついこの間も千本浜に転が

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第185話:猫の恩返し

第185話:猫の恩返し

思いもしない出来事が人生には起こる。

例えば、いつだったか映画館でジブリの映画を家族で見ていたら、突然火災報知機が鳴って観客全員が外に出されたことがあった。結局、誤作動で全員が劇場に戻り中断された少し前のフィルムから再開された。ありそうでなことではあるが、実際にはなかなか経験することではない。

また例えば、かなり前のことだが携帯にかなり乱暴な口調で警察から電話がかかって来た。

「あんたのケー

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第167話:芥川と茂吉の恋文

第167話:芥川と茂吉の恋文

メールやラインが全盛の時代にあって、恋文など書く人はいなくなってしまったのではないかと思われるこのごろである。そもそも恋文などという言い方は全く古いのであって、せめてラブレターと言うべきかもしれないが、しかし、ラブレターという言い方にもそぐわない、まさに恋文というものがあって、今回はそれを紹介してみたい。

芥川龍之介が後に妻になる塚本文に送った有名な手紙である。
(長い手紙なのでここでは部分的に

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第114話:青天の霹靂

第114話:青天の霹靂

青天の霹靂という言葉がある。

それが青天の霹靂であったわけでもないのだが、ちょうど去年の今頃、オオスズメバチに刺された。

今勤めている学校のテニスコートは山の上、かつてあった城の二の丸址にある。自然に囲まれた素晴らしい環境と言えば言えなくもないが、実際は自然との闘いで、草はバンバン生えて来るし、落ち葉もガンガン落ちて来る。お堀跡から発生するのだろう、蚊に刺されまくり、ここ数年は、タヌキやハクビ

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日本一周一筆書きの旅②

日本一周一筆書きの旅②

前回の続きです。よろしければこちらをお読みきださい。

皆さんは財布が落ちていたら、それを届けるだろうか?

僕は激しくそれを問いかけてみたい。当然?でも、もし財布の中に17万円入っていたら?以前書いたことがあるが、僕は17万円が入った財布を拾い、それを正直に届けたのであって、そんな素晴らしい僕にとってこの「出来事」は悲しすぎるものであった。

ズタズタになった財布の記憶を思い出しながら、でもそん

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第162話:日本一周一筆書きの旅

第162話:日本一周一筆書きの旅

毎年夏には5日ほどの休みを取ってツーリングに出かけていた。

しばらく東北地方を気ままに走ることが多かったのだが、数年前、糸魚川を上って日本海を西し、能登半島を回って金沢から木曽へ下りてきた。
意図してはいなかったのだが、今まで走ったルートが日本海側を青森から金沢までつながったので、ならば日本列島の一筆書きに挑戦しようとふと思い立った。

そこで翌年は京都から丹後に上がり、山陰を走って下関で折り返

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17万円入った財布を拾った②

17万円入った財布を拾った②

前回の続きです。よろしければ、こちらをご覧ください。

帰り道、交番に寄る。財布を拾った経緯を説明するが、出てきたのは初老のなんとなくヨボヨボした警官で、何だか面倒臭さそうな応対である。こんなに悩んでやってきたのに褒めてもくれない。

一緒に中身を確認してくれと言って、財布の中身を全部出して並べていく。金種ごとにいくらあるか、カードは何が何枚、免許証、レシート・・メモを取っていくが、エラク手際が悪

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第152話:17万円入った財布を拾った

第152話:17万円入った財布を拾った

上をむいて歩こうという坂本九の歌があったが、人間は基本的に上を向いては歩けない。上を向いて歩けば、きっと側溝にでも嵌って大怪我をするに違いない。同じように、右を向いても、左を向いても、後ろを向いても人間は歩けないわけで、必然的に人間が歩くときの視線は「前」か「下」になる。

前を向いて歩くのと下を向いて歩くでは、ずいぶん雰囲気が違っていて、前者は優秀な人間がイメージされるのに対し、後者は落ちこぼれ

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