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杖はないけどペンはある
私は魔法少女の夢を見ることはできたが、手にできなかった子どもだ。
カードと杖を手にすることができず、タロットにときめきを覚えた。
魔法の力がこもった宝石の代わりは祖父母の家の砂利石の一等透明なものやとっておきのキラキラの折り紙を巻いた石だった。
あの子の家には日曜朝の魔法少女達のステッキがあった。私も同じものを持っていたが、それはお菓子売り場のおまけのもので、あの子のよりも小さく、シールの巻かれ
虚夢十行 〜水筒の夢〜
子どもが泣いている。月が見たいと土砂降りの甲板を指差すも、親らしき人は子を駆け出さすまいとしっかり手を握り拮抗状態だ。
「風邪をひいてしまうからやめなさい」
けたたましく駄々をこねる子を嗜めつつ、引っ張っていく姿とすれ違った。子どもの赤くなった目尻にチクリと胸が痛み出す。
「悪いことをしてしまったな」
水筒を開け底を覗きこむ。白々輝く満月が仄暗い筒の中で雨宿りをしていたとは思うまい。
まちアソート②健気なモノたちの町(町は廻る)
「かみさま」はうんざりしていた。塔の外を飛び回る空飛ぶバイクの列はもちろんのことだけれど、地上に鳴り響く銃声の喧噪がいっそうその人の気を滅入らせた。知らない間に塔よりも上背のある超高層ビルがつくしのように立ち並んでいて塔の日照権は侵害され続けている。
いつもみたいに窓の縁に腰掛けることはせず、塔の中に三角座りをしておそるおそる下の様子をうかがっていて、そんな日がもう三日は続いている。死ぬ可