ながしよみ④

    柵

カレンダーの切れ端を
握り締めてベランダへ
今日にすがっても
星の溶ける速度は変わらない
生き物の呼吸よりうるさい室外機の回転が
緩やかに朽ちゆく心をなだめていく

閉ざされた向かいの窓で
わたしの影法師を見た
別世界の顔をしてこちらを眺めてくるから
縮こまる気がして
花殻が散ったコンクリートへと目を伏せる

お前のようにはなれないさ
お前のようにはならないさ

鼻を抜けるミルクチョコの匂い
誰も見てないさ見てくれないさ
固めて丸めた今日を投げつける
暗がりに浮かぶ白
放物線すら描けず真っ逆さま
口から抜けた乾いた笑い声を
プロペラは無慈悲に粉砕する
汗ばんだ掌には砂埃
欄干にかかる十本の格子は
私を昨日へ通さない


          (執筆者 すいか)