社内報記事の書き方 社員の共感を引き出し、読まれる社内報を作るには?
社内報を作っているはずが、まるでどこかの報告書や官報を思わせるようなものになっていませんか?
社内報は社員が知っておくべき情報や、重要な伝達事項を社内の一人ひとりに届けるためのメディアです。だからといって、事実だけを粛々と掲載すればよいというものではありません。
事実をただ事実のまま伝えるだけではなかなか社員の関心を集められず、読まれないまま捨てられてしまうというケースも少なくないでしょう。
社内の誰もが思わず手に取り、読みたくなる社内報を作成するためには誌面構成や書き方を工夫し、読む人の興味・関心を惹き寄せる必要があります。
今回は魅力的な社内報記事の書き方を解説します。社内報記事の書き方に困っている方は、この記事を参考にしてください。
読まれない社内報の特徴
情報は文字、画像、映像、音声、データなどさまざまな媒体形状に変化し、私たちの周りに遍在しています。そんな状況下で社内報を読んでもらうためには、業務メールやSNS、webサイト、You tubeにネット配信番組などといったメディアを相手に「読んでもらう手間と時間」の競争に勝ち抜かなければなりません。この競争に勝てない、読まれない社内報の特徴には以下のようなものがあります。
1.文章が硬く、会社からの発信事項しか載っていない
ページを開くと冒頭数ページにわたって、硬い文章で書かれた社長や経営陣からのメッセージが続く社内報は読まれない社内報の典型例でしょう。
ビジュアル要素も乏しく、会社からのニュースや営業の数字が列記された報告、総務部・人事部からのお知らせといった面白味の薄いものばかりで、上意下達の内容に終始しています。従業員にとっては魅力的な社内報といえないでしょう。
2.変化がない
定型のフォーマットに従い、毎回記事を当てはめているだけで特集企画もなく、変化に乏しい社内報も読まれない社内報といえます。
多少読み物としての工夫がなされていても、何年も企画内容に変化がなく、ただ登場する部署や人物が違うだけでは読者の期待感に応えられず、ほかのメディアとの読者獲得合戦に勝てません。
3.企画意図がない
面白いメディアというのは、企画が勝負です。新聞や雑誌などの印刷媒体でもwebや動画などデジタル媒体でもそれは変わりません。明確な企画意図がない社内報では、目の肥えた読者の感性に響かないでしょう。
社内報の担当者が専任でない場合、兼務している他の業務に忙殺され、じっくり企画を練る余裕がない、という場合も少なくありません。上職の指示や他部署からの依頼を受けてそのまま掲載するだけの社内報は、ページ数のボリュームはあっても毎回内容がバラバラで、トレンドや社内の活動ともリンクしない内容の薄いものになりがちです。
社内報の意味や目的を考えて書く
そもそも社内報の目的とは会社と社員をつなぎ、インターナルコミュニケーションの中心的役割を担うことです。
そのためすべての社員が知っておくべき基本的な情報や、会社としての戦略、ビジョン、展望、経営メッセージなど、業務に役立つ内容を掲載しなければなりません。
読者が会社の目指す姿について理解・共感し、共通の目標に向かって社員同士が連携し、新しい価値を生み出す土壌を作る機能が期待されています。
そして、それを実現するためには何よりもまず社員に読んでもらわなければなりません。「読まない社員が悪い」というような態度では、社員の心理には響きません。社内報を作成する際は読む人の立場に立って、一対一で対話をするつもりで内容を考えてみてください。
では、伝えるべき情報を逃さず、かつ読者の心に届かせるためには、具体的に何を意識すればよいでしょうか? 社内報の記事に大切な視点は「この記事を通して会社が社員に望むことは何か(会社や経営陣が伝えたいこと)」「この記事が伝えるべき情報は何か(事実)」「この記事は読者にとって何のメリットがあるか(読者が読みたいこと)」の3つです。記事を企画・作成する際には、この3つが重なる点を意識して内容を集約していくことが重要です。
社内報の概要についてより詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください。
社内報で何を伝えるのか
それでは「会社や経営陣が伝えたいこと」「事実」「読者が読みたいこと」の3つの視点について「新規プロジェクトを成功させた社員へのインタビュー記事」を想定事例として解説しましょう。
経営者が伝えたいこと(記事を作る目的)
成功事例には、ビジネスのヒントが多く含まれています。インタビュー記事を通して今回は何を伝えたいのか、それによってどんな影響や効果が社内に生まれることを期待するのか、まずその狙いを明確化し、インタビューではできる限りその狙いに沿った発言を引き出していきます。
狙いがフォーカスされずにただ漫然と質問・回答を繰り返すインタビュー記事は、意義がぼやけて核心が定まらず、面白みに欠けるものになってしまうでしょう。
事実+α(発信者が伝えたいこと)
発言者(インタビューされた人)が言いたいこと、語る内容は「事実」です。
しかし、発言者は必ずしも伝え方や表現に長けているとは限りません。そこで社内報のクリエイターは「狙い」を理解したうえで事実をまとめるだけではなく、「+α」を追加する必要があります。
たとえば言葉の上では出なかった表現を、相手の話の背景を把握して補足・表面化させ、適切な言葉に変換することも大切です。
変換する際には、話者も読者も双方が理解しやすい構成を意識してみると良いでしょう。そのためには事前にインタビューの対象者とその状況をよく知っておき、あらかじめ聞くべきことを整理して、おおまかなストーリーを構成しておくことが大切です。
読者が読みたいこと(読者は何を知りたいのか)
読者の知りたいことを把握・予測して、記事構成に取り入れるようにしましょう。
たとえば成功事例を掲載する際にはうまくいった話ばかりでなく、そこに至るまでの失敗談や困難を乗り切った方法など、読者の参考になりそうな話題を読者視点で仮説を立てて記事構成を考えることが大切です。
その視点が加わることで、インタビューがさらに有意義なものになるでしょう。
社内報記事を書くうえで読者の関心を引き出すポイント
伝えたいことを読みたいことにつなげていくためにはテクニックを知っておかなくてはなりません。
ここからは伝達するための工夫や読んでもらうための工夫など、制作時に役立つテクニックを解説します。
インタビュー・情報収集
企画の意図を明確にし、大まかなストーリーを想定して、記事の構成に関する仮説を立てましょう。
また、必要なことを整理してインタビューで聞くべきことをあらかじめ用意しておきます。事前にインタビューシートを作成して事前に対象者に渡しておき、心の準備をしてもらうと良いでしょう。あわせて取材時や記事掲載時に使用する写真や資料などについて「こういう内容の、こういうもの」と具体的に依頼をします。
内容によっては、業界や社会の動向など背景となる要因を予め調べておくことも必要です。
文章作成
文章のテイスト、文体には多くのバリエーションがあります。
息抜きに読める軽い読み物と、今後数年間の企業の行く道を示す戦略解説とでは、文章のリズムも構成もまったく変わってくるはずです。テーマに合わせて、適切な表現を心がけてください。
もちろん日本語として意味の通じる誤りのない文章であることが最も重要です。また社内報は、文学作品ではないので読みやすく簡潔な表現が望ましいでしょう。
語り手が伝えたい内容を補強するための例として、ストーリーを語ることで相手により深く印象付けて理解を促す「ストーリーテリング」の手法を意識しましょう。
また、必ずしもインタビュー対象者が使った言葉に固執する必要はありません。わかりやすく言い換えたり、発言の順序を変えたりするのもテクニックのひとつです。
重要な部分を他の情報で補い、長く引き延ばすこともありますし、逆に記事に必要のない部分は思い切ってカットします。
ストーリーテリングについて詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください。
デザインやレイアウト
ページを開いてまず眼に入るのは、デザインやレイアウトです。
学術論文であれば、その性格上、内容の正確性が求められ、凝ったレイアウトは不要でしょう。一方で、社内報のようなコミュニケーションメディアは写真や図表と文字のバランス、フォントの形や大きさ、余白の取り方などのデザインとレイアウトを慎重に選定しなければなりません。余白がなかったり、小さな文字で埋め尽くされたりしている社内報は、それだけで読む気が起こらなくなるでしょう。
また、読んでほしい読者に合わせて、文章のテイスト調整が効果的な場合もあります。
若手やアルバイト向けなら明るくフレンドリーな雰囲気、マネジメント層向けなら情報量を充実させ、メリハリをきかせた整然としたレイアウトにするなど記事の意図・狙いをデザイナーと共有しておくと、よりスムーズに進みます。
メディアのスタイルは、時代と共に絶えず変化します。従来のフォーマットを引き継ぐだけでなく、印刷媒体・ネット媒体を問わずいつも最新のクリエイティブに接し、感性を磨くのも担当者の仕事であり、また楽しみです。
デザインやレイアウトについて知りたい方は下記の記事をご覧ください。
まとめ
この記事では、読まれる社内報を作るための要素を解説してきました。
社内報の記事が読まれない理由は、読者目線の意識が足りていないから
「伝えたいこと」「事実(+α)」「読者が読みたいこと」の3つの視点を意識して、目的や狙いを明確にする
文章構成(ロジック)、文体(レトリック)、視覚(ビジュアル)を最適化する
これらをいつも念頭に置いて、企画~取材~執筆を行ってみてください。社内報の競争相手は、社内のイントラに載っている通達やリリースなどではなく、世にあふれる放送や印刷媒体、webやSNSなどのメディアです。読者の関心を引き出し、キャッチするために材料をうまく「整理する」スキルを身に付けましょう。
とはいえ、社内報の制作業務は常に少数の担当者で回している会社が多いのも事実です。小規模事業者ではスタッフ1名、あるいは他の業務との兼任ということも少なくありません。そのようなときはひとりで悩まず、企画会社やライターなど、外部の専門家の手を借りるのも良いでしょう。
社内報はその企業ならではの価値に特化したメディアです。また、コミュニケーションを活性化しモチベーションに力を与える社内報は、会社を動かす原動力にもなります。この記事を参考にして、ぜひ読まれる社内報づくりを目指しましょう。