高木 圭介

1968年岐阜県生まれ、大学で地球科学を専攻、静岡県・神奈川県・石川県・熊本県・高知県…

高木 圭介

1968年岐阜県生まれ、大学で地球科学を専攻、静岡県・神奈川県・石川県・熊本県・高知県・滋賀県・京都府・宮城県にて学生・サラリーマン生活を送る、帰郷後の環境再生型農業(不耕起・多種カバークロップ農法)による農産物ローカル自給の活動を構想中。

最近の記事

【5-11】社会福祉理念を共有する連邦国家がパレスチナ紛争を解決する

 パレスチナ紛争は、ユダヤ人(ユダヤ教徒)がパレスチナの地に国家を樹立し入植地を拡大する際に、元々のパレスチナの住民を追い出し、彼らから土地や水など生活資本を一方的に奪っておきながら、何の補償もしていないことに原因があります。  パレスチナ人が自分たちの生きる権利を回復するため、自分たちの生きる糧を奪ったイスラエル国に補償を求めるのは当然のことです。それが無視されるどころか、いまだにヨルダン川西岸地区で行われている「入植」という名の略奪行為による被害者が後を絶たない中で、パレ

    • 【5-10】新型コロナ狂騒曲はショック・ドクトリン序曲

       新型コロナウイルスは果たして、大騒ぎするほどの病気だったのでしょうか。感染拡大の初期段階から「ひたすら毎日、データを見て、日本と世界各国の陽性者数・発症日ベースの感染者数・死亡者数をインフルエンザと比較して、日本人にとっては、コロナは恐れるに足らない」ことを見抜いていた漫画家の小林よしのり氏は、宮沢孝幸氏との共著「コロナ脳 日本人はデマに殺される」(2021年、小学館新書)の中で、緊急事態宣言下の2020年に政府・都道府県が外出や飲食店営業の自粛を要請したことにより、女性と

      • 【4-12】緑のベーシック・サービス特区で地域に活力を

         総務省統計局が定義する都市圏のうち、札幌、仙台、関東、静岡・浜松、中京、近畿、岡山、広島、北九州・福岡の各大都市圏には、2020年現在、8000万人を超える人々が住んでいます。日本全土の6分の1に過ぎない地域に全人口の3分の2が集まっていることになります。  大都市圏以外の地域の総人口は4000万人で、沖縄県以外は軒並み減少傾向にありますが、それでも100年前の1920年を少し上回っています。人口密度も130人程度とヨーロッパ諸国と同等の水準にあります。  人口が減少して人

        • 【4-11】所得の再配分と公的サービスが福利を向上させる

           一般にお金と呼ばれている貨幣は、借用証書であり、それを持っている人にとっては債権すなわち取り立ての権利書ということになります。物々交換が基本儀礼だった時代に、交換するものが手元になくて「後日、同等の価値あるものをお返しする約束」として相手に手交した「引換券」がお金の始まりだったというのが、私の勝手な想像です。要するに、お金はツケの証明書であって、引換の品物を受け取った時点で消滅してしまう性質のモノです。  一対一の個人間の引換券であったものが、モノの交換価値を計る統一的な「

        【5-11】社会福祉理念を共有する連邦国家がパレスチナ紛争を解決する

          【4-10】産業振興目的の補助金は不要

           諸々の産業振興補助金は、零細企業の経営支援が表向きの目的ですが、実態はモノを買わせてそれを補助するものばかりで、その結果、投入した資金は施設メーカーに流れ、肝心の中小企業の所得向上に繋がることはありません。  特に農業者は、国の補助金に翻弄され続けてきました。アメリカ・ノースダコタ州のゲイブ・ブラウン氏は、「土を育てる」(2022年、NHK出版)において、モノカルチャーを中心とする近代農業は政府の支援策なくして成り立たないと述べる一方、それがもたらす影響は人々の健康被害など

          【4-10】産業振興目的の補助金は不要

          【4-4】環境負荷が少なく災害に強いインフラ整備

           国の一般会計で6兆円が計上されている公共事業は、大半が地方公共団体を実施主体とする国庫補助事業です。地方公共団体の負担分を加えた全体事業費は2倍程度になるとみられ、さらに地方交付税交付金を充てこんで施工する箱モノなど諸々の工事も合わせると、年間20兆円程度が何らかのインフラ整備に費やされているとみられます。  公共事業費のおよそ3分の1を占めているのが道路整備です。これに港湾・空港整備を加えると、交通インフラ整備は公共事業全体の2分の1を占めることとなります。交通インフラは

          【4-4】環境負荷が少なく災害に強いインフラ整備

          【3-13】日用品のローカル自給を意識した流通改革

           朝市は、地域住民や観光客など多くの人を魅了します。その土地ならではの新鮮な食材や特産品が並び、特徴のある多種多様な品物を見て回るだけでも十分に楽しめます。朝市の開催は、週1回、隔週の日曜日など様々ですが、神子田(盛岡市)、勝浦(千葉県)、輪島(2024年1月末現在、能登半島地震被災のため休業中)、宮川(岐阜県高山市)、呼子(佐賀県)では、年間を通じてほぼ毎日行われています。  毎日開催されている全国的に名の通った朝市は、県庁所在地にある神子田を除けば、人口数万人の市町にあっ

          【3-13】日用品のローカル自給を意識した流通改革

          【4-3】食事の内容が免疫系に及ぼす影響

           腸内細菌のはたらきに関する研究の進展は、近年目覚ましく、ヒトの免疫系との強い関連性が解明されつつあります。 小林弘幸医師は「免疫力が10割」(2020年、プレジデント社)の中で、次の指摘をした上で、感染症予防には腸内環境を整えることが重要であると述べています。 ・過去に感染したことのないウイルスに最初に戦いを挑むのが「自然免疫」で、この免疫力が高ければ感染しても無症状か軽症で済む。一方、体内の免疫細胞が産生する「抗体」は、感染したとき無症状や軽症の患者には少なく、重症患者に

          【4-3】食事の内容が免疫系に及ぼす影響

          【5-9】政府関与はシンプルかつ公平に

           法律は、複数の法律間で相互に引用し、複雑に絡み合っています。法改正したり、新しく法律をつくったりする場合は、引用する法律もあわせてすべて更新する必要があります。絡まった糸を解いてから、相互に整合の取れたものに仕上げるのは骨の折れる作業なので、大半の法律は政府が提案しています。  政府提案の法律は、一般の人々の間でさほど問題意識が広がっていない、天から降って湧いたような課題に対処するものが大半です。世間一般にあまり注目されていない法律が生み出される背景には、自分たちのビジネス

          【5-9】政府関与はシンプルかつ公平に

          【4-2】脱炭素視点の財政リストラ

           国の財政支出は、教育や生活インフラを充実させ、その水準を維持するのに欠かせない政策ツールです。ただ、財政支出によって脱炭素に逆行する投資や消費行動が促されるような事態は避けたいものです。一見して目的が同じ予算費目であっても、使い方次第で化石燃料の消費を促進し、関連のメーカーやサービス事業者の懐を潤すだけという事態も起こり得ます。脱炭素社会の実現に向けて、政策の実効性を上げていくため、予算編成の過程で留意すべき点を幾つか具体的に述べたいと思います。  日本国の社会保障費は、2

          【4-2】脱炭素視点の財政リストラ

          【4-1】自然環境の回復とケア労働の対価は誰が払うのか

           ナンシー・フレイザー氏は「資本主義は私たちをなぜ幸せにしないのか」(ちくま新書、2023年)の中で、資本家が自分たち以外のあらゆるヒト・モノを喰いものにして利益を蓄積し続ける「共喰いシステム」が資本主義の本質だとして、資本主義社会を終わらせるべきだと訴えています。以下に主要な論旨を紹介します。 【自然とケア労働を喰い荒らし】 ・資本主義システムの経済は、構造的に自然に依存している。自然は、生産の投入物をもたらす蛇口であり、廃棄物を流すシンクとして機能する。そのいっぽう、

          【4-1】自然環境の回復とケア労働の対価は誰が払うのか

          【3-14】環境再生型農法とヘルスケアの融合

           私には、年末年始、ゴールデンウィーク、夏休みの度に帰省する実家があります。そして、私の親名義になっている土地として、10aの畑と、同等の広さの宅地庭園があるほか、水田が70a、筍の採れる山林が1ha、集落周りの雑木林とほぼ自然状態の奥山山林がそれぞれ4haずつあり、いずれ相続する必要に迫られています。  宅地庭園は、両親が数10年かけて、雑木林を取り込んで拡張し、樹木や草花の種類を少しずつ増やしてきたものです。今では、維持管理していくのが大変になっていて、直近の夏休みの時に

          【3-14】環境再生型農法とヘルスケアの融合

          【5-2】資本主義の次に来る「生物界互恵主義」

           ジェイソン・ヒッケル氏は「資本主義の次に来る世界」(東洋経済新報社、2023年)の中で、「与えるより多く取る」ことを原則とする資本主義の論理ではなく、生物界から必要以上に、分け与えられる以上の食物や資源を受け取らない「贈り物」の論理であれば、永続性があり、エコロジカルな社会が実現可能だと主張しています。その論拠は以下のとおりです。 【今も続く植民地政策による資本蓄積】 ・資本家は、土地や森林、牧草地、その他人々が生きるために依存してきた資源を囲い込み、自給自足経済を破壊

          【5-2】資本主義の次に来る「生物界互恵主義」

          【4-7】帰還困難区域における森林空間の多目的共用を提案

           東日本大震災の発生から12年経過した2023年現在、年間放射線量が50ミリシーベルトを超えるとして、立ち入りが制限させている帰還困難区域は、依然として福島県浪江町で町域全体の7割を占めるほか、飯舘村、南相馬市、葛尾村、双葉町、大熊町、富岡町の各市町村の一部地域で指定が継続されています。  その帰還困難区域の大半は森林地域が占めていて、人家もまばらで人が日常的に立ち入る生活圏ではないという理由で除染が行われていません。住人が帰還できないことによる損害は、補償金の支払いで解決済

          【4-7】帰還困難区域における森林空間の多目的共用を提案

          【5-1】ローカル・コモンズで無駄な資源消費を抑止

           ジェイソン・ヒッケル氏は「資本主義の次に来る世界」(東洋経済新報社、2023年)の中で、地球規模の生態系崩壊と炭素排出量の増加のほぼすべての原因は、「成長そのものを追い求める資本主義」のもとで行われる高所得国の過剰な成長、とりわけ超富裕層による過剰な蓄財にあると指摘し、「人間の具体的な必要を満たすためでも、社会的な目標を達成するためでもない」資本主義の無理筋と反民主性を厳しく糾弾しています。主要な論点を以下に紹介します。 【複利的成長主義の無理筋】 ・投資家の観点に立っ

          【5-1】ローカル・コモンズで無駄な資源消費を抑止

          【3-7】森林利用の多目的化で地域に賑わい

           食料品を含むあらゆるモノは、各メーカーが農山漁村からパーツを取り寄せ、都会もしくはどこかの工業団地で画一的な製品として加工した後に、全国各地に配送されています。目ぼしい生産物がない地域は、単なる消費地でしかありません。それでは所得が流出するばかりです。流通インフラが寸断されれば、たちまち地域の生活が成り立たなくなり、安全保障の観点から脆弱な社会構造だと言わざるを得ません。  農山漁村は、部品産地扱いされてモノカルチャー化が進んだ結果、活力も失われてしまいました。地域の活力を

          【3-7】森林利用の多目的化で地域に賑わい