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#18「人間関係」の問題には「先出しジャンケン」が重要 - 解決志向アプローチ -

この記事では「解決志向アプローチ」の考え方について、一緒に学んでいきたいと思います。前回の記事では、解決志向アプローチの3つの基本指針のその3「もしうまくいっていなければ、何か違うことをやる」に関連して、「解決しようとする努力が実は悪循環を支えていることもある」ということについてみていきました。

問題の原因を追及する(誰が原因なのかを特定する)よりも、「悪循環」を把握して、そこから逸脱するために今と違うことをやろうというお話でした。今回の記事では、さらに「人間関係」についての問題に対して、解決志向アプローチではどのように対応していくかについて一緒に学んでいきたいと思います。キーワードはここでも「望む状態」です。


「誰が悪いのか?」という原因追及では解決しない

皆さんもご経験があるかと思いますが、ご家庭でも職場でも、人間関係で何か問題が起きているとき、僕たちはどうしても視野がせまくなってしまい、「誰が悪いのか?」に固執してしまいがちです。「なんで〇〇してくれないんだ」「ふつうだったら△△するでしょ」と自分の視点から相手をみて、イライラしたり、もどかしく思ったり。自分の立場からみたら、どう考えても相手の方が悪い。相手からしたら、その逆も真なり。そのため、二人の間でいくら問題を解決しようとしても、なかなか解決に至らないことがよくあります。

このようなとき、僕たちは往々にして「原因(悪い部分)を見つけて直す」という次元で問題を解決しようと試みています。お互いの立場から「何が原因なのか?」を追及しても、視点によって原因が変わってしまうため、結局、「行き違い」で終わってしまいます。絵で表すとこんな感じでしょうか。いくら問題の原因を深掘りしても、状況はどんどん悪くなる一方です。

立場が違うと問題の捉え方が異なるため、原因を追及して問題解決しようと試みても、関係性はますます悪くなる

さて、このような状況に陥っている場合、どうすれば「解決」の方向に進んでいけるんでしょうか?

「どんな状態を望んでいるのか?」から考えてみる

解決志向アプローチでは、このような場合、一旦、問題を棚上げにして、そもそも「どんな関係性になりたいのか?」を考えることからはじめていきます。「望んでいる状態」を考えてみると、今のようにいがみ合っている状態ではないはずですよね、きっと。「どんな状態になりたいの?」って聞かれたら、おそらく「笑顔で話し合っている状態」とか「お互いをリスペクトしあえている状態」とかプラスのイメージがきっと浮んでくるんじゃないかと思うんです。絵で表すとこんな感じでしょうか?

今の問題は一旦、棚上げして「望んでいる状態」を描いてみる

「望んでいる状態」にいる自分は今とどう違うか?

解決志向アプローチでは、今の問題の延長線上にはない、この「望む状態」を作っていくことにフォーカスしていきます。なぜなら、たとえ「誰が悪いのか?」と原因を特定できたとしても、それによって理想的な関係性になれるわけではないからです。問題の原因と解決は別次元に存在します。そのため、今の問題から一旦、離れて、解決した後の状態、つまり、「望んでいる状態」を明確にしていった方が「解決の糸口」を見つけやすいんです。

別の次元に存在している「望んでいる関係の状態」に一旦、ワープ(?)してみると、色んな気づきを得ることができます。

その「望んでいる状態」にいる自分は、

  • 相手に対して、今と違ってどんな言動をしているでしょうか?

  • 相手に対して、今と違ってどんな態度を示しているでしょうか?

  • 相手に対して、今と違ってどんな表情をしているでしょうか?

  • 相手から見たら、今の自分と何が違うって言うでしょうか?

  • その違いは相手にどんな影響を与えるでしょうか?

「本当はその人とどんな関係でありたいのか?」を思い描いた上で、これらの質問に答えていくと、今と比べて、おそらく「相手の話をまずは聴こうとしている」とか「もっと笑顔でいる」「表情がもっと穏やかって相手は言うかもしれない」など、色んな気づきを得ることができます。この気づきの中にある「今と違うこと」が「解決した後の状態」にあるものです。この「今と違うこと」を少しずつでもやれる範囲でやってみることが「解決の糸口」になってきます。

自分だけでも先に「望む未来」に行っちゃう

しかし、ここで一つ疑問に残るのが、「自分が率先して違うことをやろうとしても、相手は変わっていないじゃないか」という点です。確かに、相手は変わる気ないのに、自分だけが変わろうとしているって、なんだか損しているような気持ちになっちゃいますよね。この点、僕らが試されているところでもあるんですが、基本指針その3でもみたように、今の状況を二人の中で起きている「循環」として捉えることができるかどうかがカギとなります。

たとえ相手が今の(誰が悪いのかを追及する)次元にいたとしても、自分が先に別の次元(解決した後の望む状態)に行き、今と違った行動をとり始めれば、今起きている「悪循環」から抜け出せる可能性が高まっていきます。今の悪循環から脱し、相手にも「望んでいる状態」の次元に来てもらえるように、「こっちが先に望む未来に行っちゃおう」って感じで「先出しジャンケン」をするイメージです。人間関係は「相互作用」で成り立っているため、こちらが変わってしまったら、その分、何かしらの影響が相手にも及ぼされていきます。

「望んでいる状態」を相手と話し合ってみる

このように人間関係の問題の場合、「どんな関係性を望んでいるのか?」を明確にしていくことで「解決の糸口」がみえてきやすくなります。そのため、今、もし誰かとの間で問題がある場合、可能であれば、一旦、問題を棚上げして、相手と「どんな関係が理想的なのか?」を話し合ってみることを強くお勧めします。そして、その理想的な状態の中で「あなたはどう振舞っているのか?」「わたしはどう振舞っているのか?」をお互いで話し合ってみてください。きっと、そこに「解決の糸口」があるはずです。

さて、ここでは「人間関係」の問題に対して、解決志向アプローチの基本指針その3に則って、一緒にみていきました。今回の記事の内容ですべて解決できるというワケではありませんが、「どんな状態になりたいんだろう?」という視点を、いつも大切にしておきたいですね。

次回の記事では、「人間関係」というキーワードが出たため、少し解決志向アプローチから離れて、ポジティブ心理学で言われる「よい人生(グッドライフ)」とは何かについて、一緒にみていきたいと思います。(つづく)

【参考文献】
Warner, R. E. (2013). Solution-focused interviewing: Applying positive psychology: A manual for practitioners. University of Toronto Press.

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