見出し画像

#16 もしうまくいっていなければ、何か違うことをやる - 解決志向アプローチ -

この記事では「解決志向アプローチ」の考え方について、一緒に学んでいきたいと思います。前回の記事では、解決志向アプローチの3つの基本指針のその2「もしうまくいっていれば、もっとそれをやる」についてみてきました。

【解決志向アプローチの3つの基本指針】
1. If it ain’t broke, don’t fix it.
もし壊れていなければ、直そうとしない
2. If it works, do more of it.
もしうまくいっていれば、もっとそれをやる
3. If it doesn’t work, do something different.
もしうまくいっていなければ、何か違うことをやる

de Shazer & Berg, 1991

「好循環を把握して、もっとその循環を生み出そう」という内容でしたね。今回は、基本指針その3「もしうまくいっていなければ、何か違うことをやる」について、一緒に学んでいきたいと思います。キーワードは「脱出」です。


この問題は「誰のせい?」

僕たちは、何か問題が起きたとき、「何が問題なんだろう?」「どこが間違っているんだろう?」と、まずはその原因を追及して「悪い部分を直そう」とします。特に人間関係の問題だと「どっちが悪いのか?」「誰が悪いのか?」と原因を探ろうとしている間に「犯人捜し」になっちゃうこともよくあります。Aさんからみたら、Bさんの言動が原因であり、逆にBさんからみたら、Aさんの言動が原因であり、立場や視点が変わるとその問題の原因も変わるってこと、ありますよね。このような状況のとき、問題の原因を追及しよう、犯人はどっちかを決めようとすればするほど、泥沼にはまっちゃうのは容易に想像がつくと思います。

問題の原因追及ではなく、「循環」を把握する

こんなときに役立つのは「第三者の視点」です。おそらく、上述のAさんとBさんの言い争いも第三者の視点からみると「いや~、どっちもどっちでしょ」って思うんじゃないかなと思うんです。なんでそう思えるかというと、第三者の視点では、より広い視野で、その場の「循環」を捉えることができているからです。「Aさんが〇〇するから、Bさんが△△するし、Bさんが△△するから、Aさんが〇〇しちゃうし・・・」とその場で起きている「悪循環」を捉えているため、「”どっちが原因か?” って考えても意味ないよ。それよりも、この2人がこの ”悪循環” からどうやって抜け出せるかを一緒に考えようよ」という発想になってくると思うんです。

「悪循環」から脱出するために、今と違うことをやってみる

この「原因を追及するのではなく、”悪循環” を把握して、そこから抜け出すために何か違ったことをやろう」という発想が、解決志向アプローチの基本指針その3「もしうまくいっていなければ、何か違うことをやる」になります。うまくいっていないことが起きているのであれば、それは「悪循環」が生まれている。だから、そこから抜け出すために「誰かが何か、今と違うことをやってみようよ」という発想です。

「Aさんが〇〇するから、Bさんが△△する。Bさんが△△するから、Aさんが〇〇する」という「悪循環」から抜け出すためには、AさんかBさん、どっちでもいいんで、〇〇と△△以外のことをやってみる必要があります。それが■■でも◇◇でも、何でもいいから違ったことをやってみた方がいいんです。また、ここでは例として人間関係の問題を取り上げましたが、個人の問題についても同様です。うまくいっていないんだったら、違うことを試してみた方がいい。この至ってシンプルな方針が、解決志向アプローチその3の基本指針です。

「違うこと」は「実験感覚」で

ここで一つ疑問に挙がるのが「違うことだったら何でもいいの?」という点です。極論を言っちゃうと「なんでもいい」です。目的はこの「悪循環」から逸脱することなんで、今と同じことをし続けないことが重要です。一方、「いきなり違うことをし始めて、それも間違っていたらどうしよう」と不安になる方もいらっしゃると思います。その場合は2週間など、期間を設けて「実験感覚」でやってみるのはいかがでしょうか?期間があれば、それがうまくいかなかったときにすぐに修正可能ですし、その方が気持ち的にも少し楽になるんじゃないかなと思います。

また、「”なんでもいい” って言われると、逆に思いつかない」という方もいらっしゃるかと思います。その場合は、ぜひ解決志向アプローチの真髄である「何が原因か?」ではなく「何を望んでいるか?」という問いに一度、戻って考えてみてください。

「自分が望んでいる状態ってどんな状態だろう?」

きっと、この問いが、今の「悪循環」から抜け出し、進みたい方向へと導いてくれるかと思います。(この問いについて、こちらの記事で詳細を説明しています)

さて、ここでは解決志向アプローチの基本指針その3について、一緒に学んできました。何か物事がうまく進んでいないとき、ぜひ、「どんな悪循環が生まれているんだろうか?」という視点で、「→」を用いながら、その循環を図式化してみてください。きっと、原因追及をしていたときとは違った発想が生まれてくるかと思います。次回の記事は、もう少しこの「悪循環」について触れておきたい点がありますんで、この続きをみていきたいと思います。因みに、その点とは「実は、問題を解決しようと試みていた努力自体が悪循環から生んでいた」という点です。ぜひお時間あるときにご覧ください!(つづく)

【参考文献】
de Shazer, S. (1985) Keys To Solutions In Brief Therapy, W.W. Norton and Company London.

de Shazer, S. (1988) Investigating Solutions In Brief Therapy. W.W. Norton and Company, NY.

よろしければ、フォローよろしくお願いします!また、自分自身のお悩みや、人を育てる上でのお悩みやご質問などあれば、是非こちらにお寄せください。別記事で「解決の糸口」を一緒に探っていければと思います!https://peing.net/ja/smatsuguma