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#17 解決しようとする努力が実は解決を遠ざける - 解決志向アプローチ -

この記事では「解決志向アプローチ」の考え方について、一緒に学んでいきたいと思います。前回の記事では、解決志向アプローチの3つの基本指針のその3「もしうまくいっていなければ、何か違うことをやる」について、一緒にみていきました。

「原因を追及するのではなく、悪循環を把握して、そこから脱するために何か違うことをしよう」という内容でしたね。ここでは、この基本指針その3の続編になりますが、「僕たちが解決しようと努力することが、実はこの悪循環を支えているかも」ということについて、一緒にみていきたいと思います。「はっ?なんのこっちゃ?」って感じかもしれませんが、具体例をみながら一緒に学んでいきましょう。


人は問題を解決のために努力する

僕たちは問題が起きると、何かしら解決しようと色んなことを試みます。問題をそのままにしておくと居心地が悪いので、正解が見つからなくても、問題解決に向けて行動します。例えば、ある親御さんの場合。息子さんが何か問題が起きてもいつも自分から動こうとせずに何もしないのでどうすればいいかわからないと悩まれていました。息子さんが何もしないため、「いつもどうされているんですか?」と伺ってみると、「何もしないから、私がもう先回りして問題が起きないようにしています」とのこと。親御さんとしては「自分が先回りして問題を取り除くこと」で問題を解決しようとされていました。これ、図にしてみるとこんな感じです。

「鶏が先か?卵が先か?」の「悪循環」が起きている

解決しようとする努力が悪循環を支えている

息子さんが何もしないから親御さんが先回りして動く。親御さんが先回りして動くから、息子さんは何もしなくていい。これ、「鶏が先か卵が先か?」の「悪循環」が生まれていますよね?この「悪循環」に気づいていないと、親御さんはこれまで通り、この問題を解決しようと「先回りして問題を取り除く」という努力を続けていきます。逆にいうと、この努力をし続ける限り、この「悪循環」から抜け出すことができません。つまり、問題を解決しようと努力していることが、逆にこの悪循環を支えてしまっているってことがあるんです。(この努力を「解決努力」や「偽解決」と呼びます)

「解決努力」を特定して、違うことをする

上述の例の親御さんの場合、「先回りして問題を取り除く」という「解決努力」をし続ける限り、息子さんは何もしないままになってしまいます。そのため、解決志向アプローチの基本指針その3に則って、何でもいいから今と違ったことをやって、この「悪循環」から逸脱していく必要があります。重要なポイントは、今と違うことをやるのは親御さんでも息子さんでもどっちでもいいという点です。犯人捜しをするのではなく、この「悪循環」のループにバグを入れて、そこから抜け出すことが最も重要なことです。因みに、この親御さんの場合、二人の中でどんな「循環」が起きているのかを理解した後、自分自身の「先回りして問題を取り除く」という解決努力がこの悪循環を支えていたことに気づき、「何もしないでおく」という違ったことを実験感覚で2週間、やってみることにしました。(図にするとこんな感じ)

「解決努力」を特定し、それと違うことをやることで「悪循環」から抜け出せる可能性が高まる

この実験感覚で行う今と違った行動が、うまくいくかもしれませんし、いかないかもしれません。しかし、この「悪循環」が続く限り物事は何も動きませんので、たとえうまくいかなかったとしても、異なる行動を試し続けながら「解決の糸口」をみつけていくことが大切です。

誰が悪いという話ではない

一方、ここで誤解してほしくないのは「解決努力」をしていた人が問題の原因ではないということです。上述の例のような場合、よく相談にきた親御さんが「甘やかしすぎ」などと言われて、問題の原因として指摘されることが多いんですが、そもそもお子さんが自ら動くようでしたら、こんなことにはなっていません。つまり、「誰が原因なのか?」を追及してもあまり意味がなく、前回の記事でみたように、どちらかが今と違うことをやって、この「悪循環」から逸脱することが最も大切なことです。問題というのはさまざまな事象が折り重なって現れていることがほとんどです。ですから、「自分が悪い」と自責の念にかられる必要はありませんし、「相手が悪い」と攻撃する必要もありません。その場にいる皆にとって望ましい状態を少しずつ構築していきたいですね。

ここでは解決志向アプローチの基本指針その3「もしうまくいっていなければ、何か違うことをやる」に関して「解決努力」を特定することの重要性についてみてきました。僕自身もこの記事を書きながら、改めて物事を俯瞰してみるって大切なことだなあと思いました。問題が起きている渦中、感情を横において冷静に起きている循環を俯瞰してみるって難しいことですよね。一方、皆さんの人生の中でも、一度くらいは感情に流されずに冷静に対処できたときもあったんじゃないかなって思うんです。ぜひ、そのときの自分を思い出してみてください。きっと、そのときの自分が、本来自分自身がもっているはずの力を引き出してくれるんじゃないかなって思います。できることからやっていきましょう。次回の記事では、この基本指針その3に続く形で「人間関係」の問題について、少しみていきたいと思います。(つづく)

【参考文献】
Watzlawick, P., Weakland, J. H., & Fisch, R. (1974). Change: Principles of problem formation and problem resolution. W. W. Norton

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