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#15 もしうまくいっていれば、もっとそれをやる - 解決志向アプローチ -

この記事では「解決志向アプローチ」の考え方について、一緒に学んでいきたいと思います。前回の記事では、解決志向アプローチの前提となる3つの基本指針のその1「もし壊れていなければ、直そうとしない」についてみてきました。

今回の記事では、基本指針その2「もしうまくいっていれば、もっとそれをやる」について一緒に学んでいきたいと思います。

【解決志向アプローチの3つの基本指針】
1. If it ain’t broke, don’t fix it.
もし壊れていなければ、直そうとしない
2. If it works, do more of it.
もしうまくいっていれば、もっとそれをやる
3. If it doesn’t work, do something different.
もしうまくいっていなければ、何か違うことをやる

de Shazer & Berg, 1991

うまくいっていることには目が向きにくい

僕たち人間は、先ずはマイナスのことを考えて、それに備えようとする特性があるため、どうしても、ネガティブなことの方に目が行きがちな生き物です。(これを「ネガティビティ・バイアス」と呼びます)そのため、悩んでいるときや問題があるときなど「何が原因なんだろう?」「どこが悪いんだろう?」とうまくいっていない理由を探して、そこを修理しようと試みます。「悪い部分を見つけて直すこと」ばかりに目が向いているため、「うまくいっていること」になかなか気づくことができません。

「うまくいっていること」の中にヒントがある

一方、ポジティブ心理学や解決志向アプローチでは「うまくいっていること」の中から学べることがめちゃくちゃあると考えます。なぜなら、うまくいっているときや問題がないときを丁寧に分析すると、そのとき役立っていたものを見つけることができ、どんな好循環が起きているのかを把握することができるからです。この好循環を把握することができると、次にどんなことをすれば、またこの好循環に入れるかが明確になっていき、プラスのスパイラルを巻き起こすことができるからです。

例えば、いつも会議で発言できない、内気な性格のマルオさん。マルオさんに「なんで発言できないのか?」を問いただしても「だって内気から」と、何も解決に繋がらない答えが返ってきます。一方、内気な性格のマルオさんだって、これまでの人生の中で、一度くらい会議で発言できたときってありますよね?ですから、マルオさんに「なんでそのときは発言できたのか?」を伺ってみると「あのときは、たまたま上司と事前に会議の内容について話す機会があって、”良いポイントだから会議で言ってみてよ”って言われたから」とのことでした。「それの何が役立っていたと思う?」とさらに伺ってみると「なんですかね~、、、おそらく、自分の意見が良いものだと上司に認められていたので、会議中に発言しても ”変なこと言ってる” って周りの人に思われないだろうという安心感があったんですかねえ」と。つまり、うまく発言できたときは、マルオさんの中に「事前に会議の内容を把握する」→「会議出席者に自分の意見がおかしくないかを確認する」→「安心感が生まれる」→「会議中でも発言できる」という好循環が生まれていたのです。

「好循環」を把握する

この好循環をしっかり把握できると、今後も会議で発言できるようになるためには何をすればいいかが見えてきます。これが解決志向アプローチの2つ目の基本指針「もしうまくいっていれば、もっとそれをやる」です。解決志向アプローチでは、物事を「循環」として捉え、「好循環」をもっと増やして、「悪循環」からは抜け出そうという考え方をします。そのため、上述の例では、マルオさんの「内気な性格(悪い部分)を直そう」という発想ではなく、「内気な性格のマルオさんでも発言できたときは、どんな好循環が生まれていたのか?」という部分に着目していきます。そして「その好循環をもっとやろうよ」というアプローチになるため、ものすごくエンパワーされるんです。「自分の欠陥部分を修理しなきゃ」って考えるよりも、「自分の中にあるものを活かそう」と考えた方が自己効力感、高まりますよね。ですから、自分自身が何か問題を抱えているとき、もしくは、他の人の悩み相談にのるとき、まずは、この基本指針その2「もしうまくいっていれば、もっとそれをやる」に則って、ぜひ、「好循環」を把握することからはじめてみてください。きっと、次に繋がるヒントがそこにあると思います!

ここでは解決志向アプローチの2つ目の基本指針について一緒に学んできました。この基本指針は以下の2つの記事にも見受けられる内容になっていますんで、ぜひ、こちらもお読みください。さらに理解が深まるかと思います!

次の記事では、解決志向アプローチの基本指針その3「もしうまくいっていなければ、何か違うことをやる」について、一緒にみていきたいと思います。(つづく)

【参考文献】
de Shazer, S. (1985) Keys To Solutions In Brief Therapy, W.W. Norton and Company London.

de Shazer, S. (1988) Investigating Solutions In Brief Therapy. W.W. Norton and Company, NY.

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