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#05 問題解決から解決構築へ - 解決志向アプローチ -

この記事では「解決志向アプローチ」の考え方について、一緒に学んでいきたいと思います。数回に分けて書いていきますが、前回は「問題を解決するのに必ずしも原因を追及する必要はない」というお話でした。今回は「解決の糸口の見つけ方」について、一緒に学んでいきたいと思います。


「原因追及」では解決しないとき

前回の記事でもあったように、お腹が空いている人に対して「なぜお腹が空いているのですか?」と問いただしてもこの問題は解決しないように、いくら原因を探っても、解決に結びつかない場合があります。

そのような場合、僕たちはどのように解決の糸口を見つけることができるでしょうか?

「何が原因なのか?」よりも「何を望んでいるのか?」

ここで大切にしたい考えは「何が原因なのか」という過去志向ではなく、「何を望んでいるのか」という未来志向の考えです。解決した状態を想像し、その状態になるためには何が必要か、どのリソースを活かせばいいかを考えていくプロセスは、従来の「原因となる悪い部分を見つけて、修理する」という「問題解決」のプロセスとは異なり、望んでいる状態を創造していく「解決構築」と呼ばれるプロセスになります。

上述のお腹を空かした人への解決策は「なぜ、お腹が空いているのか」という視点ではなく、「何を望んでいるのか」という視点をもつことによって、解決までの道筋が明らかになりました。この「解決構築」のプロセスは、様々な現象が重なって生じる心の問題に向き合う際、非常に有効な考え方であり、心理療法の1つとして、カウンセリング等の現場で用いられています。豪州で行われた研究でも、「解決構築」の考え方は、主観的ウェルビーイング、心理的ウェルビーイングと正の相関があり、心理的不調と負の相関があることが示唆されています。

学校が教えるのは「問題解決」のみ

しかしながら、僕たちは「原因となる弱みや欠点を見つけて直す」という「問題解決」の考え方は学校教育をはじめ、様々な機会で学ぶことはできるものの、「望んでいる状態を想像して、自分の強みやリソースを活かす」という「解決構築」の考え方は、従来の学校教育において、ほとんど学ぶ機会がありません。しかし、この考え方を学ぶと、過去の原因追及や自分の欠点、状況の悪い部分ばかりに目がいかず、未来の望んでいる状態や自分の強み、状況の中にあるリソースに目が行きはじめ、「問題解決」の考え方では生まれなかった道筋が見えてくることがあります。

「問題解決」から「解決構築」へ

この「解決構築」の考えができるようになるためには、この考え方を構成する以下の3つの力を育むことが大切です。

  1. 問題の原因に囚われない力 (Problem Disengagement)

  2. 自分の強みやリソースに気づき、それを活かす力 (Resource Activation)

  3. 望む状態を描き、到達するための道筋を考え出す力 (Goal Orientation)

人間は問題を抱えているとき、どうしてもマイナスのことを考えがちです。そんな中でも、問題の原因ばかりに目を奪われず、自分が望む未来にフォーカスし、そこに辿り着くためにはどのリソースを活かすべきかを考えることができる力が「解決構築」のプロセスを可能にします。そのため、これら3つの力を身につけるためにはどうすればいいかについて、また別記事で具体的に書いていきたいと思います。(つづく)

ここでは、原因を追及しても解決しない場合、「解決構築」のプロセスが解決の糸口となりうることについてみてきました。自分自身が問題を抱えているとき、もしくは、大切な人が問題を抱えているとき、「その問題の原因は何だろう?」と問いただしても解決策が出てこないときは、ぜひ私は、その人は「今、何を望んでいるんだろう?」と自分の心にきいてみてください。

【参考文献】
Grant, A. M. (2011). The Solution-Focused Inventory: A tripartite taxonomy for teaching, measuring and conceptualising solution-focused approaches to coaching. The Coaching Psychologist, 7(2), 98-106. 

Grant, A. M., Cavanagh, M. J., Kleitman, S., Spence, G., Lakota, M., & Yu, N. (2012). Development and validation of the solution-focused inventory. The Journal of Positive Psychology, 7(4), 334–348.

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