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#31 「過去の自分」から「今の自分」を見てみる - 解決志向アプローチ -

この記事では「解決志向アプローチ」の考え方について、一緒に学んでいきたいと思います。前回の記事では、「望んでいる未来」にいる自分から今の自分にアドバイスをすることで、解決の糸口を見つけていこうというお話でした。

今回の記事では、「未来の自分」ではなく、「過去の自分」の視点が解決に役立つときについて、一緒にみていきたいと思います。特に、今、色々あって自信をなくしている方は是非、ここに書いていることを試してみてほしいなと思います。


「過去の自分」の視点が役に立つとき

僕たちは問題を抱えて悩んでいるとき、視野が狭くなり、解決策が見つからなくなることがあります。特に、過去に嫌な経験をしている場合、その嫌な記憶に引っ張られたり、過去に起きたことに対してくよくよしたり、結構、「過去」のことって、問題を解決する上で、マイナス要因として見られることがよくあります。(そのため、「今・ここ」に集中しようというマインドフルネスが流行っていますよね)一方、この「過去の自分」の視点というのは、ある悩みに対して、とても力を発揮することがあります。その悩みとは、「自分が今、成長しているかわからない」という悩みです。

「自分が今、成長しているかわからない」と悩む人は結構、多い

人間は「慣れ」の生きもの

僕たち人間は「慣れ」の生きものであるため、何かできるようになったとしても、すぐに、それが「当たり前」になってしまい、あたかも昔からできていたかのような錯覚に陥ってしまうことがよくあります。そのため、いくら何かができるようになっても、それは当たり前で、その時点、その時点でまだできていない点や改善点ばかりに目がいき、「果たして自分は成長できているのか」と不安になってしまうことがあります。特に自分の上司があまり褒めない人だったり、何かの資格や検定など、目に見えて測れるものがない状況であれば、「自分が成長しているかどうかわからなくなる」というのは、至って自然なことなのかもしれません。

同じことが「過去の自分」にできたか?

もし、自分が成長しているかどうかわからなくなったとき、一度、「過去の自分」に戻って、その立場から「今の自分」を見てみることをお勧めします。なぜなら、「過去の自分」から「今の自分」を見てみると、今できていることが「当たり前」ではなくなり、確実に自分の変化や成長に気づくことができるからです。

例えば、以下のような質問を自分自身に投げかけてみてください。

  • 1年前の自分って覚えてる?

  • 今、やっていること、その1年前の自分ができたと思う?

  • 1年前の自分が、今の自分を見たら何て言ってくれると思う?

  • 今の問題って、1年前の自分にもつことができた問題だと思う?(その問題を持っていること自体、成長している証であることを間接的に伝えるため)

ここでは例として「1年前」としましたが、状況に応じて期間を変え、自分自身がこれまでどんな道のりを歩んできたのかを、少し立ち止まって振り返ってみてください。そうすると、「まあ、色々あったけど、よくここまできたな」とか「今、問題を抱えて悩んでいるけど、それにしてもよく頑張ってるよ自分は」など、何かしらの自分の進歩や成長に気づけるんじゃないかなと思います。

子育てや人を育てる上でも大事な視点

因みに、この「過去の自分」の視点から「今の自分」を見てみるというのは、自分自身に対してだけでなく、子育てをはじめ、人を育てるときにめちゃくちゃ重要な視点になります。というのも、どうしても僕らは「できていること」を「当たり前」にしてしまい、「もっとここを直した方がいい」と欠けているところや改善点にばかり、目がいってしまう生き物だからです。(これをネガティビティバイアスと呼びます)そのため、いくらお子さんが何かできるようになったとしても、そこに言及せずに、すぐに改善点の話ばかりしがちです。でも、これじゃ、いつまでたっても認められずに、言われている方は自信を無くして、疲弊しちゃいますよね。改善点を指摘している親御さんご自身は、その子のためを思って言っていると思うんですが、気づかないうちに相手のモチベーションを下げる行為になっちゃっていることってよくあります。

お子さん本人も自分ができるようになったことを「当たり前」にしてしまい、親御さんも改善点ばかり指摘する。一方で、お子さん本人は「もっと自信を持ちたい」と望み、親御さんも「もっと自信をもってほしい」と願う。・・・ この矛盾、日本でひきこもりの訪問支援をしているときに、いーっぱい出会ってきました。今、「第三者」の立場でこれを読んでいる皆さんであれば、もうどうすればいいか、解決の糸口が見えますよね。

ぜひ、「過去のお子さん」と「今のお子さん」を比べてみてください。そして、自分ができるようになったことを「当たり前」にしてしまっているお子さんに対して、上述の質問をしてみてください。

中には、「今できていないことがいっぱいあるのに、そんなこと悠長に言ってられない」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。(特に職場の上司ー部下の関係の場合)一方、ここからさらに上を目指して頑張るためには、「こころのガソリン」が必要です。過去の視点から今を見て、自分の成長や進歩を実感することは「こころのガソリン」になります。改善点ばかりを指摘して、こころをガス欠状態にさせるのではなく、ぜひ、一度、二人で立ち止まって、過去の視点から成長や進歩を振り返ってみてください。「こころのガソリン」を満タンにした上で、その先のお話をしていきましょう。

さて、ここでは「自分が成長しているかわからない」という悩みに対して、「過去の自分」から「今の自分」を見ることで、一緒に解決の糸口を見つけていきました。

皆さんは1年前、何をしていましたか?その時の自分が今の自分を見たら、どんなことを言ってくれると思いますか?ぜひ、考えてみてください。 

次回の記事では、さらに「こころのガソリン」を満たすために、「褒めること」について、一緒にみていきたいと思います。(つづく)

【参考文献】
Matsuguma, S. (2020). Positive psychology: A new approach to non-school attendance students and hikikomori. Kongoshuppan. 

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