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#27「強み」の見つけ方 - ポジティブ心理学 -

ここでは、「強みの見つけ方」について、一緒に学んでいきたいと思います。前回の記事では、自分の仕事で強みを活かしている人は、その仕事を「天職」だと感じやすいというお話でした。

今回の記事では「そもそも、どうやって自分の強みを見つけることができるのか?」について、一緒にみていきたいと思います。強みの見つけ方に関して、ポジティブ心理学の世界では、さまざまなやり方やポイントが語られていますが、今回は、もっとも簡単でシンプルな「強み」の見つけ方をみていきましょう。


なぜ「強み」に気づけないのか?

今、「あなたの ”強み” は何ですか?」と伺ったら、皆さんは何と答えますか?またいくつ答えられますか? 一方、皆さんの「弱み」や「欠点」に関してはいかがでしょうか? 強みと弱み、どちらの方が多いですか? また、より詳しくお話できますか? きっと、多くの方が「強み」よりも「弱み」や「欠点」の方がより多く、そしてより詳しく説明できるんじゃないでしょうか?

これは何もおかしいことではなく、人間の脳には「扁桃体(へんとうたい)」というアーモンドくらいの大きさの部位があり、これは危険なものにいち早く反応するセンサみたいな働きをもっているんです。そのため、人間の脳は、防衛機能として「そこ、突っ込まれると嫌だな」という「弱み」や「欠点」などのネガティブなものの方が気づきやすいようにできているんです。(これをネガティビティバイアスと呼びます)つまり、初期設定からネガティブな方に傾いているため、「弱み」ばかりが気になってしまうのは、全然おかしいことじゃないんです。

扁桃体は危険なものにいち早く察知するセンサのような働きをもつ

また、心理学の歴史を紐解いてみても、精神疾患などの人間のマイナス面に関する分類は昔から存在していましたが、人間の「強み」や「美徳」などのプラス面に関する分類は、実はポジティブ心理学が生まれるまで存在しませんでした。(余談ですが、そのため、カウンセリングなどの時間の多くがクラアントの「強み」ではなく、「弱み」やマイナス面に関する話ばかりになるのも無理もないんです)

さらに、「強み」というのは自分にとって自然とやれてしまうものなので、「そのくらい他の人もできるでしょ?」と過小評価してしまうこともよくあり、なかなか、自分で自分の「強み」を見つけることって、思っている以上に、結構、難しいことなんです。

最も簡単で効果的な「強み」の見つけ方

それでは、一体、どうやって自分の「強み」を見つけることができるでしょうか?「強み」の見つけ方について、ポジティブ心理学の世界では、アセスメントを受けたり、「強み」が出てきやすい瞬間があったり、さまざまなことが言われていますが、ここでは、最も簡単でシンプル、だけど効果的な方法をご紹介したいと思います。それは、ズバリ、「自分をよく知る人に聞くこと」です。

自分からは見えない「強み」も、相手から見たら、はっきり見えている

「めっちゃ単純!」って感じですが、上述したように、人は自分のネガティブな面の方に目が向きやすく、また、「強み」とは、自分にとって自然とできるものなので、よく過小評価して見過ごしてしまうことがあります。一方、自分にとっては「当たり前」のことなんですが、他人から見たら、「そんなこと、わたしには絶対にできない」と思われるようなこともありますよね。自分の鼻は自分からは見えないですが、相手からはハッキリ見える。「強み」も実はこの「鼻」のような存在なんです。ですから、人に聞いた方が早いというのは、結構、理に叶っているんです。

他者からのフィードバックが大切

そのため、自分の「強み」を見つけるためには、自分をよく知っている人からのフィードバックが非常に重要になってきます。それもできることなら、一人からではなく、より多くの人からもらえると、「誰から見てもそうだ」という共通したもの、つまり、自分ならではの「強み」が見つかりやすくなります。自分にとって「当たり前」であるがゆえに、主観的に「これが私の強みかも」と考えるよりも、他者視点からの方がより客観性をもつため、自分自身も納得しやすいですよね。実際に「ポジティブサイコセラピー」というポジティブ心理学を基にした心理療法でも「自分をよく知る人から ”自分の強みは何か” を聞いてきてもらう」というホームワークが課されており、自分が思う自分の「強み」と他の人が思う自分の「強み」を見比べながら、最終的に自分の「強み」は何かを考えていくプロセスを大事にしています。また、強みベースのチームや組織作りをする上でも、いかに頻繁にお互いの強みをフィードバックし合える機会を設けるかが、強みを見つけるアセスメントを導入すること以上に重要になってくるんです。

他者からフィードバックをもらうために

とは言っても、なかなか切り出しにくいですよね。自分の「強み」を他人に伺うことって、なんだか「自意識過剰に見られるんじゃないか?」など、恐怖や恥じらいから聞きづらいものだと思うんです。そのため、もし他人に自分の「強み」を聞きづらいと思われる方は、ぜひ、以下の枕詞と質問を参考にしてみてください。

◎ 背景や目的を伝える

  • (例)今、これからのキャリアを考える上で、自分自身の棚卸しをしている最中なんだけど、

  • (例)大学の授業で(会社の研修で)宿題が出たんだけど、

  • (例)ネットに書いてあって、確かにそうだなって思ったんだけど、

◎ 相手が特別な存在であることを伝える

  • (例)このことはマルオさんにしか聞けないことなんだけど、

◎ 本気度もちゃんと示す

  • (例)ちょっと本当に力貸してほしいことがあるんだけど、

◎ 分からないとき、時間が無いときの逃げ道も示す

  • (例)もし分からなくても、全然いいから、

  • (例)後ほど、LINEでも何でもいいから、

◎ 情景を思い浮かばせて、間接的な質問をする

  • (例)他人に紹介するなら、どんな人って伝えると思う?

  • (例)自分が楽しそうにしている時って、どんな時っていう印象がある?

  • (例)自分が「水を得た魚」みたいになっている時って、どんな時っていう印象がある?

  • (例)自分がどんなことをしているときに「この人らしいな」って思う?

全てのポイントが参考になるわけではないと思いますが、口頭でもLINEなどの文面でも構いませんので、自分をよく知る人にぜひ、伺ってみてほしいなと思います!

さて、ここでは自分の「強み」の見つけ方について、自分をよく知る人からのフィードバックをもらうことの大切さについてみてきました。この「他者の視点」の重要性について、もう少し触れておきたい点がありますんで、次回の記事では、「他者からの視点が解決に繋がる」ということについて一緒にみていきたいと思います。(つづく)

【参考文献】
Lineley, P. A.  (2010). The strengths book: Be confident, be successful, and enjoy better relationships by realising the best of you. CAPP Press.

Rashid, T. &, Seligman, M. E. P. (2018). Positive psychotherapy: Clinician manual. Oxford University Press. 

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