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日々のエッセイ

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2019年から湖畔暮らし。自然、ヤギ、トリ、仕事、考え事の日々。
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#ゆたかさって何だろう

大袈裟な感謝の後ろに

大袈裟な感謝の後ろに

慣れない土地へ引っ越して不安なことの一つに人間関係がある。

地域の人たちが意地悪だったらどうしよう、嫌がらせを受けたら誰に相談しよう、と何も起きていないのに心のどこかで雨雲が立ち込めていた。実際はどうだったかというと、全然大丈夫だった。むしろとんでもなく喜んでくれた人もいる。

「若い人たちが来てくれるって嬉しいもんなんだよ」

特に喜んでくれたのはお隣さんのおじさんだった。おじさんは私の両親と

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隙間と余白を抱えて

隙間と余白を抱えて

母は私が幼稚園に通っていた頃から自宅で英語教室を営んでいた。

もともと外国に住んでいたこともあって教材も豊富だし、なにより英語が好きだったらしい。外国から帰ってきてすぐに小学生、中学生を対象にした英語教室を始めた。

私も母の生徒の一人だった。

そんな母は60歳を迎える頃に通訳ガイドの国家資格を取得し、新しい仕事を突然始めた。英語教室にはついにピリオドが打たれた。ガイドの仕事は観光地に住んでい

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あたらしいことに触れる時間

あたらしいことに触れる時間

家に帰ってきてほっとした。胸のなかにまだザワザワした感じが残っているけれど、無事に終わってよかった。

今日はご縁あって、自分にとっては「あたらしいこと」を行った日だった。

最初話をもらったとき正直どうしようか悩んだ。金額のこととかじゃなくて、理由はこれまで挑戦したことがない「あたらしいこと」だったからだ。

いつもだったら「遠慮しときます」で終わっていたように思うけれど今回は、理由は分からない

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殺生のこと

殺生のこと

トレイで蜘蛛を見かけた。

うちでは小さな虫を食べてくれる蜘蛛は益虫と捉え、普段から放置している。足を広げれば5cm程度のビッグサイズもいる。

だから蜘蛛を家のなかで見ても特に何も感じない。「あ、いる」と思うだけ。ほとんど景色と同化している。

一方トイレで見かけた蜘蛛はやたらと私を怖がった。そそくさとトイレから出ようとするも、扉が閉まっていて右往左往。昆虫から汗が出ることはないけれど、蜘蛛にし

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変化と進化

変化と進化

「ねえ見て、今日作ったの!」

6月はドクダミの季節で、うちの庭でももれなく咲き乱れている。「咲く」という言葉を使っていいのか分からないほど量があり、多くの場合厄介な雑草として取り扱われる。

せっかく庭に大量のドクダミがあるのだから、何か活用できないだろうか?と調べてみた。

するとどうやらドクダミは虫除け効果があって、葉や花を酒に浸けると虫除けスプレーの原液ができるらしい。浸ける酒の種類によっ

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舞い戻った孤独

舞い戻った孤独

夫の在宅勤務が終了し、今週からはるばる片道1時間かけて通勤する生活が戻った。

それはつまり私にとっては孤独な生活の再スタートを意味している。朝行ってらっしゃいと見送って、夕方お帰りなさいと出迎える。そんな繰り返しだ。

私は自宅でできる作業をしたり、家事をしたり、庭仕事をしたり、基本的には家で時間を過ごすことが多い。

夫の通常勤務が始まって、なんだか気持ちが寂しくて孤独だ。今週はずっと慢性的な

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優しい顔にするもの

優しい顔にするもの

最近いろいろな人から野菜や果物をもらう。あたたかくなって美味しいものがたくさん実る季節になったからだろう。

庭で採れたよ、畑で収穫したよ、直売所で買ったよ、など理由は様々。誰かが新鮮な農作物を持って玄関先に現れた時は気持ちがふわっとする。

特に印象的だったものが2つある。

1つがそら豆。

そら豆は今が旬で直売所やスーパーでも見かけない日はない。ただ、どうしても金額が高くて手軽に買えない。大

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一人で浸る幸せ

一人で浸る幸せ

いま自分が住み慣れない田舎町で暮らしていけているのは夫のおかげ。

理由は、自分一人では大変なことが楽しいとは思えず辛いことになっていたと思うからだ。二人でやるから大変なことも乗り切れる。そして大変さは楽しさへと変化する。

一人だったらただ辛いだけだったかもしれない。これは将来に向けても言えることで、きっと二人で成果を分かち合うから喜びが増えるんだろう。

だからこそ不安に思うことがある。

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想像の生き物

想像の生き物

起きて欲しくないことが起きた。先日から怖がっているムカデがついに自宅の中で発見された。

「勘弁してー!!」

薄暗いなか縁側沿いをこちらに迫ってくるその姿はおどろおどろしく、怖い以外の何ものでもない感情になった。すぐさまバケツを用意し捕まえ、その場はなんとかしのぐことができた。

それからのことだ。

完全にトラウマになってしまった。トラウマだと実感したのは文字通り四六時中そのことを考えていると

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トイレはどこに

トイレはどこに

「ねえねえ、トイレ行かない?」

夫を起こして真夜中にふたり一緒にトイレに行く。なんでいい歳した夫婦がそんなことやっているのか、と言えばうちには今使えるトイレがないからだ。正確には家屋内に使えるトイレがない。

理由は浄化槽の取替え工事を行っているから。

私が暮らす地域には下水道が整備されていない。だから各家庭にいわゆる浄水場の役割を果たす浄化槽が地中に埋め込まれている。浄化槽の見た目は大きなお

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