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舞い戻った孤独

夫の在宅勤務が終了し、今週からはるばる片道1時間かけて通勤する生活が戻った。

それはつまり私にとっては孤独な生活の再スタートを意味している。朝行ってらっしゃいと見送って、夕方お帰りなさいと出迎える。そんな繰り返しだ。

私は自宅でできる作業をしたり、家事をしたり、庭仕事をしたり、基本的には家で時間を過ごすことが多い。

夫の通常勤務が始まって、なんだか気持ちが寂しくて孤独だ。今週はずっと慢性的な孤独感を抱えている。

「また一人の生活になっちゃった」

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結婚してから女性の働き方について事あるごとに考えている。まだ答えは出ていないけれど、率直に言えることは女性の働き方は難しいということ。

理由は、譲歩した方がいい場面がいろいろと出てくるからだ。

例えば私たちの場合、結婚するときは夫の意向に沿って住む場所が決まり、通勤時間の関係で私はそれまで勤めていた会社を辞めた。特に地方への移住を選択した場合、こうなる可能性がすごく高い。

じゃあ地方で仕事を探しましょう、ということになるけれど、今度は子供の問題が出てくる。

子供はそもそも欲しいのか?欲しいならいつから欲しいのか?計画せず授かった時に考えるのか?私たちの場合、子供は早めに欲しいと明確だったから仕事を探しにくかった。実際何社か面接を受けたけれど、大体どこの会社でも同じことを聞かれた。

「お若いですけど、お子様は近い将来考えていらっしゃるんですか?」って。

正直私が面接官の立場だったとしても、同じ質問をしたなと思う。企業の立場からすれば長く勤めて欲しいと思うのは当然だから。

実際子供ができたら仕事どころではなくなると思う。体調の変化、出産の準備、やることはいろいろてんこ盛りだろう。そんなことを考えたら企業に譲歩したくなる。内定をもらっても子供ができたら責任を持って仕事を継続できるか分からない。

「じゃあどうすればいいんだろう」

私はすごく悩んだ。女性の働き方を考えるのがこんなに難しいだなんて想像もしていなかった。

夫とも話し合ったけど、結局自分で事業を作ってみてはどうだろう?という結論に至った。夫が会社勤めをしている間は安定的な収入を得られているから、その間私はしばらく準備期間にあてても大丈夫だろうって。

そういうわけでいくつかやりたいと思っていたことを形にして、少しずつ事業を始めようと思っている。

ただ、最近は毎日が孤独で辛い。

新しいことはすぐに成果が出る訳じゃないし、もちろん収入に直結するわけでもない。ひたすらに暗い地べたを這っている感じがする。

でも結婚する人を選んだのも自分だし、地方に移住してもいいと決意したのも自分だし、子供づくりを優先して再就職しない選択をしたのも自分。過去に戻って時間を巻き戻せるわけではない。

今はただ、夫に与えられた時間を活用して少しでも前に進むしかない時間。頭では理解しつつも時々苦しくなって、どうしようもなくなる。

そんなタイミングで夫が在宅勤務をし始めて、私は少しだけ救われていた。

辛くてもちょっと離れた机で作業している夫の姿を見れば頑張れた。日中別々の作業をしていてもお昼ご飯は一緒に食べられて嬉しかった。仕事中でも気軽に声を掛けられたのも楽しかった。

すべての日々が懐かしく恋しい。

また孤独が舞い戻ってきてしまった。

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田舎で暮らしていると自然が多い分、トラブルも多い。最近で言えば害虫に悩まされている。

夫が在宅勤務をしてくれていた時はただそこにいるだけで勇気付けられた。虫が出てもすぐさま報告して共感してくれれば安心できた。でも一人になったら全部自分で駆除しなくちゃいけない。虫自体も心の動揺も。

春になって伸びてきた竹や草を切るのも毎朝のルーティンだ。もちろん一人でやる。さすがに重かったり量が多かったりすると孤独に苛まれて涙が出る。

そういう意味で、困ったことがあったらすぐ呼べる状態にあった夫の在宅勤務期間は自分にとって豊かな時間だった。心が落ち着いていた。

これから地方移住についてより見直されていくのかもしれないけれど「夫は外、妻は家」という分かりやすい形態では成り立たないと思う。自然はそんなに甘くない。予想できない畏れ多さを理解する必要がある。

自然が多い地方で生きるには「夫婦の暮らし」と「夫婦の職場」が同じ空間にあった方がいい。夫の在宅勤務を経てゆっくりと理想の生き方が見えてくる。

そのとき必要なことに必要な分だけ、ありがたく使わせていただきます。