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ディスクレビュー

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【ディスクレビュー】Base Ball Bear 『Short Hair』

【ディスクレビュー】Base Ball Bear 『Short Hair』

「キミ」のことしか考えられなくなることって、よほど恋愛を避けた人生を送らない限り、誰しもが経験することなんじゃないかと思う。「キミ」に惚れてしまった瞬間、「キミ」に酷いことを言って傷つけてしまったとき、無性に「キミ」に会いたくなったとき。「キミ」に対する愛で溢れているが故に、時の流れる速度すら、普段とは違った、どこかセンチメンタルなものに感じてしまう。奇妙なものだが、それこそが恋の醍醐味でもある。

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【ディスクレビュー】anewhite『恋人繋ぎ』鍵盤とボーカルで丁寧に織りなす新機軸

【ディスクレビュー】anewhite『恋人繋ぎ』鍵盤とボーカルで丁寧に織りなす新機軸

昨年末に1stフルアルバム『2000’s』をリリースしたばかりの anewhiteから、ピアノが舞い踊る極上のポップソングが届けられた。鍵盤の音色がキャッチーなイントロを経て、鍵盤に寄り添う形でさとう(Vo/Gt)のボーカルが加わる。そこから《そんな今だけをいつまでもしよう》と無垢な歌詞をきっかけに、ミニマルなベースとドラムが加勢。Bメロでキック音がシンセのバックビートへとすり替わり、サビに向けて

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【ディスクレビュー】KANA-BOON『Honey &Daring』メロディメーカー谷口鮪がリリカルに描き出す、個々の人生を切り取った普遍的なテーマ性が浮き上がる一枚

【ディスクレビュー】KANA-BOON『Honey &Daring』メロディメーカー谷口鮪がリリカルに描き出す、個々の人生を切り取った普遍的なテーマ性が浮き上がる一枚

コロナによる不自由や谷口鮪の休養といった数々の試練を経て、4年半ぶりに届けられたフルアルバム。行き場のない喪失感を祈りに昇華した「Re:Pray」のリミックスver.がオープナーとなり、その他従来よりもダイレクトかつ鮮明に谷口鮪(Vo/Gt)の深層心理が表層化した楽曲が粒揃いな印象。そうした中で《悩める日々に来たる解放》と燦然としたアンセム感を放つ「Torch of Liberty」、至極キャッチ

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クレナズム『SAKURAドロップス/面影』ディスクレビュー

クレナズム『SAKURAドロップス/面影』ディスクレビュー

前作のEP『Touch the figure』でシューゲイザー、ドリームポップの系譜にJ-POPを急接近させ、ポップスの可能性を格段に広げた彼女たちが、今度は宇多田ヒカルの00年代を代表する『SAKURAドロップス』のカバーに挑戦。バンドの更なる変化を予感させる意欲作が、両A面Singleとしてリリースされた。彼らが得意とするシューゲイザーのエッセンスを漏れなく配合し現代版にアレンジした『SAKU

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【ディスクレビュー】あるくとーーふ『サイファールーム』

【ディスクレビュー】あるくとーーふ『サイファールーム』

“攻撃的ポップバンド”という記名性を有り余るほどに発揮した、長野発バンド・あるくとーーふによる1stミニ・アルバム。”脱出ゲーム”をテーマに制作されており、暴れまわるベースラインの軌道が、緻密に練り上げられたエッジーかつポップなサウンドを巻き込みながらグルーヴの渦を形成し、その中心でただならぬ爆発力を放つ『ダイナマイトタウン』に始まる。”フラッシュバック”という体験を通じて過去と現在を繋ぐイメージ

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【ディスクレビュー】MAN WITH A MISSION『yoake』

【ディスクレビュー】MAN WITH A MISSION『yoake』

ゲーム・ミュージックを思わせる打ち込み音とバンドサウンドのバランス感覚が絶妙な本楽曲は、タイトルからわかるように希望に手を伸ばす姿がサウンドを通して想像できる一曲。ブレイクが多用され、サビでの爆発力からは世に蔓延する鬱屈をすべて吹き飛ばすほどの、アグレッシブな息吹を感じる。

【ディスクレビュー】Cody・Lee(李)『LOVE SONG』

【ディスクレビュー】Cody・Lee(李)『LOVE SONG』

今年6月に男性の悶々とした脳内を表現した『悶々』、8月には浮遊感溢れるサウンドが青春映画『サマーフィルムにのって』のエンドロールを彩った『異星人と熱帯夜』をリリースしてきたCody・Lee(李)。前作から約2ヶ月半ぶりとなる新曲で歌われるテーマは"ピュアな恋愛"だ。

Aメロでは尾崎の柔らかな歌声で発せられるコーラス、アコースティックギターの音色が色濃くラブソングチックに染め上げるのと同時に、間奏

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【ディスクレビュー】ズーカラデル『ノエル』

【ディスクレビュー】ズーカラデル『ノエル』

『未来』『シーラカンス』に続く、配信シングル連続リリース第3弾となる新曲。スリーピースのソリッドなアンサンブルに乗せ<ダーリンダーリン 君の涙を/乾かせるなんて言えやしないが>と始まる『ノエル』は、"僕"から"あなた"へありったけの熱量で送る賛美歌だ。<君なしでも生きてゆける/そういう仕組みで出来ている>など、"僕"と"あなた"の間にある絶妙な距離感を暗示するフレーズが散りばめられているのも良い。

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【ディスクレビュー】THE KEBABS『セカンド』

【ディスクレビュー】THE KEBABS『セカンド』

"楽しい"の最高到達点を見た気がする。M1からM10まで、ボーカル・佐々木の唯一無二の歌声とともにハイテンションなギターロックが鳴り止まない。ロックンロールをこよなく愛する4人でバンドを結成できた歓びを、この1枚に集約させたようなイメージを受ける。曲名にだってその"楽しい"はダイレクトに炸裂している。2曲目の『チェンソーだ!』なんて、その愉快痛快なタイトルを耳にしただけで楽しげなメロディーが自ずと

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【ディスクレビュー】King gnu『BOY』

【ディスクレビュー】King gnu『BOY』

King gnuが、12月にCDリリースするシングル『BOY』の先行配信を開始した。
TVアニメ『王様ランキング』のOPテーマとして、非力ながらも大地を踏みしめ生きる少年を主人公に据える物語を、ポップに、そして鮮やかに彩る。
シンコペフレーズを多用し、山あり谷ありのストーリーを物語るかのようなけたたましいドラムアプローチには、ドラム・勢喜遊の溢れんばかりの息吹を感じる。
ポップソングでありながら、

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【ディスクレビュー】ポルカドットスティングレイ『赤裸々-EP』

【ディスクレビュー】ポルカドットスティングレイ『赤裸々-EP』

このEPから滲むサウンドは、"青春性"などという曖昧な言葉で表してしまって良いものなのであろうか。
そう悩まされるほどに、瑞々しさ全開のポップ・サウンドの中には、一筋縄ではいかないポルカワールドが広がっているのだ。
シュワシュワと炭酸が弾ける『青い』、アバンギャルドな世界線に足を踏み入れる『トーキョーモーヴ』。『ダイバー』では、ポップスという結晶体が魔法として溶け出すような、神秘的体験を誘発。

【ディスクレビュー】AliA『100年に一度のこの夜に』

【ディスクレビュー】AliA『100年に一度のこの夜に』

100年に一度の夜、誰と過ごし、何を思うのだろう。連続リリース第3段となる『100年に一度のこの夜に』は、"ポップ"でも"ロック"でも表せない、幻想的な心象風景をサウンドに閉じ込める。
足早に駆けるピアノのリフと共に、夜空へ優しく語りかけるようなトーンでAYAMEは歌い出す。<ずっとこの素晴らしい時間が続きますように>という言葉とともに、静寂を保ったままAメロは進行を始めるのだが、徐々にドラムのビ

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【ディスクレビュー】ハンブレッダーズ『ワールドイズマイン』

【ディスクレビュー】ハンブレッダーズ『ワールドイズマイン』

今年9月、初のZepp Tokyoでのワンマンライブ"トーキョーイズマイン"を満員御礼にしてみせたハンブレッダーズよる2ndシングル。ダンサブルなサウンドに乗せ、ムツムロアキラは<この世界はきっと 僕らのものなのさ>と闘志を滲ませた歌声で歌う。それが幻想であろうが、稚拙な思い込みであろうが関係ない。衝動の遠心力に身を任せ、ありあまる想像力で<何も持っていないはずの僕ら>をルサンチマンから解放し、熱

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【ディスクレビュー】KANA-BOON『Re:Pray』

【ディスクレビュー】KANA-BOON『Re:Pray』

今年4月にフロントマンの鮪が復帰し、復帰後第1弾となるシングル『HOPE』のリリースから2ヶ月ぶりとなる新曲をドロップ。
イントロではアクセル全開のギターシンセが鳴り響き、バックコーラスと共に印象的なフレーズを残す。彼らの奏でるアンサンブルから新たな決意を感じるこの曲は、"祈り"をテーマに書かれている。
前回リリースの『HOPE』が直訳すると"希望"であったが、本楽曲では<新しい希望 日々の合いの

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