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「幸せの国ブータン」 木村順子


「何かを強く望むとき、叶うか叶わないか立ち止まって考えすぎないことです。

とにかくその目標に向かってまっすぐ進むこと。すべてが可能であり、不可能なものなどないと信じること。

大きな目標も、小さな目標も日々の生活のなかで、生涯を通じて継続することによって実現します。」



「幸せの国ブータン」 木村順子


東日本大震災の起こった2011年。


その年の11月にブータンの国王、ワンチュク国王が来日されました。


震災で被災した日本をブータン国王夫妻は、ご成婚後の海外訪問先として選ばれたのです。


本書の写真と言葉をまとめられた写真家の木村順子さんは、福島県相馬市の公立小学校でブータン国王が子どもたちにお話された『龍のお話』に、感銘を受けました。

「みなさんは龍を見たことがありますか。私はあります。

ひとりひとりの心の中に龍は住んでいます。龍は〝経験〟というものを食べて大きくなります。

みなさんも、自分の中の龍をどうか大切にしてください。」


人生に迷っていた木村さんの心に、熱い気持ちが甦ってきました。気がつくと涙がこぼれていました。

「今の自分には何もないけれども、経験だけは重ねてきた。心のなかの龍は大きく育っている。」

木村さんはそう感じ、国王の言葉に励まされ、救われたそうです。


ブータンという国に強い興味が湧いた木村さんは、「ブータンに行こう!」と決意します。


そして


ブータンの観光局に「国王の撮影をしたい」と申し入れます。


しかし


そんなかんたんに許可は出ません。


取材の申し込みをして、国王に会えるかどうかもわからないまま、木村さんはブータンに旅立つのでした。


ブータン国王との謁見を心待ちにしながら木村さんは、現地の人たちの話を聞いたり、写真撮影をしました。


そうした現地の人たちの声が、この本にまとめられています。


そして


木村さんの想いは叶いました。ブータン国王と王妃に謁見することができたのです。


ただし、写真撮影は許可がおりませんでした。


この本には、国王、王妃の写真がありますが、これはブータン国王報道室の提供によるものです。


本の前半は、木村さんが取材した国王の言葉、後半には、現地の人たちの言葉がまとめられています。


その言葉の間に、活き活きとしたブータン国民の「笑顔」と「祈り」、「風景の写真」が挿入されています。


そして


『幸せ』とは何か? という実体のないモヤモヤとした霧が、ブータンの人たちの「笑顔」によってクリアーに霧消し、スッキリした感覚の光が心の奥を照らしました。


木村さんは、ブータンの人たちに教えてもらいます。

幸せはひとりひとりの心のなかで、見えない龍を育てていくことなのだということです。

ブータンの国王、国民の言葉は、僕の心の中で汚い油のようにこびりついて固まっていた「何か」を確実に溶かしていってくれました。


これは理想なのか?


いや、そうではない。やろうと思えばできることなんだ。


まずは、この本を読んで感じていただければ幸いです。


ブータン国王と国民の声を、一部だけ紹介させて頂きます。

【ブータン国王の言葉】

人生は、困難の連続です。

豊かな人も、貧しい人も、人生の困難から逃れられません。いかなる困難に直面しても、希望を失わないことです。

一番大切なのは、若い世代に焦点をあわせた政策です。

子どもは国の宝であり、未来そのものです。子どもに潤沢な予算を注いでいるかどうかで、国の将来が見えてきます。

物質的な豊かさを追求する価値観ばかりを信奉するようになってしまうと、私たちは共同体や人類の友愛的な精神を犠牲にして利己主義的な道を選ばざるをえなくなるでしょう。

これは、世界が追求してきた成長というものの正体なのです。

この道を選択するとしたら、私たちは不幸な道を歩むことになるでしょう。人と意見が一致しないことを気にすべきではありません。

重要なのは、ていねいに意見を交わし、問題を解決する方法を見つけることです。すべては人の心のなかにあります。

【ブータンの人々の言葉】

悩んだり、迷ったり、わからなくなったらもといたところへ一度引き返すことが大切です。

山でも迷ったら、もといたところへ引き返すのが一番です。将来を心配しすぎると、今のことがおろそかになってしまいます。

ブータン人は自然を何よりも愛し、自然と仲良く共生しています。自然に対して敬意を払っているからこそ、環境を破壊することはありません。

自分の家の庭で育てた樹木でさえ、勝手に伐採することが禁じられているのです。

人と比べないこと。

シンプルに、質素に生きること。

これが私の幸せの秘訣です。




【出典】

「幸せの国ブータン」 木村順子 朝日出版社



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