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歩行

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歩行ケイデンスを変化させた後進歩行練習

歩行ケイデンスを変化させた後進歩行練習

結論

後進歩行練習は運動機能向上に有効。

後進歩行練習は、ハムストリングスや腓腹筋の筋活動が高くなると報告されている。

後進歩行を行うためには、後方へのバランス能力や力の調節能力が必要である。

力の発揮のタイミングと強度は選択的に調整されており、これを力の調整能力という。

力の調整能力とは意図的な加速、減速などの変化にも対応できる適応的な随意運動のこと。

意図的な加速と減速の適応的な歩

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生活期における装具の必要性

生活期における装具の必要性

装具無し歩行では装具歩行に比べ病巢側運動前野, 両側補足運動野, 非病巢側運動前野,内側一次運動野,病巣側外側一次運動野と推定される箇所にて有意な増加がみられた.

短下肢装具の使用では,前頭葉の運動関連領野の活動が限局されていることが確認された。

このことは,装具歩行ではパターン化された前頭葉の運動関連領野の活動に限局されているが,装具
なし歩行では,内反出現や立脚期における不安定が多くの領域

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歩くということ

歩くということ

●歩行介入における運動量の重要性

脳卒中患者における運動療法が「学習」定義された以上、学習即に基づいた量の確保は大前提である。

運動量の確保は、脳卒中の運動療法においてもはや公理である。

出来るだけ高頻度。高強度で目的動作を続ける方法が最もエビデンスの高い戦術である。

●実用歩行獲得に必要な三つの要素

歩行速度、歩行距離(耐久性)、安定性(転倒)

実用歩行獲得のための最も端的な戦略は、

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足を振り出すということ

足を振り出すということ

脳卒中片麻痺患者の遊脚期の最も一般的な障害として、麻痺側下肢の振り出し困難が挙げられる。

代表例としては、共同運動などにより遊脚時に麻痺側膝関節屈曲が生じないstiff-knee-patternが挙げられ、その代償として体幹の側屈と骨盤挙上による分廻し歩行が観察される。

ヒトの歩行において遊脚期には位置エネルギーを使用した振子運動(遊脚振子)が大きな動力源となっている。

運動麻痺が重度である

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歩行にはイメージも大切

歩行にはイメージも大切

歩行にはイメージも大切

運動イメージ能力とは、心的時間と実行時間の一致性

心的時間:運動イメージの想起に要する時間

実行時間:運動の実行に要する時間

運動イメージと実際の運動の一致性を評価することで、対象者のフィードバック誤差学習を促進させることができると見込まれる。

イメージ想起は「自分が運動しているところを外から見てるようなイメージではなく、あたかも自分が行っているような感覚をイメー

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物を抱えて歩く

物を抱えて歩く

独歩は可能も、背部の筋緊張が高かったり、上肢の振り出しが上手く出なかったり、上肢が過緊張になってしまったり、骨盤の回旋が上手く出なかったりします。

その時はビーチボール等、なるべく大きなボールを抱えて歩行してもらうと良いでしょう。

自然と背部の筋緊も和らぎますし、体幹と骨盤の対側回旋を促すことができます。

ぜひ一度お試しを。

姿勢よく歩いたほうが良い理由

姿勢よく歩いたほうが良い理由

歩行時に姿勢よく歩いたほうが良い理由

●症例

常に胸腰部および両股関節・膝関節屈曲位を呈す。

・麻痺側立脚中期から後期にかけて、麻痺側股関節屈曲・内転することにより骨盤の過度な麻痺側後側方移動が生じ、遊脚足底が内側へ急速に接地する。

→麻痺側大殿筋の緊張低下により、伸展運動が行えないため、股関節屈曲が生じる。
 麻痺側中殿筋の緊張低下により、立脚期に必要な内転の制動が行えない。

・胸腰部

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麻痺側下肢後方ステップを安定させるために必要なこと

麻痺側下肢後方ステップを安定させるために必要なこと

麻痺側下肢後方ステップを安定させるために必要なこと

●症例

脳梗塞右麻痺

麻痺側後方ステップ時に不安定となる

●問題点の整理と理学療法

①立位姿勢から上位胸椎屈曲位、胸腰椎移行部屈曲、左側屈位

→両側最長筋緊張低下

※体幹直立位が困難だと、股・膝関節を屈曲し膝を前方に位置させ、臀部を後方変移させることで重心を支持基底面に留めている。

<アプローチ>
上位胸椎の伸展、胸腰椎移行部の伸

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歩行中に足部が内反してしまう場合②

歩行中に足部が内反してしまう場合②

●症例

左麻痺

麻痺側底屈位で足尖設置を迎えることで立脚相が始まる。

麻痺側立脚初期から中期にかけて、空間的に後足部が回外し、その直後から、横足根関節の回内に伴い前足部と中足部の回内が生じるが乏しく、下腿が過剰に外側傾斜し、側方への不安定性が生じる。

→麻痺側腓骨筋群の緊張低下、麻痺側後脛骨筋の緊張亢進、麻痺側足関節の外返しROM制限。

麻痺側股関節内転に伴う骨盤非麻痺側下制が生じる。

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歩行中に足部が内反してしまう場合

歩行中に足部が内反してしまう場合

足部内反と歩行

平行棒内歩行にて、麻痺側立脚期に臀部が麻痺側後方へと変位し、安定性が低下する症例をよく見かける。

●歩行評価・分析

麻痺側LR~MStで股関節内転乏しい。距骨下関節の回外に伴い足部全体が空間的に回外し、その直後から、横足根関節の回内に伴い前足部と中足部の回内が生じるのが乏しい。

→右下腿が過剰に外側傾斜し、身体全体が右側へ傾斜してしまう。

足背屈に伴う下腿前傾が生じ、同時

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骨盤前後傾の大切さ

骨盤前後傾の大切さ

骨盤の前後傾は歩行時のバックニーを抑制し、適切な遊脚を形成することが可能。

片麻痺患者はこの骨盤前後傾ができないことが多い。

介入としては、

まず背臥位で骨盤後傾運動を自動介助で行う。

出来てきたら、骨盤後傾位でブリッジを行う。

その後は骨盤後傾位を保持し、膝の屈伸を自動運動で行ってもらう。

片麻痺患者は膝の単運動が出来ず、股関節の運動を伴ってしまうことが多い。

背臥位の運動ができて

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倒立振子運動を形成するためには

倒立振子運動を形成するためには

IC以降に生じる下肢への衝撃をLRで吸収しつつ、前方への推進力を得る必要がある。

ICからLRにかけて、床反力ベクトルは足関節の後方を通過し、足関節底屈方向の外的モーメントが発生するが、前脛骨筋の活動により底屈にブレーキをかけ足底接地の衝撃を緩衝し、同時に踵と床との接触点を軸にして下腿が前方へ傾斜していくheel rockerを形成する。

IC時に膝関節の前方に位置していた床反力ベクトルは、h

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生活するために必要な歩行速度とは?

生活するために必要な歩行速度とは?

田代らは脳卒中片麻痺患者の屋外を実用的に歩行するために必要な快適歩行速度は約36m/minと報告している。

Perryらは脳卒中患者の地域で制約なく活動するために必要な歩行速度は48m/minであると報告している。