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姿勢よく歩いたほうが良い理由

歩行時に姿勢よく歩いたほうが良い理由


●症例

常に胸腰部および両股関節・膝関節屈曲位を呈す。

・麻痺側立脚中期から後期にかけて、麻痺側股関節屈曲・内転することにより骨盤の過度な麻痺側後側方移動が生じ、遊脚足底が内側へ急速に接地する。

→麻痺側大殿筋の緊張低下により、伸展運動が行えないため、股関節屈曲が生じる。
 麻痺側中殿筋の緊張低下により、立脚期に必要な内転の制動が行えない。




・胸腰部が常に屈曲していることで、歩行の麻痺側立脚期において体幹直立位を保持した状態での麻痺側股関節伸展による骨盤および体幹の前方移動が不十分。

 頭部が支持基底面上の前方に位置することで、歩行の麻痺側立脚中期から後期で股関節屈曲しようとする働きが生じ、股関節伸展に伴う前方体重移動が困難。

→胸腰部伸展ROM制限(腹直筋上部および肋骨弓下部の内外腹斜筋重層部位の短縮)

胸腰部屈曲伸展中間位を保持するために必要な両側の多裂筋、最長筋の活動性が低下

胸郭骨盤間が短縮
胸郭骨盤間の距離を一定に保持できない

つまり、胸腰部の屈曲伸展中間位を保持することが、立位における両股関節・膝関節の伸展とともに体幹直立位保持につながる

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●理学療法

・胸腰部伸展ROM制限に対して
→腹直筋上部および肋骨弓下部の内外腹斜筋重層部位にダイレクトストレッチ

→両側多裂筋、最長筋の求心的な活動と、腹部では両側の腹直筋、内・外腹斜筋の体幹直立位で保持するための活動を促す。胸腰部屈曲・伸展運動を誘導する。

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・体幹、下肢が屈曲してしまうことに対して
→麻痺側下肢を一歩前に出し、大殿筋の求心性収縮を促しながら股関節伸展を誘導し、立位および歩行の麻痺側立脚中期における股関節屈曲伸展中間位保持のための大殿筋活動を促す。
 後方から胸郭を把持し、胸腰部の屈曲が生じないようにする。

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●考察

胸腰部屈曲位で頭部が股関節の前方に位置することにより、股関節は常に屈曲しようとする働きが生じている。

股関節屈曲によって、歩行動作の麻痺側立脚中期における麻痺側股関節屈曲伸展中間位保持のための大殿筋の活動、および股関節内転制動に働く中殿筋の活動が得られにくい。

→胸腰部屈曲の改善が必要。


・多裂筋 腰椎の伸展作用
・最長筋 胸腰椎の伸展作用

→両側の多裂筋、最長筋の求心性収縮による胸腰椎の伸展作用が得られ、体幹直立位保持が可能!


・体幹直立位において両側腸骨稜を結ぶ線より上部の内・外腹斜筋については胸郭と骨盤間の長さを保つための一定の筋緊張を維持する程度の活動を認める。

・内腹斜筋、外腹斜筋はそれぞれ腹直筋と筋連結がある。

→胸腰部屈曲による腹部が短縮位にならないように誘導することで体幹直立保持が可能。

・体幹直立位を保持しながら麻痺側下肢荷重位にて背屈による下腿の前傾を伴った股関節の伸展運動を促すことで骨盤および体幹の前方移動を誘導

→立脚期における大殿筋の伸展作用が得られやすい!

参考文献 歩行の右立脚中期から後期に骨盤の過度な右側方移動が生じることで歩行動作の安全性・安定性低下を認めた小脳梗塞後患者の理学療法 辻 智美 他 関西理学 2014

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