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こえ と ことば

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声優 星野貴紀が綴る、演技や向き合い方についての覚え書き。
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モノ作りの基本は料理なのではないか説

モノ作りの基本は料理なのではないか説

最近自分の中で、演技を料理に例えるのがブームなんですが…

まあ、ぶっちゃけ料理じゃなくてもいいのですけれど。
それを言ったらめんどくさい事になるので今回は料理で話を進めます。

何かを作る ってなった時に、その『なにか』の部分ってすごく大切ですよね。
この目的にあたるところが料理だと【レシピ】だったり【製法】と言ったりします。

まあ、これがないと話が始まらない。

身内にしか出さないとか、サイ

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こえ と ことば ②

こえ と ことば ②

演技は教わるものではない
この数年で強く感じるようになったことである。仕事として演技は求められるものだ、しかしながらその演技を教わることというのは至極難しい。その理由はいくつかあるが、第一に、求められる演技は毎回異なること。第二に、感じ方は十人十色であること。第三に、演者が持っている素養もそれぞれ異なるためだ。
他にも細々とした差異はあるものの教えることが至難であることの原因は概ねこの三点に集約さ

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こえ と ことば ①

こえ と ことば ①

はじめに
いくつもの流行りと世代交代を経て、社会に認知されるようになった、声優という職業。時代の変化やメディアの増加に伴い、外画、動画、ナレーション、ラジオドラマなどに声を吹き込むだけでなく、ゲームやライブイベント、MCや歌唱など放送という枠をこえて活動の機会が増えてきているのは間違いない。
だが、認知度が増え声優という職業を目指す人間が増えれば増えるほど、仕事という椅子取りは過酷になっていく。更

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純粋悪とは…の話

純粋悪とは…の話

むかし。リーディング用に書いた台本が純粋悪をテーマにしたやつだった。

純粋悪ってのは、星野の造語なわけだけれども純粋な悪は存在するのか…って話だった気がする…というのも、その当時使っていたPCが使えなくなってしまったのでシナリオデータ諸々が手元にないからなのだ。

久しぶりに興が乗ってるので、当時のことも含め雑感として書いておこうと思う。

そもそもだけれども、悪ってなんだろうか。

キャラクタ

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表現をしない表現とは

表現をしない表現とは

表現もいろいろある。
時折…というか、求められることが多くなってきた表現をしない表現について、雑感を記していこうとおもう。

ナチュラルな演技、自然な演技とも言われるが所謂ナマっぽさを求められる演技の事だ…と思ってると沼に嵌ってしまうこともあるので、各人ケースバイで対応していただきたいものだが…我々は成長とともに、様々な素養を身につけたり、それまでの成長の過程で手放したもの強みがより強化されたもの

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音の三要素

音の三要素

発声、発音、調音と声を作るには三つの柱がある。そして声というアウトプットに密接な関係性がある音というものにも、これまた三つの柱がある。今回の note では、この音の三要素について確認していってみよう。

音の三要素
・強弱
・高低
・音色

これら音の三要素はデジタル要素が強いものとアナログ要素が強いものとある。デジタルとは、単一の指標で数値化された情報、アナログは複数の指標が組み合わさった情報

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音の基準点

音の基準点

発声や発音をする際に、どれくらいのボリゥムで声を出せばいいのか?と気になることはないだろうか。

いくら大は小を兼ねるとはいえ、何でもかんでも大きな声を出せばいいというものではない。それが無理をして出している声ならばなおさらだ。もっとも、最低限聞こえたいボリゥムがある事もまた事実なのでこのへんは素養の話になるかもしれないが…。

そしてこの基準点なるものはトレーナーによっても変わってくるし、演出家

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演劇の三要素、演技の三要素

演劇の三要素、演技の三要素

ピーター・ブルックは著書『なにもない空間』のなかでこう記した。

どこでもいい、なにもない空間ーそれを指して、わたしは裸の舞台と呼ぼう。ひとりの人間がこのなにもない空間を歩いて横切る。もうひとりの人間がそれを見つめるー演劇行為が成立するためには、これだけで足りるはずた。
引用:ピーター・ブルック『なにもない空間』

と。演劇の最小単位を示したこの文の中には我々俳優が忘れてはならない行動について記さ

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感情は存在しない

感情は存在しない

なかなかセンセーショナルなタイトルにしてしまいましたが、そういうことなんだからしかたないですね。
ひと言に感情といっても定義付けはなかなか難しいですよね。
我々の内にある感情がなんなのか、一度は聞いたことのある哲学者の皆さんがあーだこーだ言いながらそれでもその瞬間瞬間の感情に翻弄されまいと頭を悩ませ、それでも答えが出ていないのが感情です。
日本では江戸時代にあたる1600年代に、フランスの哲学者ル

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俳優の学び方、生き方②

俳優の学び方、生き方②

前回から、風姿花伝の現代語訳を用いて俳優の学び方や生き方について私見をまじえながら書き記しています。
ジュニアランクも終わり、いよいよランカーとして世に出ていく時分の学び方、生き方とはなにか。今回はそれを見ていきましょう。

青年期(24〜25歳の頃)
この頃は一生の芸の確定する最初の時期だ。だから、稽古の本格化する境目だ。
声もすでに正常に直り、体の成長も止まり、成人としての体格が定まる頃だ。

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俳優の学び方、生き方 ①

俳優の学び方、生き方 ①

※ この記事は、VORPALオンラインサロンからの加筆転載となります。

俳優には社会的認識がありません。
なにが一般人と違うのか、どういった点が優れているのかを考える必要があります。
これは、自身がどういった道を歩んでいきたいかの話にもなります。すなわち『何によって覚えられたいか』

・出演作に自己の存在を求める
・演技のエキスパートとして印象に残す
・出演料の高さで声をとどろかせる
・仲間

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個性とはなにか

個性とはなにか

個性という言葉は、思うに個々に都合の良いように解釈され使われているのではなかろうか。

まあ、言葉の意味づけは業界によっても異なるものだし、分かり易ければいいのではないかとおもうが兎角『個性』という言葉が指し示すものは分かりづらい。

今回はこの『個性』という言葉についても、俳優、声優の表現といった側面から定義付けをしていこうと思う。

まず、インターネット辞書では

1.他の人とちがった、その人

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演技とはなにか

演技とはなにか

舞台、映像、音声…それぞれ『演技』と一括りにしてしまうと学びとしてはやる事が多く何ものにもならなくなってしまうので、ここでは音声表現としての『演技』を取り上げることとする。

いずれ100年の節目を迎える声優業界を目指さんとする後輩諸氏への一助となれば幸いで或る。

演技といっても、日常で役割を演じたり感情を隠すといったものから、インプロ、エチュードなど即興劇などその用途は幅広い。

ここではオー

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