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個性とはなにか

個性という言葉は、思うに個々に都合の良いように解釈され使われているのではなかろうか。

まあ、言葉の意味づけは業界によっても異なるものだし、分かり易ければいいのではないかとおもうが兎角『個性』という言葉が指し示すものは分かりづらい。

今回はこの『個性』という言葉についても、俳優、声優の表現といった側面から定義付けをしていこうと思う。

まず、インターネット辞書では

1.他の人とちがった、その人特有の性質・性格。個人の特性。
 「―的な人」
2.個体に特有の性質。
引用:Oxford Languages

とある。
さすがにこれだけでは、個性という言葉の定義付けには不十分だ。

個性を感じるものや、独自性を感じるものについて我々は『センスがある』などという言い回しをすることがあるが、このあたりに今回のヒントが隠されている。

センスとは、英語で感度や五感のことである。
五感とは、視覚、聴覚、味覚、触覚、嗅覚を示す。

この五感を状況に応じて、要件にあわせて使い分けられたりできる者のことを『センスがある』などと言うのだ。

では、演技における『センス』とはなんだろうか?

服飾の業界では、視覚
音楽の業界では、聴覚
飲食の業界では、味覚
寝具の業界では、触覚
香りの業界では、嗅覚

と、業界によって必要要件となるセンスは異なってくる。

では、声の業界では?

ひとまず演劇的表現として記させていただくが、この業界に求められるセンスは『視覚』と『聴覚』である。もちろん、演技をする際には五感を総動員し役が体験している状況を感じなければならないこともある。だが、観客が演劇を体験する際に受け取るのは視覚と聴覚である。

そのため、この2つに秀でているもの…少なくとも演技の定義において求められている『演じるべき内容』によって定められた要件に満ちている演技ができなければ、センスがある俳優とはいえないだろうということになる。

少し話が逸れるが、ここでいう『視覚』とは俳優の見た目とは異なるし、ここでいる『聴覚』とは俳優がもつ声のことではない。

『視覚』や『聴覚』を使い、役を演じる俳優が何を感じているか…言語化することが困難なこの部分の反応。それを『身体』や『声』を使いアウトプットする。それを受け手は統合してセンスと言ってる(ように思える)。

表現されたものに対しての意見がマジョリティであれば、センスがあると評され、マイノリティであればセンスがないと評される。だが、マイノリティであっても惹きつけるような魅力があれば、個性的と評されるかもしれない。

センスとはすなわち、自身にとって好ましいかどうか。作品にとって好ましいかどうかなのだ。

マジョリティを獲得するには知識がいる。自分だけの頭の中で捏ねくりまわした表現ではそれが適当がとうかわからない。

センスは知識から生まれる。
個性を手に入れたければ、知識を身につけるしかない。自身が良いと思うもの、業界が良いと思うものそれらの蓄積がセンスであり、個性なのだ。後々、主体性についても語る事になるかと思うが個性を身につけたければ自分だけの知識の蓄積が必要になる。
そしてその知識は知っているだけでは不十分であり、実践し、応用できて初めて自身の主体性となり個性となる。

俳優修行を行うものは、個性という言葉に悩み苦しむ事も多くあるかと思う。そういう時こそ、自分の頭だけで考えずに過去の作品や他者の意見に耳を傾けてみよう。最終的な選択は自分であるが、その選択こそが個性に繋がる。

では、ひとまずではあるが『(演劇的表現における)個性』について定義付けを行ってみよう。演技的表現における個性があるとは…

『俳優が五感を駆使し受け取った事象に対しての反応が、身体表現や音声表現として表出された際に多数的意見を得る、または少数意見であっても惹きつけるものがある様』

と、いえるのではないだろうか。

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