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『モモ』第2章「めずらしい性質とめずらしくもないけんか」を読んで

友達の友達の話を聴き続けた大学生時代

私は、人の話を聴くことが得意で、大学時代は毎日新しい友達の話を聴きました。友達は自分の親友を紹介してくれます。だから、「何か困ったことがあったら、伊藤くんに話を聞いてもらうといい」と友達の中で評判になり、私のもとには色々な友人がやってきました。

小さなモモにできたこと、それはほかでもありません。相手の話を聞くことでした。(中略)ほんとうに聞くことのできる人は、めったにいないものです。そしてこのてんでモモは、それこそほかにはれいのないすばらしい才能を持っていたのです。

この章を読んだ時に「モモは私だったのだ」という確信めいた感じがあり、大学時代に話をしてくれた100人以上の友人の顔がフラッシュバックし、喜びと感動が溢れるような気持ちになりました。

noteで企画した公開文通での出来事

2020年夏、私は何人かの大切なフォロワーさんとnoteで公開文通をしました。何度かやりとりをする中で、とても印象的だった出来事があります。それは、手紙のやり取りを通して、誰に語られることもなかった過去の話を手紙につづることで自然と思い出し、それが嬉しかったという喜びのコメントをいただいたのです。私は大学時代の日課をnoteで、手紙や投稿、コメントという形で続けているのだと思いました。

喧嘩する男たち、モモの成功と私の失敗

第2章は「めずらしい性質とめずらしくもないけんか」というタイトルの通り、近所で評判のモモのもとに2人の男がやってきます。そして、モモの前にやってきてはお互いに「あれがおまえが先に嫌なことをしたからその仕返しは当然だ」というふうに、水かけ論を数ページに渡って展開していきます。

興味深いところは、この2人のけんかが、言葉巧みに、仲裁をしたくなるような、喧嘩両成敗をしたくなるような、呆れる気持ちにさせるように書かれていることです。モモは黙って2人のけんかを聞いているだけですが、2人が笑って仲直りすることにモモは成功します。

ちなみに、私ははじめからモモのように、人の話に根気よく耳を傾けられるような性質を持っていたわけでも、友達がたくさんいたわけでもありません。私には苦い失敗があります。

大学1年生の時、友人のヒデオ君とケンイチ君がロビーで口論しているのを見つけました。ケンイチ君によると、ヒデオ君が急に激昂し、怒鳴りつけてきたというのです。

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「ケンイチ、俺はお前のことが許せない。俺にケーキをぶつけたことを謝ってくれ」
「いやだ。ヒデオだって、顔にケーキをぶつけられて楽しそうに笑っていたじゃないか、俺だって服にクリームがついて洗濯物が大変だったんだ。」
「あの時は、笑ってその場の空気に合わせていただけで、誰が顔にケーキなんかぶつけられて嬉しいもんか。」
「出た出た、俺だって最初から嫌だって言ってくれたら、ノリのわからないやつにそんなことしないし、後から文句言われても正直困る。」
「ケンイチはいつだってそうさ、嫌なことをされて嫌だと言えない人の気持ちがわからない。あの夜も、人気のないところで裸になって走り回る俺を面白がってスマホで撮影してただろ。あの動画今すぐ消せよ、スマホをよこせ。」
「おい、勝手に触るな」
「何だよ、やるってのか」

そう言ってケンイチ君に殴りかかろうとしたヒデオ君を私は静止し、「うるさい、今すぐやめろ!」と大きな声で怒鳴りつけました。動こうとするヒデオ君に、何度も怒声を上げました。

そして、ヒデオ君が冷めた声で私にいいました。
「俺を大声で怒鳴りつけて、自分の思い通りにいくと思ったのか。伊藤は俺が殴るのは悪いと責めるが、大声で俺を縛りつけることといったい何が違うってんだ。」

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思えば私はこの経験をしてからというもの、友達のためにどうすれば良かったのかを考え続けました。そして、この悩みを持ち寄って、先輩と一対一の対話をしはじめたことが、今の今まで続いているように思います。モモの成功と私の失敗エピソードから、人の話を聞くことがいかに難しいかということを考えるきっかけになれば嬉しいです。

数ある経験と、パートナーとの出会い。

モモのところには、入れかわりたちかわり、みんながたずねてきました。いつでもだれかがモモのそばにすわって、なにかいっしょうけんめいに話こんでいます。(中略)そしてモモが役にたつことをまだ知らない人がいると、みんなはこう言ってあげたものです。「モモのところに行ってごらん!」

私の場合、「何か困ったことがあったら、伊藤くんに話を聞いてもらうといい」「まだ伊藤くんと話をしていないなら、話をしておいて絶対損はない」「伊藤くんに相談したら」といわれて、なんだかよく分からないまま私の前に連れてこられた友人の友人が「親友があなたの話をよくするの。絶対話したほうがいいって」と不思議そうに語るところからはじまることが多かったです。「ずっと話したいと思っていたから嬉しい」と期待されることもありました。

もちろん、全てのお話がうまく言ったわけではありませんが、私は「今、目の前にいるひとりをどこまでも徹して励まし続ける」と心に決めて臨みました。ある人は、話をする中で急に泣き出してしまいました。また、無表情な人が話の最後にとびっきりの笑顔を見せてくれました。年下の私を「まるでお父さんのようだ」としたってくれる先輩もいました。シングルマザーになった悩みを打ち明けてくれた小学生時代の担任や、親の介護生活について吐露してくれた大学の教授もいました。私の学生生活は「モモ」だったのです。

今、同棲している最愛のパートナーもそのうちの1人でした。私は彼女の話す壮絶な人生に、ひとりでは到底抱えきれない苦悩に、この出会いに驚きました。私はこの目の前の人を一生をかけて、励ませるだけの力を身につけるために、この人を幸せにするために、100人以上の人の話を聴き続けてきたのだと思いました。

モモの傾聴のスケールの大きさと私の聴く姿勢

モモはひとりで長いあいだ、古い劇場の大きな石のすりばちのなかにすわっていることがあります。頭のうえは星をちりばめた空の丸天井です。(中略)こうしてすわっていると、まるで星の世界の声を聞いている大きな耳たぶの底にいるようです。

この章の終わりに、モモの傾聴のスケールの大きさを象徴するシーンが描かれています。モモは地球に生えた耳で、夜空の星の声を聞いている、そんな壮大な感じがしました。私もモモのようなスケールの大きな人間になりたいです。

人に耳をかたむけるなんてたいしたことではないと思う人がいますか?そういう人は、モモのようにできるかどうか、いちどためしてみることですね。

モモようにできるかどうかは、私にはわかりませんが、私が人と話す時に決めていることを最後に紹介したいと思います。

✔︎ 人と話す前に、1時間だけその人のことだけを考える時間を必ず用意する
✔︎ 質問責めにしてくる人には、ゆっくり落ち着いた表情で、どうして知りたいと思ったのかその気持ちを紐解く
✔︎ 両手、両腕は手のひらが見えるような姿勢で聞く
✔︎ 基本的には相手の眼を見て、会話と眼と表情が一致しているかを視ながら、それが自然な心の動きかどうかを観る
✔︎ わかったつもりにならないで、相手が話した言葉を自分の言葉に言い換えて復唱し、相手が「この人、わかってくれている」と感じているかを大切にする

どうですか、私のようにできるかどうか、一度試してみて欲しいと思います。読書の秋、ぜひ私と一緒にオンライン読書会、はじめての共同マガジンに挑戦してみませんか?

今後の予定

4日 3章 暴風雨ごっこと、ほんもの夕立 読了 
5日 4章 無口なおじいさんとおしゃべりな若もの 読了 
   19時頃 3章 感想文の投稿

参加方法

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