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合気道の技を定量的に評価したい

合気道について

 読者の皆様、合気道という武道をご存知でしょうか。
合気道について”公益財団法人合気会”が公式ホームページにて次のように説明しています。

合気道は、開祖・植芝盛平翁(1883~1969)が日本伝統武術の奥義を究め、さらに厳しい精神的修行を経て創始した現代武道です。合気道は相手といたずらに強弱を競いません。入身と転換の体捌きと呼吸力から生まれる技によって、お互いに切磋琢磨し合って稽古を積み重ね、心身の錬成を図るのを目的としています。また、合気道は他人と優劣を競うことをしないため、試合や競技を行いません。
開祖・植芝盛平翁逝去の後、故植芝吉祥丸(1921~1999)が道主を継承して一般にも門戸を開放し世界に広げ、現在、植芝守央が道主を継承しております。
合気道とは|公益財団法人合気会

開祖・植芝盛平の動画がYouTubeにアップロードされていました。合気道がどんな武道なのかをざっくりと理解するためにも次の動画をご覧ください。

合気道は現在、世界中の老若男女・幅広い年齢層で稽古されています。

合気道は、世界的広がりを見せています。合気道の海外普及は1950 年代から始まり、現在(2018)、世界国々の約7割、約140ヶ国に組織・団体があります。
合気道について|公益財団法人合気会

また、合気会の公式ホームページによると、”合気道は他人と優劣を競うことをしないため、試合や競技を行いません。”と説明されています。つまり、スポーツとして合気道を分類するならば、競技スポーツではなく生涯スポーツといえます。
生涯スポーツと競技スポーツの違いについて以下のサイトを参照しました。

 生涯スポーツは、健康づくりや社交の場を目的として「生涯を通じて、いつでも、どこでも、誰でも」親しめるスポーツのことをいいます。

 一方競技スポーツは、スポーツ技術や記録の向上を目指し、人間の極限への挑戦を追求する選手のスポーツということができます。競技スポーツの最高峰といわれる国際大会はオリンピック・パラリンピック、生涯スポーツの最高峰の国際大会はワールドマスターズゲームズがあります。

 競技スポーツは相手や自分との勝負に「勝つか負けるか」が主な目的になります。勝つために努力をし、見ている人に感動を与えます。生涯スポーツはスポーツを行うこと自体に目的があります。そのためワールドマスターズゲームを始め生涯スポーツの大会でも勝敗はつきますが、スポーツを行うこと自体が生涯スポーツの最大の目的になるため、競技スポーツとは異なることがわかります。
生涯スポーツとは|公益財団法人長寿科学振興財団

 しかし、合気道は競技を行わないため、勝敗がつくことはありません。
そのため、生涯スポーツに近いものでありながら、スポーツとしての枠組みに入れることはできないと考えられます。
つまり、合気道は己の心身を成長させることを目指した生涯武道であると言えます。

合気道の目指すものは”成長”。つまり、”成長”を適切に評価する方法が必要!

さて、本題に入りましょう。
稽古を重ねた結果、合気道の技が上達したと判断する上で、

定量的に技の上達を評価する方法が必要

であると私は考えます。
定量的な評価が必要な理由は、技をする人(以後、”取り”と呼びます)の立場や技を受ける人(以後、”受け”と呼びます)の過剰な受け身などが純粋な技の熟練度を評価することを難しくしているからです。

例えば、合気道を長年稽古している”達人”の技を見るとき、”何がどのようにすごいかわからないけれど、すごいはずである。”という評価をする場合、先入観が純粋な技の評価を邪魔している点で適切とは言えません。
また、私個人の見解ですが、どれだけ長く稽古をしている”達人”においても、合気道に取り組む以上は”成長”を目指して稽古をするべきだと考えます。そのため、その人の技の熟練度や稽古した時間に関わらず、成長を目指す人には、それを正しく評価する方法が必要なのです。

合気道の動作の目標

動作を定量的に評価するために、まずは動作の”目標”を設定する必要があります。
合気道の動作の目標を仮に、

攻撃してくる相手を攻撃不可能にする

と設定してみましょう。
そして、合気道は目標達成の手段として次のような戦略をとっていると考えられます。

  • 相手の身体バランスを崩す・・・崩し技

  • 相手の関節自由度を減らす・・・極め技

  • 相手から距離をとる・・・投げ技

つまり、合気道が目指す動作は上記3つの戦略を実行する上でもっとも最適な動作と言い換えることができます。

それに加えて、合気道は

相手の身体を破壊しない

という戦略をとっていることに着目してみましょう。
”攻撃してくる相手を攻撃不可能にする”という目標を達成する上で、空手や柔道、剣道などの武道は打撃によって相手の身体を破壊するという戦略を選択しています。
それに対して合気道は、攻撃してくる相手の動作を邪魔しないことで、相手の姿勢を崩しています。例えば、”座技正面打ち一教”では、受けが取りの頭部を正面から刀で斬り込むために腕を振り上げた瞬間に崩しが入ります。

”座技正面打ち一教”の崩し

ここで、取りは受けとの接触点において、相手の力のベクトルの向きと同じ力を加えることで受けが抵抗できないように崩すことができると考えられます。
このように、科学的視点から合気道の動作を記述することで、動作を定量的に評価する上での指標を作ることができるでしょう。

私の合気道への想い

 私は現在日本の大学に通って、物理学を学んでいます。それと同時に、合気会所属道場で合気道を日々稽古しています。
そして、合気道を自然科学的な視点から見ると、まだまだ研究の余地がたくさんあると感じます。
また、私の研究人生において、合気道の技の合理性を証明したいという大きなテーマがあります。

合気道は稽古の一環として、受けがあえて取りの動きに逆らわずに受け身を取る場合が多いのですが、それを合気道未経験が”忖度”や”やらせ”と揶揄することがあります。YouTubeにアップロードされている合気道の動画のコメント欄を探せばそれを見つけることができるでしょう。
合気道の合理性を身を持って体験した後、その光景を見てなんとも言い難いもどかしさを感じました。それと同時に、合気道の技の合理性を科学的に証明する使命が私にはあると強く思いました。

これから私は、物理学や身体運動に関わる学問を学び、動作解析のプロフェッショナルになるべく、日々勉強を重ねていきます。
そして、合気道の技を科学的な視点から記述し、合気道に定量的な評価方法を導入したいと思います。
 現在、私はShiteiworldというWebサイトを運営し、日々の合気道の稽古で学んだことを記録する活動をしています。
なお、世界中の合気道に取り組む人へ届けるためにすべて英語で書いています。また、InstagramにもShiteiworldとして投稿しています。

ここまで読んでいただいた読者の皆様、私はこれからも熱い想いをもって合気道の研究をしていきますので、どうか応援のほどよろしくお願いいたします!

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