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もふもふぺろん

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#コラム

「感性」とは何か

「感性」とは何か

最近、頻繁に映画を観るようになった。

起伏に富むストーリーや、激しいアクションがなくてもいい。もやもやしたままで終わってもいい。

ただ、手のひらからこぼれてしまいそうな儚い美しさや、人間のどうしようもない不完全さに触れて、打ちのめされたい、と思う。

・・・

辞書的な意味、歴史の中で積み上げられてきた定義は一旦置いておいて、「感性」とは、何かに触れた時に感動できる心であり、思考できる頭である

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「日本の美意識」について、ずっと考えている

「日本の美意識」について、ずっと考えている

「日本の美意識」という言葉が、頭の片隅にこびりついて離れなくなった。

きっかけは、去年の9月、一人旅の途中で原研哉さんの『日本のデザイン』を読んだことだ。本に登場する「エンプティ」という言葉に導かれるようにして、京都へ足を運んだ。「シンプル」ではなく「エンプティ」。それは、日本文化に通底する美意識を説明するのに、ぴったりな単語の一つのように思えた。

秋晴れの嵐山で、福田美術館に出会った。緊張感

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幸せを通過する

幸せを通過する

帰り道、バスの窓から小料理屋のほの明るい磨りガラスを見た。小さな店だけれど、夜な夜な常連客が集まってお酒を飲み交わすのだろう。

小料理屋の前を、腕を組んだ男女が通りすぎるのを見た。親しげに顔を寄せ合って笑っている。

寂れた町のあちらこちらに、両手にあまるほどの幸せが転がっている。
それは、蛍光灯が鈍く光る車内でがたがたと揺られている私の腕の中にはないものだ。
胸の奥をぎゅっと掴まれた気がして、

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きみのすきな牛乳を

きみのすきな牛乳を

秋が終わりに近づき、今年もまた、流し台にマグカップとティースプーンが置かれるようになった。
夜、家に帰ってきてそれらを洗いながら、あっという間の一年だったな、なんて感慨にふけったりする。

母親が「ココナッツの匂いがやっぱりだめで・・・」とくれたココナッツオイルは、どうやら私にも合わなかったらしい。
摂りはじめてから胃腸が重く痛む日が続き、摂取をやめたらケロリと治った。
ココナッツオイルによる腹痛

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ある秋の日の

ある秋の日の

食欲の秋。空気が澄んでいるからか、町に漂う美味しいものの匂いに敏感になっている気がする。ペペロンチーノが美味しいイタリアンの前で、インド人がナンを焼くカレー屋が佇む通りで、豚骨ラーメン屋のダクトのそばで、せわしなく鼻をひくつかせては、幸せな気持ちに浸る。

夜、駅前の居酒屋から流れてきた焼き魚の香りに、幼い頃見ていた風景をふと呼び起こされて動揺した。
端から番号の振られた団地が夕陽を遮って並ぶ、日

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こんなにもこんなにも書くことを愛してる

こんなにもこんなにも書くことを愛してる

久しぶりに、好きなことを好きなだけ書いた。
最後に散文めいたものを書いたのは去年の大晦日だったから、もう一年の四分の三を、何も書かずに過ごしてきたらしい。

書かない、というよりも、書きたくない、書けない、だった。轟々と押し寄せる日常に足をとられて、感情は柔軟性を失い、文字にするべきものなど何も手にしていない気がした。もうすっかり、私の言葉は枯れてしまったのだと思った。

小さい頃から、時間が許す

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大さじ一杯のカイエンペッパー

大さじ一杯のカイエンペッパー

幸せな夢を見ては目を覚まして泣いて、驚くほどゆっくりと明ける夜に呼吸を止められてしまいそうな夏があった。
八方塞がりの私を救ってくれたのは、きっと料理だったのだと思う。

一人で遠くに出かけては物珍しい調味料や食材を買い集め、夢中でレシピ集のページを繰った。
つやつやと光る野菜に包丁を入れ、焼いたり炒めたり蒸したり煮込んだりと忙しくしている間は無心になれた。

キッチンに、スパイスの小瓶が少しずつ

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もういくつ寝ると

もういくつ寝ると

朝から雨。国道の排気ガスが湿気にまとわりついて、東南アジア諸国のような濃厚なにおいがする。
空が灰色の日は特に憂鬱だけれど、今日は少し違う。後四回寝たらキャンプ、だなんて、子供みたいに胸をときめかせている。

昔からインドアを具現化したような人間だったので、これほどキャンプに魅せられるようになるとは思ってもみなかった。でも、キャンプって想像よりずっとのんびりとした遊びで、行く度に思う存分だらだらし

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