しおん@小説

適当に書き殴った小説とかを気が向いたら発散します

しおん@小説

適当に書き殴った小説とかを気が向いたら発散します

最近の記事

  • 固定された記事

【短編】 ポン・デ・リング、110円

 彼女が自殺したらしい。人づてに耳にした夜、僕はミスドのある自宅の最寄駅へ急いだ。  可愛らしさから逃れるように、無造作に束ねられた黒髪。セール品のパンツスーツに、履き慣れたローヒールのパンプス。それが彼女の一張羅だった。二年前の秋、僕は彼女とひと月だけ恋人として過ごした。彼女は僕以外の何にも興味を示さなかった。今その手を離せば、彼女は世間からこぼれ落ちてしまうかもしれない。そんな焦りのなかで、夢のように通り過ぎた時期だった。  当時から暮らしているアパートは、15分ほど歩か

    • いつかYouTubeを始めます

      お久しぶりです、しおんです。 このたび、しおんはYouTubeを始めることにしました。が、開始時期は未定です。 まだまだ準備段階なのでお伝えできることは少ないですが、一応告知です。チャンネル名は未定ですが、以下に大まかな方向性を書こうと思います。 仮題: リアル数学ガール著作権が許せば… コンセプト: 数学に大衆性を与える高校で多くの学生が嫌いになるであろう数学を、「楽しいもの」「魅力的なもの」「青春の一部」と捉え直せるような活動がしたいです。 高校で教えられる数学はあ

      • ウマ娘 ROAD TO THE TOP 最終話視聴直後感想

        お久しぶりです、しおんです。 今年4月16日から、毎週日曜4話限定で配信されているアニメ『ウマ娘 プリティーダービー ROAD TO THE TOP』の最終話がたった今配信されました。あまりにも感動したので感想を投稿しようと思います。 ひとことで言って、最高。 刺さりまくりました。やはりやばいですね……。画面からこちらへ訴えかけてくる力がここまで強いアニメはそうそうない気がします。毎話泣かされました。ともすると早口になってしまいそうな気持ちを抑えて、この作品の強いパワーとい

        • 病院に行きたくない

           明日は朝から病院だ。主にリンパ節のしこりと発熱が長引いたので先週に病院を受診しており、明日は先週の採血の結果を聞きに行って、今週の経過も診てもらう予定だ。先週の時点でほぼウイルス性のもので間違いないでしょうと言われてから、少しは安心して過ごせている。と言えればよかったのだが。  聞きたかったことが十分に聞けなかった、という一抹の不安がぐるぐる回る。もちろん問診や簡易的な血液検査の時点では、ウイルス性のリンパ節炎の確率が高いというのは事実なのだろう。ただ、医師から「大きくな

        • 固定された記事

        【短編】 ポン・デ・リング、110円

          日記

           2030年9月、とあるコンビニのレジで私の前に並んでいたお母様方の話。 「うちの保育園ね、giftedクラスとungiftedクラスに分かれてるんだってwww」 「えーやばなにそれw えじゃあ普通の子はungiftedになっちゃうわけ?」 「そうwww 梨沙子なんてさー、1歳の頃から英語教室通っててgiftedの意味わかっちゃってるのよね。絶対giftedの連中giftedの意味わかってないって。絶対梨沙子の方が優秀なのにありえないよねーw」 「えーやば差別じゃん。

          私の彼氏

           ごめんなさい。皆さんに今まで隠していたことがあります。実は私、彼氏がいるんです。今日は少しだけ、惚気させてください。誰にも言えずに抱え込んで、少し辛く感じ始めていた頃なんです。なんというか、すごく幸せな悩みですね。  私の彼氏はわりあい小柄で、普段はかっこいいのに、お腹を出して寝るところとかすごくかわいいんです。包み込むように抱きしめてもらうことはできないけれど、その代わり、猫のような可愛さに毎日癒されています。私は今体調が思わしくなく、不安障害とあいまって少し辛い日々が

          逆張りアイデンティティ

          人と違う何かがあることでしか自分を認められない。 そういう人は多いかもしれない。かくいう私もその一人だ。 これから先の主語は全て「私」だと考えておいてほしい。私の主張が他人に当てはまるなんて1ミリも思っていないのだから。逆張り大好き人間らしく、主語は一人称で十分だ。偏りの多い文章だと笑って読んでいただきたい。 長期のインターンからも学業からも解放された私に「今一番したいことは何?」と聞くと、大概次のような答えが返ってくる。 「ごろごろしたい」「遊びに行きたい」「服買いたい

          逆張りアイデンティティ

          外出ができない件

           私の家庭の事情は少し複雑だ。長引くコロナ禍で家族と同居する私は、徒歩や自転車圏外への外出を原則自粛している。母親が高齢で持病があるため、その彼女自身に感染への非常に大きな不安があることが主な原因である。また、症例に関する情報に乏しい以上、私が明確な根拠を持って「ここまでなら大丈夫」と伝えることができないことも、この自粛を続けている根拠となっている。ある程度制約なく外出できることによる幸せと、もし私が感染した際の(フィジカル面のみならず、親のメンタル面を多分に含む)家庭崩壊の

          外出ができない件

          徒然なるままに

           眠い。眠いのに、結局眠れずにだらだらと起きてしまった。これを書いたら寝る。嘘かもしれないけれど。  眠れないだけではない。最近、本当に人生が思い通りにいかない。想定外のことが次から次へと降ってくる。目まぐるしく環境が変化していく。穏やかで退屈な日常を恋しく思うほどに、そしてその出来事一つひとつを噛み締める余裕もないままに、また忙しない明日がやってくる。非日常。家にいながら気分はディズニーランド。実際に行ったのは一度きりだけど。  思いがけない出来事が降ってくるだけならま

          徒然なるままに

          【小説】 サトノレイナスの秋華賞

          18年生まれの牝馬を擬人化し、今年の秋華賞をネタに小説を書きました。名前は馬名そのものではありませんが、ウマ娘のノリで是非読んでいって頂ければ幸いです。 (おもな登場人物) 金子純(かねこ じゅん)- ソダシ 里野玲奈(さとの れいな)- サトノレイナス 船木有生(ふなき ゆい)- ユーバーレーベン 金子緋色(かねこ ひいろ)- アカイトリノムスメ 岡良子(おか りょうこ)- ヨカヨカ 茗溪奨花(めいけい しょうか)- メイケイエール (本文) 「2枠4番でした。応援よ

          【小説】 サトノレイナスの秋華賞

          9/22 創作反省会

           私の創作の強みはなんだろう。勿論ベースとなる比較対象は界隈によって異なるが、文章を書き連ねる力、それなりのウェイトを持って読者に長い文章を読ませ続けられる力はそれなりにあるのかな、と感じる。そういう意味で長編向きの適性はあるのかもしれない。でも今書き残したいのは、そんなことじゃない。  高校時代に持っていた大切な強みが、もう、私のものではなくなってしまった。新作の小説を読んで改めて痛感し、恐怖が、不安が体を駆け巡って、その感覚を忘れたくなくて筆を取った。  あれほど好きだっ

          9/22 創作反省会

          かくりつ。

           下宿先でパソコンを開く。ネット記事を漁る。新型コロナの感染者数。がん闘病の取材記事。それらを目にするたびに、何気なくキーボードを触る右手や、無意識のうちに呼吸で上下する腹の存在が、虚空から切り取られたかのようにはっきりと自覚されるようになる。  今、ここにいる。一介の大学生として、ふわふわと息をしている。その確率はどれほどだろうか。これまでに経験した大きな人生の岐路をたどるだけでも、「今、ここ」にたどり着く確率は極めて低い。奈良に生まれる確率。転園・転校を繰り返す確率。中

          かくりつ。

          夢十夜

           渋谷マーク下。ハチ公前ではなくて、あえて選んだ待ち合わせ場所。そんな人混みの中で私のことをじっと見つめている、奴がいる。 「そろそろ行きませんか? カフェも混雑してるでしょうし」 私は渋々頷いた。奴が走り出す前に大股で歩き出す。早歩きで歩く私に遅れまいとして、ぴょこん、ぴょこん、と奴が必死でついてくる。ここで走り出したらついてこれないだろうな、と漠然と考えるも、私のよく分からない良心が邪魔をして駆け出すことはできなかった。どうしてこうなってしまったのだろう。私はただ出会

          Turquoise Blue

           たった今、会社を辞めてきた。  新卒から働いた職場ではあったが、未練はさほど感じなかった。 「結婚おめでとう。ねー、どのマッチングアプリ使ったの?」 餞別にこんなことを言われるくらいなのだから、寂しさなど湧くはずもない。しょせん貯金のためだけに勤めた会社だった。内定した企業のうち、一番平凡な空気感が漂うこの職場に落ち着いたのが三年前の話だ。  花束を片手に帰路を急ぐ。すれ違うバイクがスモークを運ぶ。この道を歩くのも最後になることはわかっていたが、感傷に浸る余裕などなかった。

          Turquoise Blue

          n番煎じ

           書けねぇな、書けてねぇな。  小説とか、エッセイとか、自分が書いたものを見返してみて、あるいは自分の憧れる作品と拙作を見比べてみて、思わず呟いてしまう。なんてありきたりなんだろう。なんて浅はかなのだろう。そんなふうに自己嫌悪に駆られる日々が続いている。カッコつけた言い方に聞こえるかもしれないが、書いている内容は頗るカッコ悪いので鼻で笑って読んでいってください。  夕焼けの描写って、夕日のオレンジだけだったっけ。五月蝿く鳴き始める雀の群れは、どんなふうに飛んでいたっけな。

          2000字コンテストアイデア下書き

          発想の起点:水色の線香花火 登場人物:美術部の女子高生(主人公)、彼氏、彼氏の目に見えてる(と彼女が思い込んでる)彼女らしい少女(空想、〇〇) 彼氏が、実際の色の補色が見えるという視覚障害を患っている。視力も極端に悪く彼女の顔の細部もよく見えない。彼の目にどう映っているかを知りたくて、彼氏の言葉を元にラフを描くが、どうしても自分より美人に描いてしまう。彼女はそのイラストの中の女性を「〇〇」と名づけ、戸惑いと理想(〇〇)への嫉妬を抱えながら生きている。「線香花火が見たい」と

          2000字コンテストアイデア下書き