伊藤真哉(しんさい)/笑生和京(おきょう)

関わる人の人生がいまより1%でも向上するように、カウンセリング(コーチング)や研修、障…

伊藤真哉(しんさい)/笑生和京(おきょう)

関わる人の人生がいまより1%でも向上するように、カウンセリング(コーチング)や研修、障害のある方の自信につながるイベント企画(tale)、人の弱さで支えあうコミュニティ(らふ庭)を運営したりしています。https://www.cslabo.net/

最近の記事

しんさい工房(廃業挨拶)

ちょっとした達成感と開放感。 そしてほんの少しの喪失感を覚えた101日目。 ステイホーム期間の暇つぶしの選択肢のひとつにでもなってくれればと思い始めた「しんさい工房」。 最後までお付き合いいただきありがとうございました。 基本三日坊主の僕が最後まで続けられたのも、たくさんのコメントや楽しく読んでくれているというみなさんの声があったお陰です。 本当に感謝しています。 毎回楽しみにしていますという声の数と、多いものでは300を超えるビュー数があったわりに、フォロワーが『13

    • 【43日目】しんさい工房 ‐自由‐

      僕は4年生の後期もかけて、必要単位ピッタリで卒業した。 こんなにバイトもして偉いと思っている人もいるかもしれないが、僕はほとんど学校に行けてなかった。 必要最低限の出席日数とテストだけで単位をとり、卒論も坐禅の授業で単位をカバーし書いていない。 あまりに学校に行っていなかったため、持ち込み可能の試験ということを知らず何も答えられず、回答用紙いっぱいに僕の授業態度を詫びる謝罪文を書いて提出したこともある。 なぜかその授業は「可」をもらえた。 それぐらい学校に行っていなかっ

      • 【42日目】しんさい工房 ‐宝物‐

        黒猫の工場の仕事は、主に荷仕分けだ。 空港の近くに位置していたその工場には、毎日たくさんの荷物が運ばれてきた。 ベルトコンベアに流れてくる荷物をひとつずつピックアップし、発送先ごとにコンテナに詰めていく。 コンテナ詰めは、テトリスをキレイに積み上げていくみたいな感覚で結構おもしろい。 工場での荷仕分けと聞くと、肉体労働的なイメージを持つかもしれない。 だが、僕は比較的背が低く線も細い。 眼鏡も掛けているし、面接ではとても真面目そうな雰囲気を醸し出す。 男性アルバイトのほと

        • 【41日目】しんさい工房 ‐事故‐

          市場の食堂は早朝から賑わいを見せている。 僕が学生生活を送っていた町には、24時間営業のお店はそれほど多くなかった。 カラオケ屋のアルバイトが終わってからご飯が食べられる場所は、牛丼チェーン店か市場にある食堂ぐらいだった。 僕たちはアルバイトが終わった後、みんなで朝食を食べに行くことがたまにあった。 市場の食堂のご飯はうまい。 獲れたての海の幸を新鮮なまま調理してくれて、しかもコスパもいい。 食べ盛りの学生にとっては、とてもありがたい存在だった。 僕はサバの味噌煮が好きで

          【40日目】しんさい工房 ‐後悔‐

          人は非日常的な出来事を前にすると、正常な判断ができなくなる。 そして自分にとって都合の悪い情報を避け、自分の判断が正しかったと思い込むための情報を集め、自分を正当化しようとする。 僕は店長に刺激を受け、働くことへのモチベーションを取り戻していた。 もっと仕事を覚えたい。 店長みたいにカッコよくなりたい。 僕はまたバイトにのめり込んでいく。 カラオケ屋の深夜は、お酒が入ることもありトラブルも多かった。 お客さん同士の廊下でのいざこざや、店員に対するクレームなんかも日常茶飯事

          【40日目】しんさい工房 ‐後悔‐

          【39日目】しんさい工房 ‐信頼‐

          人は思い込みの中で生きている。 この多くの原因は、情報不足だと僕は思っている。 こうでなくてはならない こうあるべきだ 自分の思っている常識なんていうのは誰かにとっては非常識。 どっちが正しいでも間違っているでもない。 その人にとってはそれが正義 ただそれだけのことだ。 そういう考え方や世界があるということを知らないだけなのだ。 僕は、お金がないなら働くしかないと思っていた。 コンビニを辞めるころには扶養の範囲内という壁にぶつかり、僕は他の人のタイムカードで働き、他

          【39日目】しんさい工房 ‐信頼‐

          【38日目】しんさい工房 ‐反動‐

          角材を持って、高校生たちが深夜のコンビニに乗り込んできた。 レジカウンターを破壊され、僕はレジ下にある非常ボタンを押した。 僕の大学生活は、大学祭実行委員の活動とアルバイトのお陰である意味充実していた。 そもそも、ほとんどが大学とアルバイトとの行き来の生活だったこともあり、誰かと遊ぶ時間もお金もほとんどなかった。 講義も半分眠気で意識の飛んだなかで受けていたこともあり、友達と呼べる友達なんてほとんどいなかった。 やることがあるというのは幸せなことだ。 何かを考えられるよ

          【38日目】しんさい工房 ‐反動‐

          【37日目】しんさい工房 ‐分岐‐

          離婚しようと思う。 僕はみんなに謝らなければいけないことがある。 説明すると少し長くなることもあり、僕の親が離婚したのは大学4年生だと言っていることが多いが、実のところそれは真実とは少し違っている。 この場で背景を説明するので、そう聞いていた人たちは許して欲しい。 僕の親が再度離婚したのは、大学1年生のときだった。 僕が中学生の時に建ったお寺。 そこから僕たち家族は、必死になってお寺のことだけに力を注いできた。 僕たちは家族というより、半ば企業の創業メンバーのような関係性

          【37日目】しんさい工房 ‐分岐‐

          【36日目】しんさい工房 ‐黒帯‐

          先輩たちとの楽しい時間を過ごしながらの1日700円生活は、思った以上にハードだった。 もちろん自炊がメインの生活ではあったが、予算的に食材の選択肢がほとんどなかった。 主な食材は、ブラジル産の解凍鶏モモ肉とキャベツ。 当時はキャベツが1玉100円程度で買えたため、キャベツを駆使した料理が多かった。 いろんな料理を試してみたいが、そもそも他の食材を買うお金もない。 少しでも気分を変えてみようと思い、千切りのキャベツを湯がいて冷水で絞め、めんつゆにつけてざるそば風に食べてみた

          【36日目】しんさい工房 ‐黒帯‐

          【35日目】しんさい工房 ‐裏側‐

          大学祭をやってみないかい? 入学式の挨拶の関係で、入学前から関わりのあった大学職員の方が、僕の様子を見て声を掛けてくれた。 半ば自暴自棄になっていた僕は、めんどくさいことに巻き込まれるのではないかという若干の不安を感じながらも、その職員の方に案内されるがままに後をついていった。 学友会。 そこは、新入生歓迎会や大学祭などの学生の大学生活に関することを、学生から集めている会費をもとに運営していく学生組織だった。 これまでやってきた生徒会活動に、もっと裁量が与えられたようなそ

          【35日目】しんさい工房 ‐裏側‐

          【34日目】しんさい工房 ‐迷路‐

          Vって何ですか? 大学での最初の英語の授業でのことだった。 理解度の確認なのか、基本のおさらいだったのかはわからないが、教授が5文型の話をしていた。 そんななか、ふいに後ろから聞こえてきたのが冒頭の質問だった。 教授がS(主語)やV(述語動詞)について説明するも、なかなか理解ができないようだった。 衝撃的なことに、僕の大学1年生の前期の英語は、ほぼ5文型の学習だけで終了することとなる。 僕は初日から教授に頼まれ、後ろの同級生に付いて授業のサポートをすることとなった。 僕

          【34日目】しんさい工房 ‐迷路‐

          【33日目】しんさい工房 ‐ひとり‐

          大学の大講堂のステージの幕が開くと、突如仏像が現れた。 ひとり暮らしをして、初めて親のありがたみがわかる。 親からの仕送りをもらわないという選択をしてしまった僕は、とにかく働く必要があった。 生きていくにはお金が必要だ。 僕は大学生活のことを考え、2月の中旬には大学の近くに引っ越しを済ませ、アルバイトを探し始めた。 理由は単純だ。 大学生活が始まってからのバイト探しでは、他の同級生と被る可能性があり、求人の幅が狭まると思ったからだ。 少しでも早くにバイトを始め、大学生活

          【33日目】しんさい工房 ‐ひとり‐

          【32日目】しんさい工房 ‐担任‐

          砲丸の球があんなに軽々しく空を飛んでいくの、僕は初めて見た。 僕の担任は体育教師だった。 ただの体育教師ではない。 絵に描いたような、脳味噌まで筋肉なTHE体育教師だ。 柔道の時間。 この態勢になると人はそう簡単に動かせなくなると受け身の説明をしておきながら、床で丸まっている100kg級の柔道部員を、「ほら、動かないだろ?」と言って片手で軽々と持ち上げてしまうような男だ。 元々砲丸投げの国体選手だったらしく、宙に放たれた砲丸は優に10mを超えていた。 最初の挨拶の時もそ

          【32日目】しんさい工房 ‐担任‐

          【31日目】しんさい工房 ‐イチ‐

          MISIAの「Everything」を聴くと、いつもあの時のことを思い出す。 0から1を創るのは、難しい。 1から2を作ることは、易しい。 これはコロンブスの言葉だ。 この0から1を創るという経験は、自分の自信に大きな影響を与えてくれる。 0から1を生むために必要なことは、なにかを「する」という経験しかない。 自分からなにかアクションを起こさない限り、「1」が生まれることはないんだ。 僕たちは生まれた時から失敗しないでできたことなんてほとんどないはずだ。 ご飯だって、

          【31日目】しんさい工房 ‐イチ‐

          【30日目】しんさい工房 ‐選択‐

          庭にインドカリー屋さんが来た。 一人前のお坊さんになるには、大きく分けて3つの儀式がある。 1つめが、出家をするときの得度式(とくどしき)。 2つめが、若い僧が高僧と法義や悟りに関する問答を行う法戦式(ほっせんしき)。 3つめが、正式な住職となるための晋山式(しんざんしき)。 僕は出家が12歳だったということもあり、高校生という早い段階で法戦式をやり、お坊さんとしてのキャリアアップを順調に果たしていた。 この法戦式という儀式は、お坊さん人生の中でもそれなりな節目のイベ

          【30日目】しんさい工房 ‐選択‐

          【29日目】しんさい工房 ‐圏外‐

          この人、誰だっけ…。 入院中の暇つぶしにと、クラスメイトが三国志を貸してくれた。 僕はそこから三国志にハマり、退院と同時に古本屋で全巻まとめ買いをした。 12,000円だったのを、全巻まとめて買うから10,000円にしてくれないかと交渉してゲットした。 ちなみに好きな武将は趙雲だ。 横山光輝先生の三国志は名作だと思っている。 だけどひとつだけ難点があった。 それは、みんな顔が似ていることだ。 後半になるに連れ、似たような名前の登場人物も増えてきて、正直誰が誰だかわからなく

          【29日目】しんさい工房 ‐圏外‐