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【31日目】しんさい工房 ‐イチ‐

MISIAの「Everything」を聴くと、いつもあの時のことを思い出す。

0から1を創るのは、難しい。
1から2を作ることは、易しい。

これはコロンブスの言葉だ。

この0から1を創るという経験は、自分の自信に大きな影響を与えてくれる。
0から1を生むために必要なことは、なにかを「する」という経験しかない。
自分からなにかアクションを起こさない限り、「1」が生まれることはないんだ。

僕たちは生まれた時から失敗しないでできたことなんてほとんどないはずだ。
ご飯だって、最初は上手に食べられずにこぼしていた。
僕なんて、いまでもよくものをこぼす。

どんなに小さなことでもいい。
とにかく前に進んでみて、この「1」を足していくことがとても重要だ。


僕の人生の中でも1・2を争う最初の一歩の経験は「告白」だろう。
こんな僕でも一丁前に恋をしていた。

ただ、僕には自信がなかった。
無理もないだろう。
僕はルックスに自信がなかった。
野球部の坊主頭はモテていたが、書道部なのに野球部よりも短いスキンヘッドの僕に恋をするような、高尚な趣味をお持ちのJKを見つけることは至難の業だった。

でも、本当は違うことを僕はわかっていた。
単純に傷つくことが怖かったんだ。
好きな人に告白をしてフラれるという経験を避けるため、見た目を理由にモテない自分を肯定することで、チャレンジしない言い訳をつくってきた。
人は得られるメリットよりも、失う恐怖の方が大きいのだ。

僕は部活の後輩に恋をしていた。
こんな僕にもコミュニケーションを取ってくれ、ちょっと勘違いをしてしまっていたところがあったのかもしれない。
何より彼女の書く書道の作品が好きだった。

勇気を出してした初めての告白は瞬殺だった。
おまけに彼女は部活を辞めていった。
僕の初挑戦の代償は、当時の僕には大きなものだった。

そもそも彼氏が坊さんなんてイケてない。
なんで僕は普通じゃないんだ。
僕なんかがモテるわけがない。
告白なんてしなければよかった。
部活辞めるはやり過ぎじゃないか。

僕は益々自分に自信をなくしていった。

当時、その彼女がよく話していたドラマの主題歌が「Everything」だった。
なにが、やまとなでしこだ。

ただここで不思議なことが起きる。
僕はこの数ヶ月後に、初めて彼女ができた。
初めての告白という経験は、僕に大きな変化をもたらしてくれた。

告白をするときの緊張感も、告白に失敗した時のつらさも、その後に起こりうるリスクも僕は知っている。
その先に起こることを想定できるというのは、一歩踏み出すハードルを下げてくれた。

勘違いされては困るが、だからといって僕が誰彼構わず告白をしたとかそういうことではない。
こんな僕でも、好きになってくれる人が現れたのだ。
しかも、信じられないかもしれないが、僕は告白された方の立場だった。
僕はやっぱり人に恵まれている。
こんな人が現れてくれることなんて、奇跡に近かった。

人というのはおもしろいものだ。
ちょっとした成功体験が自分のイメージを変えてくれる。
自分にも彼女がいるという事実が、こんな自分でもいいと認めてもらえたという自分の存在価値の証明となり、同時に精神的なゆとりを生んでくれた。

僕は初めての彼女に浮かれていたが、恋愛経験0の僕は、付き合ったからといって何をしたらいいのかがわからなかった。
手を繋ぐ勇気もなく、一緒に帰って話をする。
ただそれだけだった。

そんな日が2週間ぐらい続いたある日、僕はその彼女にフラれた。
とんだ笑い話だ。

僕のまともな恋愛は、この後すぐ訪れる。
0から1になった経験は、僕にとっては大きな自信に繋がった。
まさにコロンブスの卵だ。

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