マガジンのカバー画像

詩の場所

92
小山伸二の詩の置き場所です。
運営しているクリエイター

記事一覧

書肆梓 2024年の新刊2冊

書肆梓 2024年の新刊2冊

詩集『七つの海』山内聖一郎、待望の第二詩集!

2021年5月、決然として世に問うた渾身の第一詩集『その他の廃墟』から3年。待望の第二詩集も登場。太古から永遠の未来にわたり七つある海への船出の詩は、すでに不穏な呟きとともに、始まりを告げる。中綴じ8ページの著者自身による「自註」が付録に。

著者:山内聖一郎(やまうち・せいいちろう)
1959年3月鹿児島県生まれ。鹿児島県立鹿屋高等学校卒。詩人。卒

もっとみる
詩集を読む

詩集を読む

『まーめんじ』細田傳造(2022年)栗売社

今年の3月3日発売の細田傳造さんのできたてほやほやの詩集。

1943年生まれの細田さんは、2012年、69歳のときに出した第一詩集『谷間の百合』(書肆山田)で、中原中也賞を最年長で受賞した詩人。

平易な言葉のつらなり、うねり、ささやく世界が、さざなみのように、そよ風のように紙面から立ち上がってくる。
地面に落っこちている記憶のなかの石ころが、細田さ

もっとみる
雲の時代

雲の時代

きみが居てくれたらそれだけでいい
空があるのだから
どのくらいポケットのなかに
重たいものがぎっしり詰まっていても

父さんだって
たくさんの嘘を泳いできたんだ
事業のこととか父親との確執とか
ぜんぶありきたりのこと
母さんだって
恋したこともあったんじゃないかな
あの時代に
グラマンの機影に気づいたのと同じ耳と瞳で
樹を眺め
歌を聴いた
そんなこともあったはずだ

きみがここから見えなくなるのが

もっとみる
鬼を撃たないで 小山伸二

鬼を撃たないで 小山伸二

ベルリンからミュンヒェンに向かう列車の中で

通訳者が隠した書類が

世界の運命を変えたかもしれない

理想と現実

情熱だけでは切り抜けられないんだ政治は

そう一喝される青年外交官

Netflixの配信を見つめるぼくは

採点待ちの学生たちのレポートを

同じパソコンのなかに放置したまま

煙草と酒が嫌いだった鬼のことを思い出す

殺人工場を発明させた鬼

有機農業と菜食主義を世に広めるた

もっとみる
書肆梓・詩集『その他の廃墟』刊行

書肆梓・詩集『その他の廃墟』刊行

書肆梓の最新刊、詩集『その他の廃墟』。

著者の山内聖一郎さんの第一詩集となります。
著者の山内聖一郎さんは、1958年鹿児島県生まれ。ラ・サール学園中学校入学。この頃から詩作を始め、その後、県立の鹿屋高等学校に。
実は、この高校で、ぼくは彼の同級生で、同じ文芸部に入り、早熟な彼の影響をかなり受けて、詩や、文学の魅力に取り憑かれてしまいました。
その頃の彼のことは、ぼくの第一詩集『ぼくたちはどうし

もっとみる
挨拶

挨拶

         中村哲さんに
星の丘をこえて
月あかり
渇いた喉をうるおす人々に影をつくる
いのちの水を
覚醒と酩酊の日々を
あなたとともに

井戸を掘る
地上の声を響かせるために
村にはかならずひとりの詩人が
この地を去るひとに送る挨拶を
時の番人をだしぬいて
この宴のなかで
われらが友に
たとえ地上に悲しみがたえなくとも
あなたの笑顔だけは忘れない
ありがとう、
そしてさようなら

いよいよ、コーヒー本、発売へ

いよいよ、コーヒー本、発売へ

9月1日、いよいよ『コーヒーについてぼくと詩が語ること』(書肆梓)が発売になります。
みなさま、お楽しみに!

離れる

離れる

北の花園から
土砂降りの境内まで
血を吐いてみせた
役者の顔も忘れてしまった
きみとの紅色のテント

乳飲み子との別離
声にならない嗚咽の響きは
一篇の詩をなしたのか
なんて遠くまで来てしまった
ちいさな画面のなかで笑ってくれた
その手に触れることもできない
この時代に

抱きしめてあげたい
と、囁いたあなたの声を
胸の揺り籠にいれて
蒼い空へ飛んでいけるかな
鳥ではない
ぼくでも

島の詩

島の詩

空港から二時間ほど走った島の突端
サンセットホテルのバルコニーからは
砂浜につづく道がある
だれもいない浜辺
虫がたくさん死んでいた
笑いながら
野草を煎じる女たち
豚の世話をする男の話を聞いて
陽気な女房の弁当を食べた
夏が終わらない島で
だれもが飽きずに雲を眺めていた
廃校の体育館
わすれ草ゆれる
泣かない島の
サンセットホテルの部屋に
夜明けまえの海風を呼び込んで
眠れないぼくは
からっぽに

もっとみる
鰹節のうた

鰹節のうた

波を切って泳ぐものたちが
月に照らされる
誰も知らない夜もある

海で世界とつながっている
結びのことば
意志のひかりをかたくとじこめて

息をひそめる小屋のなかで
時間が磨かれていく
ひとの心の井戸に降りていくために

古式の呼吸に耳をすまそう
もうじきご飯も炊きあがる
うすく削りだされた香りが踊りだす朝だ

LUCKY

LUCKY

           ハリー・ディーン・スタントンに     

三月最後の月曜日の午後
ぼくは恋人にメッセージを送ると
地下の映画館に降りて行った
痛む右膝と左肩をかかえたままで

眠れない男の
月あかりにうかぶ洗面台で
テキサスのやさしい風が語りかける
ひとはみな生まれるときも
死ぬときも独りなんだ、と

alone
独りの語源は
all one
みんな、独り
ということさ

朝のコーヒー

もっとみる
ネット販売、はじめました。

ネット販売、はじめました。

書肆梓のネット販売サイトはこちらです。

現在、『さかまく髪のライオンになって』(2019;小山伸二・著)と『月の本棚』(2018;清水美穂子・著)を出品しています。

『さかまく髪のライオンになって』書肆梓・刊

『さかまく髪のライオンになって』書肆梓・刊

書肆梓 最新刊『さかまく髪のライオンになって』発売開始です。小山伸二の第4詩集になります。

A5定形(148✕210mm)無線綴じ186P、背幅15mm
52篇の詩
本体価格 2,000円+税(送料無料)

ご注文は、こちらから。
shoshi.azusa☆gmail.com ←☆を@にかえて下さい

納涼 書肆梓 夏まつり

納涼 書肆梓 夏まつり

書肆梓、最新刊の寝暮さん漫画、Colonia 最新号など、これまでの既刊本も含めて、ずらりと展示販売いたします。

当日は、寝暮さんはじめ、著者の方々も参加して、皆さんと楽しい午後を過ごせれば、と。

参加予定:
寝暮(『相変わりもせす』)、清水美穂子(『月の本棚』)、小峰慎也(『二体』『いい影響』)、小山伸二(『ぼくたちはどうして哲学するのだろうか。』『雲の時代』)。

会場:古本バル 月よみ堂

もっとみる