締め切りの練習オンライン

『締め切りの練習』は、創作、エッセイ、日記、旅行記、などを掲載している同人誌です。年数…

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『締め切りの練習』は、創作、エッセイ、日記、旅行記、などを掲載している同人誌です。年数回のペースで冊子を刊行しています。ここでは更なる締め切りの練習のため、発表の場をオンラインに広げ「千の締め切り」を目標にテキストを発表していきます。https://bit.ly/3slvkfO

最近の記事

締め切り#026 日記 3月の後半 / 篠原幸宏

3月12日(火) ジャック・ロンドン、ブローティガン  ところできょうの午後は、Nさんが大学をやめることになり、Sといっしょに研究室の本をひきとりにいった。  ジャック・ロンドンと書かれた段ボールがたくさんあったので、専門なのかたずねると、一応ねえ、という。  五年ぐらいにまえにオークランドへいったとき、ジャック・ロンドン・インというホテルに泊まった。すぐむかいにはジャック・ロンドン広場があり、公園には海を背にしてジャック・ロンドンの銅像がさびしげに立っていた。さびしげに見

    • 締め切り#025 日記 2024年3月2日〜8日 / 篠原幸宏

      3月2日(土)帰国して本屋  飛行機の中ではぐっすり眠ってしまって、気づいたら成田についていた。まだ寝ぼけているのに外はあかるい。機内ではアイマスクをしているので、とつぜん朝にほうりだされて、まぶしくて仕方ない。  ボーディングブリッジをわたって建物にはいる。白い壁、白い天井。もうしわけ程度に、日本の文化を紹介する広告なんかがあるが、どうにも地味だ。外国からかえってくると日本の空港は味気ない。  さっさと入国をすませて、バスで東京駅までいく。天気がいいので、丸善まで歩いてみ

      • 締め切り#024 映画の日記一週間 2022年12月 / 篠原幸宏

        映画の日記一週間のいきさつは2日目の日記に書いたんだけど、気軽な気持ではじめたら、いつのまにか一五〇〇〇文字の長文になっていて、ちょっとまいった。たぶん急に寒くなったせいかもしれない。それでワンテーマの日記にしてはあまりに長いので寄稿するかまよったんだけど、まあ、書いてしまったし、そのままのせることにした。長いけどよかったら読んでみてください。ちなみに、この企画は今のところ毎月やっていこうとおもってる。なので、来月からはともかくこの三分の一ぐらいの文量にして、リラックスしてつ

        • コロナの療養期間を利用して右脳を開発する方法 / 檀上 遼

          ついに自分ごとに……相変わらずコロナが流行っている。もう第なん波なのかもわからない。不謹慎を承知で書くと「いいかげんもううんざりだ……」とすら思わないくらい、なんだか今の状況が当たり前になって、すでに二年半以上が経過している。 しかしそんな他人ごとのようなことも言っていられなくなった。なぜならついにわたしも先月コロナに感染してしまったからだ。幸いにもこれまでわたしはコロナにかからずにやってこれていた。別に「自分だけはかからない」なんて思っていたわけではない。それなりに感染対

        締め切り#026 日記 3月の後半 / 篠原幸宏

          締め切り#022 小さな信号に気づく

          奥穂高岳登山の帰りに、財布を落とした。穂高山荘から横尾大橋まで下り、トイレで協力金を入れようとして、ザックの中に財布がないことに気がついた。 ものをなくすときはいつも2つのパターンがある。なくしたことが腑に落ちない時と、なくなるべくしてなくした、と納得する時。 今回、財布がないとわかって、心のどこかで「まあ、そうだよね」と思う気持ちがあった。ザックの中身を出して確認しながらも、もうこのザックの中にはない、私の近くにはいないとわかっていた。 手元はザックの中身を確認しながら

          締め切り#022 小さな信号に気づく

          締め切り#021 にわにわに っ記vol.02 / 池上幸恵

          庭に草を植えて2ヶ月くらい経った。前回の「にわにわにっ記 vol.01」を読み返して、最初のころの庭の貧相さにびっくりしている。 あれから毎日変わらず、朝起きては庭を見に行き、仕事の合間に庭を見に行き、出かける前に庭を見に行き、帰ってきてヘッドライトを装着して庭を見にいく生活が続いている。 5月末ころに、苗じゃなくてタネからも育ててみようと思ってタネを買ってみた。「お花!」という感じのものより、緑の花が咲いたり、葉っぱがきれいだったり、草っぽいものを育ててみたかったので通販

          締め切り#021 にわにわに っ記vol.02 / 池上幸恵

          締め切り#020 インドネシア旅行のある日の日記から / 篠原幸宏

          タンジュンアンビーチへ 2022年7月3日 インドネシア・ロンボク島  きょうは朝から晴れていてどっちの空を見ても雲はない。午後もこのまま晴れそうだから、昼まえにホテルをでてタンジュンアンビーチにでかけた。きょうもバイクは借りているので、それにのっていく。  タンジュンアンビーチはクタの東側にあるビーチで、バイクやクルマでいくと三〇分ぐらいのところにある。きのうのセロングバラナクビーチにくらべるとちょっと近い。ここは三年まえにもいったビーチで、そのときは海の色がきれいな静

          締め切り#020 インドネシア旅行のある日の日記から / 篠原幸宏

          締め切り#019 10年メモを10年使ってみた/ 檀上 遼

          10年メモをご存知だろうか。 10年メモとはデザイナーの戸塚泰雄さんが、2012年から発行しているメモ帳のことである。 メモ帳とはいっても実際にはかなりの分厚さがあり、ちょっとした辞書くらいの存在感がある。独立系書店などを中心に販売されているから、このnoteをわざわざ読みに来てくれるような人だったら、どこかで一度くらいは目にしたことがあるかもしれない。 10年メモとはいっても、基本的には「メモ」だから使い途は人によってそれぞれだ。例えばそれは、その日食べた物のメモであった

          締め切り#019 10年メモを10年使ってみた/ 檀上 遼

          締め切り#018 パンをつくる / 高橋みさと

          最近なんとなくうれしい気持ちになるときはいつか、考えてみた。 まちがいなくうれしいのは、パンがうまく焼けたとき。 花や果物をビンに入れて、水を満タンにしてふたをする。一週間もするとしゅわしゅわと音を立てるほどの酵母液ができあがる。ふたをすこしずつ開けながら空気を入れると、勢いよくあふれてくる酵母液。ほかの雑菌に負けずに、酵母の力を引き出せたこと、それがまずうれしい。 元気のよい酵母と地粉を混ぜる。塩を少し入れて置いておくと、いつの間にかかさが増えている。ふたを開けると酵母

          締め切り#018 パンをつくる / 高橋みさと

          締め切り#017 読書エッセイ「戦後の生活改善事業と新生活運動のはなし」 / 篠原幸宏

          1 生活改善ということで…… 「生活改善ということで香典は千円で……」という言葉をはじめて聞いたときは混乱した。この地域に引っこしてきた最初のころで、おどろくよりも慣れるほうが先だった。ここでは葬式の香典は千円と決まっているんだと理解して、それからは毎回「生活改善ということで香典は千円で……」を聞いて、千円をつつんでいた。疑問をいだきはじめたのはしばらくしてからのことだ。「生活改善ということで……」とは「どういうことで……」なのか? あたりまえのように老人たちが口にする生

          締め切り#017 読書エッセイ「戦後の生活改善事業と新生活運動のはなし」 / 篠原幸宏

          締め切り#016 にわにわに っ記vol.01 / 池上幸恵

          駐車場の一角に生えた雑草を抜いて、にわを作って1ヶ月が経とうとしている。 ・・・と思ったら、まだ10日しか経っていなくてびっくりした。感覚的には3週間とか1ヶ月くらい、毎日起きてにわを眺めご満悦、水をやってはご満悦、植え替えしてはご満悦、という暮らしをしてきた気分だけど、時間というのはやっぱり伸びたり縮んだりするものだから、1ヶ月経ったはずの時間は10日しか経っていなかった。 ●2022年5月19日(木) 思い立って駐車場の一角の雑草を抜く。木を切り倒した跡地の部分。

          締め切り#016 にわにわに っ記vol.01 / 池上幸恵

          締め切り#015 関西人が阿寒で考えたこと 第3回 / 檀上 遼

          (第1回、第2回はこちら) 今回わたしは初めて北海道に行くにあたり一冊の本を読んでいた。 茅辺かのう『アイヌの世界に生きる』という本である。 数日前から読みはじめ、昨日、関空から釧路空港へと向かう飛行機のなかで読み終えたこの本について少しばかりふれてみたい。 もともとは1984年に刊行され、昨年文庫化されたばかりのこの本の裏表紙にはこんなことが書いてあった。 ここでは本書の内容には深く立ち入らないけれど、作中では、紛れもないアイヌとしての人生を送りながらも、見た目は完全

          締め切り#015 関西人が阿寒で考えたこと 第3回 / 檀上 遼

          締め切り#014 あたらしい仕事 / 高橋みさと

          田んぼを作るために溝を掘っていたら、カエルが飛び出してきた。シャベルを持っていたし、しかもシャベルにはもはや土ではなく、水分をたっぷり含んだ泥がついていたから重すぎて、避けられずに「おっ」っと声が出ただけだった。カエルは私の足にぶつかったあと、田んぼ仲間の足元に着地した。 「お、アマガエルかな、大きいねぇ」と仲間が手を伸ばしたので、慌てて写真を取ろうとしたら、仲間の手から逃げてしまった。 もう何年も虫に触っていない。 もちろんカエルにさわったのも遠い昔のことで、特になにを

          締め切り#014 あたらしい仕事 / 高橋みさと

          締め切り #013 コロナ、コレラ、狂牛病 / 篠原幸宏

           大竹昭子の旅行記『バリの魂、バリの夢』を読んでいたらこんなことが書いてあった。  九五年には十一万二千人と半数近くに落ちたが、これは日本人観光客だけにコレラが発生するという奇妙な事態が起き、客足が遠のいたためである。(大竹昭子『バリの魂、バリの夢』講談社文庫版より)  これはバリ島をおとずれる日本人観光客の推移を紹介している。コレラ? と私はおもった。そんなことがあっただろうか。しかし、気になって調べてみると(といっても、グーグルで検索しただけだけど)たしかにそんな記録

          締め切り #013 コロナ、コレラ、狂牛病 / 篠原幸宏

          締め切り #012 ドラゴン竜とペン次郎とわたし/ 池上幸恵

          締め切りから何日経ってもなにも書く気がしなくて、締め切りから7日が経ったいまようやく書く気になった。なぜなら、ドラクエ11のラスボスに負けてドラクエ11もやる気がなくなってしまったからだ。ラスボスの守備力が高すぎてぜんぜん攻撃がつまらない。ドラクエ11は、2017年に3DSというパカパカする携帯ゲーム機のソフトで発売されたやつをやっている。 テーブルの上のお皿とワインを片付けて、流し台に持って行くときに、小学生の頃はあたまに言葉が溢れてしょうがなかったなあと、通学路の風景を

          締め切り #012 ドラゴン竜とペン次郎とわたし/ 池上幸恵

          締め切り #011 2020年3月5日の偶然日記 / 檀上 遼

          ※今月は『関西人が阿寒で考えたこと』はお休みし、なにか日常で偶然を感じる出来事があった際に書くことにしている「偶然日記」(©︎赤瀬川原平)の中から2020年3月5日の一本を掲載します。 ミスドで日記を書いていた。 独り言がめっちゃ多い系のおばはんが隣に座った。 これはよくあること。 しばらくしたらこちらに話しかけてきた。 これもまぁあること。 なんでもドーナツをくれるらしい。 これはめったにないが数年に一回はあること。 「勉強の邪魔してごめんな! 11時から王

          締め切り #011 2020年3月5日の偶然日記 / 檀上 遼