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男子高校生のパンツ1枚には、プライドがつまっている|男子柔道って、今もノーパンなの!?

高校の部活で柔道に片足を突っ込んだとき、他の部活に比べて柔道部は明らかに部員が少なかった。ズバリ申し上げると、我が校にとって柔道部は不人気だった。

理由の一つが頭髪だ。

「男子部員は丸坊主にしなければならないらしいよ」

と、根も葉もない噂が飛び交っていたのだそうだ。いや、根も葉もなくはないか。男子柔道と言えば、丸坊主のイメージがあるのは否めないだろう。実際、強豪校は、男子柔道部員は丸坊主にしなければならなった。

しかし、通っていた高校の柔道部は同好会的な雰囲気だっため、頭髪自由だった。

さすがに長髪はいなかったが、一部のプロレスラーのように襟足が長い男子部員はいたし、何なら女子部員はロングヘアがちらほらいた。

次に不人気な理由は、怪我をしやすいスポーツだからだ。

同じ学年の男子部員4人中、1年次ですでに2人が試合中に骨折していたし、投げ飛ばされたときに打ち所が悪ければ、最悪、下半身や全身付随にもなる。

わたしが志し半ばで辞めたのも、それと大いに関係している。

また、柔道をテレビで観ると、実際にやるのとで、大きく違っていた≪しきたり≫があるが、いちばん驚いたのが試合中の下着だ。

女子は、見えてはいけないものが見えてしまうのを防ぐために、柔道着の中にTシャツ・ブラジャー・パンツ・短パンのすべての着用が義務づけられていた。

もし、これらのうち一つでも着用していない事実がわかれば、試合に出場できないし、試合中に着用違反がわかれば、失格負けとなる。

むしろ、着用義務は女子にはありがたいルールだから、女子の着用違反による出場失格や失格負けはわたしは聞いたことがない。

但し、Tシャツは白のみで、短パンは確か黒か紺色のみだった。

いつだったか、同じ高校の女子部員が、うっかりロゴやイラストが大きめに入った白Tシャツを着てきてしまったときは、帯を強く結んで柔道着がはだけないようにして、着用違反がバレないようにした。

男子は、もし、女子と同じようにTシャツや短パンを着用するなら、女子と同じように色の指定が厳しくあったが、まったく身につけなくてもよい。今、サラッと言ってしまったのだが、もう一度言う。

男子柔道選手は、柔道着と帯以外はなにも身につけなくてもよい。

つまり、男子柔道選手の柔道着の中は、全裸ノーパン可なのだ。

「高校生って、多感で傷つきやすいお年頃だから、全裸ノーパンにする男子部員なんていないでしょ!?」

と思うかもしれないが、丸坊主と同じように、柔道に強い高校であればあるほど、全裸ノーパンがしきたりだった。

しかも、高校生の試合会場の男子部員の更衣室なんて、引率教諭やコーチの男性だけでなく、女子部員や女子マネージャーも出入りするから、あってないようなものだった。

その着替えの光景を目の当たりにした我が校の男子部員によると

「パンツ着用可の高校で良かった。そうじゃないと退部していた」

そうだ。

今から20年以上も前の話だから、今の柔道の強豪校が、男子の頭髪や下着をどのように義務づけているのか知らないけれど、国民の大半が着物を着ていた時代ならいざ知らず、中学や高校から柔道を始めた男子にとっては、全裸ノーパンは許しがたいものがあるのでないだろうか。

「男子だから、パンツを履かなくても平気でしょ?」

「男子なんて更衣室がなくてもいいでしょ?」

ではなくて、それが実際イヤで堪らないという人がいるならば、少しずつ変化しなければならないと思う。

たかがパンツ1枚と侮ってはいけない。薄さ1ミリほどの布には、多感な思春期を過ごす男の子のプライドがつまっているのではないだろうか。

伝統や歴史も大切だけれど、その時代時代に合わせて変わることも大切だと思う。

もし、全裸ノーパンがイヤで、将来有望な男子柔道部員が、他の部活やスポーツを選択するようなことがあれば、柔道界にとって大きな損失になるだろう。

昔と違って今はたくさんのスポーツがある。たとえば、スケボーやスノボーなどのように、『カッコいい』から入って、オリンピック選手になるような人が現れる時代でもある。

せめて、全裸ノーパンにするかどうかは、本人の選択に委ねてはどうだろうか。

これは、ワコール『#下着でプチハッピー』(2021年春)の応募エッセイです。

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